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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第四章 植物人のヴィエラ
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話し合いだけど襲撃だけど迎撃するけど

「まぁ、基本的にはいつも通り古代森林に侵入して来た存在を確認したら即座に対処するという形でいいかのう?」

「あー。それが今回罪の無い子供達を人質に取られてる可能性がありまして」

「ふむ? 子供とな」


 ドレッドと出会うきっかけとなった誘拐事件。

 植物人は無邪気な存在を好むという言い伝えに、犯罪組織は子供を集めて人質に取り、この森に攻め込んでくるらしい。


「実は植物人は子供のような無邪気な存在を好むという言い伝えがあるんです」

「……心当たりはあるな」


 どうやらおばば様には心当たりがあるらしい。

 非常に険しい顔で、フードの首元を弄っている。


「この森が石垣で囲われているのは知っているじゃろう?」

「えぇ、まぁ」

「10年に一度くらい稀になんじゃがな、度胸試しだと言ってラポシン王国の悪ガキ共が石垣を乗り越えて古代森林に入ってくるんじゃよ」


 かなり勇気のあるお子様だなぁ……

 でも確かに、幼い子供はタブーを破ってみたいという欲求に駆られることもあるのかもしれない。


「大人は容赦なく始末するんじゃが、流石に善悪の区別もつかぬ子供を肥料にしてしまうのは気が引けてのう。気絶するまで脅した後、森の外に返しておったのじゃよ」


 肥料にされるのか。

 まぁ森で死んだら自然とそうなるか。

 なるほど、確かにこれで合点がいった。


「まぁ50年に一度くらい二回目のチャレンジをしてくるバカもおっての。その時はサヨナラじゃよ」


 恐ろしいことを聞いてしまったかもしれん。

 その情報は言わなくて良かったですよおばば様。


「多分それが原因ですね」

「やっぱり子供だろうと慈悲をかけるのはまずかったかのう。誘拐された子が可哀想じゃわい」


 それに関しておばば様に非は無いと思います。

 確実に悪いのは誘拐してる犯罪組織の方なんで。

 でも気になっていることが一つある。


「なんで古代森林は人を拒むんです?」

「……それは言えんな。少なくとも今は」


 そもそも植物人の存在がもっと明らかになっていれば、犯罪組織も付け狙おうとはしなかっただろうと思っていたが、何やら深い事情があるらしい。

 また導き手関連なのだろうか。

 でもいつか教えてくれそうな口ぶりだし、その時に聞けばいいだろう。

 どうせ口を割る気はなさそうだし。


「人質がいるというのであれば出来るだけ殺さぬよう気を付けはするが、もしも止むを得ない状況になった場合は諦めてくれ。よいな」


 まぁ完全に「人質なんて知ったことか」というよりはマシな返答だろう。

 おばば様としては部外者である人間の子供よりも、この森を守るのが最優先なのだろうし。


「わかりました。では中央王都の協力者に連絡をしてもいいですか?」

「うむ、頼んだ」


 私はスマホを取り出し、渡されていたアイディールさんへの連絡先を呼び出した。

 私の呼び出した番号は、散々嬲られたアイディールさんの執務室に直接繋がる番号らしい。

 早速連絡先に電話を掛けると、2回のコール音がした後にアイディールさんの声が聞こえてきた。


『お疲れ様です。アイディールです』

「ヤコ・テンジョウインです。古代森林の植物人とコミュニケーションが取れました」

『おぉ、歴史的快挙ですね。正直貴女と話すことはもう無いと思ってましたよ』


 どうやら彼女の中で私はもう死んでいる扱いだったらしい。

 まぁ確かに私も結構な勢いで襲われたのだが。


「古代森林に被害が及ばない範囲外であれば、人質の救出も協力してくださるそうです」

『十分です、こちらも組織の動きを大まかには掴むことに成功しました。まぁダミーである可能性もあり得ますが』


 流石アイディールさんだ。

 私を追跡した時のストーキング能力も、こうして味方にすると頼もしく見える。

 私とアイディールさんが別れてから3日目じゃないか?

 いくら私から伝えたドレッドの情報があるとはいえ仕事が早い。


『襲撃は今日から約一か月後、特殊なロボットを用いて古代森林を取り囲み、侵入してくるそうです。この特殊なロボットの中に人質が隠されていると推測されています』


 特殊なロボットか、想像もつかないな。

 というか大まかというより結構詳しくないか?

 一か月後であれば、かなり準備する時間もありそうだ。


「結構時間には余裕があるんですね」

『えぇ、中央王都やラポシン王国の王家とも秘密裏に連絡を交換し、迎撃の準備を整えています』


 うむ、流石スーパー有能裁断者アイディールさんだ。

 一切の隙が無い。


「のう、導き手殿。電話中に申し訳ないんじゃがいいかの」

「どうしたんです? おばば様」


 アイディールさんの電話中に、おばば様が話しかけてきた。

 おばば様の声は、どこか切羽詰まった声に聞こえる。

 どうしたのだろうか。


「この森に、たった今かなりの数の兵器が侵入してきたのじゃが」


 ……ん?

 え、ヤバくね。

 一瞬何言われてるのか理解出来なくて固まってしまった。


「ちょっとアイディールさん」

『どうしました?』

「植物人代表の方から、たった今古代森林が襲撃されてるとの情報が入ったのですが」

『……は?』


 アイディールさん、一か月後じゃなかったんですかアイディールさん。

 トゥデイのナウなんですけどアイディールさん。

 とにかくもうアイディールさんとお話している暇は無い。


「そういうことなんで、今すぐ可能な限りの応援をこっちに下さい」

『正直衝撃で何が起こったのか理解出来ませんが、至急ラポシン王国から応援を出すように連絡します』

「じゃあ電話切りますね、サヨナラ」


 私はウルトラ無能裁断者さんからの返事も聞かずに電話を切る。


「おおば様、今どういう状況ですか?」

「森を八方向に囲まれておるな。火炎放射器のような物で木々を焼き払いながら中央に進撃してきておる」


 状況は、想像していたよりも深刻だった。


 私はおばば様と共に、襲撃されている最も被害が激しい場所へ向かった。

 ロウターに跨り、古代森林の上空を移動する。

 少し遠方に、木々が煙を立てて燃えているのが目に見えた。


「これは……かなり酷いな」

「そうだね」


 燃えているのはそこだけじゃない。

 見渡す限り全方位に煙が立っている。

 だが私の体は一つしかない、当初の目的の場所へ向かおう。


「ロウター、急いで」

「承知した」


 近付けば近付くにつれて、皮膚に伝わる熱さが強くなっていく。

 酸素とか大丈夫かな。


「ロウター、酸素を私に与えてくれる便利な魔法とかない?」

「そんなものが存在するなら、海底都市に入国する時使っておるわ」

「だよねぇ」


 流石にロウター酸素ボンベ作戦は駄目だったようだ。

 こうなればなるべく火の無いところから近付いていくしかない。


 目的地周辺に辿り着くと、木が燃えるバチバチという音と共に、おばば様の召喚した木の根っこが暴れ狂う轟音が聞こえてきた。


「ワシの木の根が暴れているところに兵器がある!」

「わかった!」


 おばば様の言葉に従い轟音がする方に近付くと、そこには玉葱のようになって何かを押さえつけている木の根っこが三つ存在した。

 だが時折その中から火炎が噴き出している。

 おそらく中で捕らえられた兵器が、火炎放射で根っこを焼き切ろうとしているのだろう。

 下手に刺激すると被害が広がって逆効果かもしれない。

 完全変態モードで一気に決めよう。


「二人とも、お願い」

(うむ、承知した)

「手短にいくぞ」


 私は光に包まれると、ペニバーンとロウターの世界に行く。

 本来であればゆっくりと時間を取りたいが、今は本当に緊急事態だ。

 二人も同じ気持ちだったらしく、軽いキスを済ませるとすぐに完全変態モードへ移行出来た。


「おばば様、合図をしたら一個ずつ拘束を解いて行って!」

「承知した!」


 私は一つ目の根っこのすぐそばまで移動すると、軽く腰を落とした。


「一個目、お願い!」


 合図を聞いたおばば様が拘束を解くと、中からまるで巨大な蜘蛛のような八本足のロボットが現れた。

 足と足の境目から放射口と思われるものが伸びており、中央にはガラスのように透明な球体がある。

 そしてその中には。


(外道がっ……!)

「究極性技 幸四十八手 其ノ十四」


 その光景を見て、私と一体化しているロウターが憎々し気に呟く。


「"ダキアゲ"」


 究極性技 幸四十八手 其ノ十四 "ダキアゲ"

 使用者の望んだ対象を『すくいあげる』技。

 時としてダキアゲは立ちふさがる巨石をも掬い上げる。

 時としてダキアゲは囚われの姫をも救い上げる。


 ダキアゲによって破壊されたマシンから放り出された子供を受け止め、私はそれを一度地面に置いた。

 目を開かない子供が気絶しているだけなのか否かを確認している時間など、今は無い。


 同じような狂気が、少なくとも私の目の前に二つ。

 そしてきっとこの森へ無数に侵入しているのだ。


「次お願い!」


 二個目の拘束を解除してもらうと、今度は先程子供が入れられていた球体が、透明ではなく真っ黒な鉄製という以外は何もかわらないマシンが現れた。

 それを先程と同じ様に攻撃して破壊し、子供を受け止めようとしたが、今度は何も出てこなかった。


「真っ黒い方には何も無い、ってこと?」


 続いて三個目の拘束も解除して、中から出て来たのは二個目と同じく真っ黒な球体のマシンだった。

 念の為一回目の時と同じ様に破壊したところ、今度は一回目の時の様に子供が放り出された。


(これは……)

「ハズレもあるってことなの?」


 だとしたら輪をかけて最悪だ。

 中身の見えないマシンにも子供が入っている可能性があるのなら、我々はそれを警戒しながら破壊していかなければいけない。

 だがあちらサイドは適当にダミーと子供入りを混ぜて突入させればいい話なのだ。


「導き手殿、次のポイントに行かねば」

「わかった……けど」


 私は地面に転がっている二人の子供達を見下ろした。

 気絶この子達を早急に何処かへ避難させなければ、焼け死ぬか窒息するかのどちらかだろう。


「その子らはワシが中央に移動させておく。だから早くするのじゃ」

「ありがとう、おばば様」


 私はおばば様を信じて、次のポイントに向かった。

 次の場所には、やはり先程のように三体のマシンが拘束されていた。

 三体で一組という形で攻めてくるのだろうか。


「……すまんな」

「どうしたの?」

「いや、気にしないでくれ。拘束を解除していくぞ」

「お願い」


 被害はこうしている間にも拡大している。

 私はすぐに3つのマシンを破壊し、また次のエリアに向かう。

 今度の子供は一人だけだった。

 移動している最中、前を行くおばば様が私を振り返る。


「次で最後じゃ」

「え?」

「残りは全てワシとヴィエラが対処した。もう後は次のエリアだけじゃよ」


 おぉ、ヴィエラさんが対処してくれていたのか。

 なんて有難い。ならば私はここを確実に終わらせよう。


「じゃあ最後お願いします、おばば様」

「……うむ、了解した」


 私はおばば様と協力して三つ目のポイントのマシンも破壊する。

 ここでは子供を二人救出した。

 全てが終わった頃、火の手はかなり広い範囲に及んでおり、私もかなり呼吸がキツくなってきた。


「一旦中央に逃げるぞ、導き手殿」

「了解!」


 私は救出した二人の子供の内、一人を背負う。

 もう一人はおばば様が根っこを召喚して運んでくれた。

 おばば様は二人とも運んでくれると言ってくれたが、私の自己満足だ。

 先程の3人も本来ならこうして避難させてあげたかった。


「火はどうやって消化するの!?」

「少しずつではあるが、火の元になっている木を消滅させたり、泉の水を火にぶつけることで消化しておる。導き手殿が心配することはない」


 おばば様の言う通り、私が心配したところで消火活動に関しては手伝えることは無いだろう。

 私はロウターに跨って、子供達が避難させられているであろう場所へ向かった。

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