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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第四章 植物人のヴィエラ
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復讐したけど清算したけどお願いしたけど

「え……?」

「くすぐる、とは?」


 そっか、ヴィエラさん霊体だからくすぐりとか言われてもイマイチわからないか。

 アイディールさんは私に裏切られてポカンとしている。


「人間はね、脇の下や足の裏とかをこういう風にされると、とても気持ち悪いんだよ」

「ちょっ……!」


 私は実際にアイディールさんに近付いて、その脇をくすぐった。

 どうやら大分弱いらしく、必死に体を悶えさせて抵抗する。


「なるほど、やってみます」


 ヴィエラさんは地面から四本の根っこを召喚した。

 今までの根っことは異なり、野太い根っこではなく、先っぽが筆のように細かくなっている特殊な根っこだった。

 そしてそれらをアイディールさんの脇の下と足の裏に近付ける。


「や、やめて……」


 なんだっけこういうの。

 触手プレイって言うんだっけ? なんか違う気もするけど。

 必死に逃げようとするアイディールさんだが、拘束された状態で動けるはずもなく、処刑道具(しょくしゅ)は遂にアイディールさんの体に触れた。


「ひっ……!」


 アイディールさんの現在の服装は完全変態モードの上半身裸に腰巻状態。

 制服であれば服の上からだったかもしれないが、現在は完全にそれが仇となり、肌に直接根っこの先が触れる形となっている。

 そしていよいよサワサワと根っこがアイディールさんをくすぐりだした。


「あっ……! んんんんんっ、あは、あはははっ!」


 本人は必死に堪えようとしているらしいが、どうやら持ちこたえられなかったらしい。

 一度笑ってしまった彼女は、堰を切ったように笑い出した。

 くすぐるヴィエラさんも中々のテクニシャンなようで、どこをくすぐればアイディールさんの反応が最もいいのかを探り始めた。

 最初の四本に加え、新たに根っこを何本か召喚し、太腿の裏や耳などをくすぐっている。

 反応のいい場所を見つけると、そこをくすぐり続けながらまた新たな根っこを召喚してまた探す。

 一本、また一本と根っこが地面から生えてくるのを見るアイディールさんは、数が増す毎に顔が絶望していく。

 笑いながら絶望するって凄いな。


「て、てんじょあはははいぃいいいいん!」


 もはや何言ってるかすらもわかんねー。

 多分今名前呼ばれたよね?


「呼んだ? アイディールさん」

「や、やめっ。ひひっ、やめろぉおおははははぁ!」


 爆笑しながら怒りつつ泣いている。

 すげえ、喜怒哀楽を一つの表情で表そうとするとこうなるのか。


「ごめーん、何言ってるかわかんなーい」

「ふざけひぃいいいいいいいああああ!」


 つられて私も笑いそうである、ふざけないで頂きたい。


「じゃあ私トレボール行くんで」

「ま、まっへぇ! まっへぇ!」


 私がアイディールさんに背を向けると、必死に呼び止めようとする声が聞こえた。

 ハッキリ言うが、スゲエ楽しい。


「ゆるひて! おにぇがいへす!」


 おー、おー、数日前に私に足を舐めさせて散々嬲って下さったアイディールさんが、鼻水垂らして涙目で私に許しを請いていますよ。

 なんかこう、グッと来ますね。

 これがアイディールさん自身も言ってた「人を嬲って楽しむ」ってやつか。


「許して欲しいですかぁ?」

「ひゃ、ひゃいぃいいい!」


 なるべく執務室で、私を虐めた時のアイディールさんを真似て言ってみた。

 もう完全に余裕が無いのか、顔を真っ赤にしながら返事をするアイディールさん。

 さてさて、じゃあ言わせて頂こうかな。

 トドメを。


「『申し訳ありませんでした、この無様な雌豚をお許しください天上院弥子様』ってしっかり(・・・・)言えたら許してあげてもいいですよぉ?」


 私の言葉を聞いて、アイディールさんの顔はそれはもう凄い事になった。

 真っ赤だった顔が更に赤くなり、目が血走っている。

 いや、くすぐりによる呼吸困難によるものかもしれないが、人間が普通に生きててする顔じゃない。

 鬼の形相というに相応しいものだっただろう。


「ヴィエラさん、少しの間だけ止めてあげて」

「わかりました、ヤコ」


 どうやら私の言う事には素直に従ってくれるようだ。

 若干痙攣するアイディールさんに近付き、下から見上げる。


「さぁ、言ってみてよアイディールさん」


 ふぅふぅと荒い息をしていた彼女だが、やがてその呼吸は落ち着いてくる。

 そして私を思いっ切り睨み付けると、唾を私の顔に吐きかけた。


「調子に乗るんじゃないです。メス豚バカ女」

「そっか」


 どうやら彼女はプライド高いが、ずる賢くは無いらしい。

 素直にその場だけでも従っちゃえばいいのにな。

 でもそういう子は嫌いじゃないよ。


「ヴィエラさ「待ちなさい!」……なに?」


 私がヴィエラさんにくすぐりを続行するように言おうとすると、アイディールさんが大声でそれを遮った。

 もう落ち着いたはずなのに、体をプルプルと震わせて下を向いている。


「……した、……さい」


 そして凄い小さい声でボソボソと何かを早口で呟いた。

 申し訳が全く聞こえない。


「聞こえないな~?」

「申し訳ありませんでしたぁ! この無様な雌豚をお許しくださいテンジョウインヤコ様ぁ!?」


 ぶち切れである。

 というか案外素直に言うのね、結構くすぐりがキツかったのか。


「ヴィエラさん、彼女の拘束を解いてあげて」

「……わかりました」


 凄く納得のいかない表情のヴィエラさんだが、渋々といった感じで根っこを地面に還らせた。

 降ろされたアイディールさんは、ぺたんと脱力したように手を地面に付いて座っている。

 だがすぐに立ち上がり、完全変態モードを解除して私に近付いてきた。


「このボケカスビッチがぁああああ!」

「ぐへぁ!」


 そして凄まじいスラングと共に、全力で拳を振り抜き、私のほっぺたをぶん殴った。

 凄い痛い、血の味がする。

 口の中切れたなコレ。


「痛いよ……」

「当たり前でしょうがこのタコ! 私が何をしたっていうんですか!」


 全くその通りである。

 トレボールに行けと彼女は私に一言も言ってないし、ヴィエラさんからアイディールさんが責められる筋合いは無い。

 でも、私は数日前アイディールさんにされたことをやり返しただけだ。


「アイディールさんがしたことと同じことしてやろうと思って」

「私はいいんですよ偉いから!」


 凄い暴論である。

 これ以上無いほど権力を悪用してる良い例だろう。


「これで恨みっこ無しってことにしない? 今後は仲良くしましょ」

「ふざけんじゃありません!」


 その後、彼女の怒りを落ち着かせるのに10分くらいかかった。


「ヤコ」


 アイディールさんが落ち着いた後、ヴィエラさんが私に声をかけてきた。

 あぁ、こっちの問題が全く解決してなかったな。


「この森を出てしまうのですか、ヤコ」

「うん。行きたい場所が出来たんだ」


 私の言葉に、ヴィエラさんは口元に指を当てて考える。

 そしてしばらくすると手を降ろし、口を開いた。


「駄目です」


 ずっこけそうになりました。

 え、駄目ってなに?

 嫌ですとかじゃなくて、可能か不可能かなの?


「この流れで駄目っていうの?」

「流れ?」

「いやだって今のはどう考えても、離れるのは辛いけど私が行きたいって言うんなら行かせてあげようって流れでしょ」

「何言ってるんですか貴女は……」


 私の言葉に、アイディールさんが呆れた顔をしている。

 えぇ……でも実際今そうだったよね?

 散々悩んだ末、ヴィエラさんが優しく私に許可してくれるって流れだったはずだ。


「私と離れて外に行くだなんて許しません、ヤコ」

「そこをなんとか頼みますよヴィエラさん」


 なんだろう、結婚した間柄というよりは母と娘の会話になってきた気がする。

 私はそれとなく心を許し合って友になったアイディールさんに視線を送る。

 助けて。


「なんでこっち見るんですか」

「アイディールさんからもなんか言ってやって下さいよ」

「貴女達の漫才に巻き込まないでくれます?」


 漫才とは失礼な。

 アイディールお父さんもヴィエラお母さんに何か言ってよ。いや、アイディールさんは女だけど。

 私がじっと見つめていると、彼女は心底嫌そうな顔をしてヴィエラさんに向き直った。


「えーっと、ヴィエラさん、でしたっけ?」

「はい、先程は私の勘違いだったようで失礼しました」

「ホントですよ。過ぎたことですし良……くはないですけど」


 アイディールさんが私を横目で睨み付けてくる。

 その話は終わったでしょ、今は私がお外に行きたいってお話してるの。


「なんでこの女が外に行くのを引き留めるんですか? どうでもいいでしょうこんなバカ」


 辛辣過ぎる。


「ヤコは私の運命の人なのです。結婚もしました。なので生涯二人で寄り添うのです」


 ヴィエラさんの話を聞いて、アイディールさんが私を見てきた。

 彼女の話は本当かと目で訴えてきている。

 前半部分は否定しない。


「じゃあもう無理ですね、この女には一生ここで過ごしてもらいましょう」

「ご理解ありがとうございます」

「ちょっと待って」


 待って、お願いだから待って。

 さっき私を引き留めたアイディールさんばりの剣幕で引き留める。

 いや諦めないでお願いだから。

 私はアイディールさんの肩をつかんで揺さぶると、心底ウザったいという顔をされた。


「制服にシワが付くんでやめてくれません?」

「頼むからもうちょっと粘って」

「いいでしょう別にここで一生過ごせば」

「今回の事件の真相が闇に埋もれるよ!」


 なんだかんだ言って自分の仕事が大事なのだろう。

 私が行かないと今回の事件の証拠集めが出来ないという事を盾に取ったのが功を奏し、舌打ちと共にアイディールさんは再びヴィエラさんに向き直った。


「あー。ヴィエラさんがこの女に付いてったらどうなんですか?」


 そうだよ、その手があったわ。


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