表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第四章 植物人のヴィエラ
91/291

電話したけど元気が出たけど殺意が湧いたけど

 ピコーン!


【お知らせ】

 徳ポイントが10、天使ヴィクティムの祝福の効果により、ボーナスポイントが5追加されました。

 称号スキル『夜の王』を取得しました。究極性技 真四十八手との統合を開始。

 究極性技 真四十八手は究極性技 (さち)四十八手に昇華しました。


 目が覚めたと同時に鳴るシステム音。

 凄い久々に聞いたなコレ。

 なんか色々起こったけど、ゆっくり整理していこうか。


 夜の王って人と夢で会ったのは覚えてる。

 彼女にドスケべをする上での心構えを教わった後、なんか2つくらい贈り物をされた。

 多分それがこの徳ポイントと……幸四十八手とやらだろう。

 私の徳ポイントの取得条件は『多くの人に喜びを与える』だったはずだ。

 夜の王さん相手には何にもしていない、いやむしろ教わってたんだし、あの人が徳ポイントをプレゼントしてくれたのだと予想出来る。


 そしてもう一つ、究極性技 幸四十八手とやらだ。


「スキルカタログ、起動」


 ほんとこの機能使わないんですよね私。

 いや、徳ポイントを入手する機会が無かったからしょうがないんですよ。

 エンジュランドで家族に電話をかけた時以来か。

 折角ポイントを手に入れたのだし、電話してみよう。


「いや、待てよ」


 前回は前世の両親と会話が出来るなんて知らなかったし、つい気が動転して上手く喋れなかった記憶がある。

 今回は喋る内容をよく考えよう。


 前回は確か、私が元気だってこと伝えて終わっちゃった気がする。

 そんなんじゃとても親は安心出来ないだろう。

 確か1ポイントで1分だったはずだ。

 全部使ったとして15分、充分に色んな事が話せる。

 夜の王には感謝しなければ。


(天上院様ーーー!)

「うぉっ」


 スキルカタログから声が聞こえてきてびっくりした。

 この声はヴィクティムちゃんだね。


「お久しぶりだね、ヴィクティムちゃん」

(寂しかったです、天上院様! 本日はどうなさったのですか?)


 スキルカタログは究極性技 幸真四十八手について説明が載ってないか調べる為だったが、両親と電話もする必要もある。


「『異世界公衆電話』ってスキルで前世の家族と電話しようと思ってね」

(あぁ、あの凄いコスパの悪い……)


 うーん。コスパの悪いというが、そうだろうか?

 たった一分でも、もう会えない人と話せるというのは幸せな事だと思うが。


(月額50ポイント支払う『異世界カケホーダイ』の方が人気なんですよね)


 ……そんなスキルあるんかい。

 でも結構高いな、手持ちには15ポイントしかないし。

 まぁ、しばらくは『異世界公衆電話』を使うしかないだろう。


「『異世界公衆電話』を使わせて貰えるかい?」

(了解しました!)


 ヴィクティムちゃんの元気な声と共に、スキルカタログから電話番号の一覧が表示される。

 前回は気付けなかったが、よく見るとどれも私の知っている番号しかない。

 どうやら知らない番号に電話はかけられないようだ。

 私は前世の家の番号を見付け、電話をかけた。


 暫くのコール音が鳴った後、ガチャリという音がした。


「もしもし、天上院ですが」


 一か月ぶりだっけ、この声。

 以前聞いたときは今にも枯れ落ちてしまいそうな声だったが、心なしかそれよりもまともな声に聞こえる。


「お母さん、弥子だよ」


 私がそう言うと、数秒程の無音が流れた後、ドンガラガッシャンと凄い音が聞こえてきた。

 その後に聞こえてくる。「貴方、貴方! ヤコが!」という物凄い大きな声。

 なんだろう、申し訳ないという思いと共に、少し嬉しい気持ちが湧き上がってくる。


「ヤコなのか!?」


 続いて鼓膜が破れそうなほど大きな声が聞こえてきた。

 思わず体がビクッとなる。

 あまりに必死な父の声に、再び罪悪感が湧いてきた。


「落ち着いてお父さん。今回は15分くらいなら喋れるから」

「お前どこに行ったんだ! 誰かに攫われてるのか!」


 ……私は姫子ちゃんに殺されたはずなんだけど、死体はまだ見つかってないのかな?

 まぁ想定の範疇だ。前回に私が電話した時、私が生きている事実に対しては聞かれなかったし。


「大丈夫、私は誘拐されてるわけじゃないし、無事に生きてるよ」

「じゃあなんで何ヵ月も家に帰ってこないんだ! 警察にも届けを出したのに全く手掛かりが掴めないんだぞ!」


 え、そうなの。

 日本の警察の捜査力で見つからないとか、私の死体はどれだけしっかり隠されてるんだろうか。

 姫子ちゃんスゲエ。


「あのね、これから私が言うことを一切疑わず、そのまま信じて欲しいの」

「……どういうことだ?」

「本当に信じられないこと言うからね? 別にヤバい薬とかやってないよ?」

「いいから早く教えてくれ。どこにいるんだ」

「私、今地球にいないの。異世界……って言ってわかるかな」


 さて、無言の時間が始まったぞ。

 まぁ理解出来るわけねえだろ、私も前世でそんなん言われたら頭おかしい奴としか思わないし。

 どうやって説得、というか納得させるかな。


 ん? 電話の向こうの声がちょっと聞こえてくる。


― 陽彩、イセカイって星知ってるか? 地球じゃないらしいんだが。

― はい? 何を言ってるんですか? ふざけてないでヤコに場所を聞いてください。


 駄目だ信じてない、というか異世界って単語を理解してない。

 もっと分かりやすい説明をしなければ。

 まだ父さんより母さんのが話通じそうだなコレ。


「ごめん、父さん。母さんに代わって」

「え? あ、あぁ。わかった」


 私は絶対に両親へ現状を伝えなければいけない。

 それが今まで二人を不安にさせ続けていた私への罰であり、義務なのだ。

 大丈夫、まだ時間は10分以上ある。


「代わったわよ、ヤコ。それで? ちゃんと説明して頂戴」


 そして私は、思い返せば自分でも理解出来ない状況を親に理解させる為、説明を開始した。


「ヤコは学校の帰りのHRまではいたんでしょう? その後何があったの」


 清宮姫子ちゃんって子に刀で刺し殺されました。

 なんて正直に言う訳にもいくまい。

 一応へったくそな言い訳は考えてある。


「えーっとね、ファンタジーな話なんだけど信じてもらえる?」

「内容によるわね」

「下校中の私の目の前に、不思議な光が現れたの」

「うんうん、それで?」

「それで気が付くと魔法の世界にいたの」

「嘘ね」


 はい、嘘です。

 でも半分くらいは本当なのが困った事実だ。

 一応この嘘をついた理由もそれである。

 どうせそのまま説明しても殆どが意味不明なのだし、最初から意味不明にしちゃえばいいと思ったのだ。


「えーっとね、じゃあ私がこっちの世界に来てからの話をするね」


 そう言って私は、この世界に来てからの出来事を、ある程度簡潔に母さんに伝えた。

 たまに質問をしてきたりもしたが、基本的には水を差さずに聞き続けてくれた。

 すべての説明が終わると、母さんは軽いため息をついた。


「本当に、物語みたいな信じられない話ね」


 ほんと、波乱万丈過ぎるよねぇ。


「でも、今の話をしてた時のヤコが、嘘をついてるように思えない」


 そして母さんは電話越しに軽く笑った。


「何よりヤコの声が元気そうだし、よしとします」


 本当、いい母さんだよなぁ。

 こんな世迷言にしか聞こえない話を信じてくれるって言うんだから。


「電話はまた掛けてこれそうなの?」

「すぐには無理かもしれない。でも絶対またかけるよ」

「そう、じゃあお父さんに代わるから、時間の許す限り声を聞かせてあげて」


 私はもう大丈夫だから。

 そう言って母さんはお父さんに受話器を渡した。

 でも、微かに嗚咽を漏らす音が聞こえる。


「ヤコ、代わったぞ」

「お父さん」

「……本当に、死んじゃったのか、攫われたんじゃないかって心配したんだぞ」


 目頭が熱いんですが。

 先程の母さんと合わせて本当に申し訳ない。

 いや、もう申し訳ないという言葉以外思いつかない。


「でもな、ヤコの元気そうな声を聞いて、お父さんは安心したよ」


 夫婦揃って同じこと言うんじゃないよ。


「親から家業を継いで、特に大きな夢を持つことが無かった僕にとって、僕とは全く違う人生を歩んでいたヤコは、見ているだけで楽しかった」


 私の実家は豆腐屋なのだが、私自身は自分が本当にやりたいことを見付けたいという一心で勉強し、椿ノ宮へ進学した。

 確かに父さんの言う通り、私と父さんの人生は全く違うだろう。


「でもいつかきっと、僕の目が届かない場所にヤコが行ってしまうかもしれないとも思っていたんだ」


 お父さんの声は、学校へ行く私に「いってらっしゃい」と言ってくれる時のように、優しい声だった。


「だから僕たちの事は気にしないで、ヤコは自分のやりたいことを」


 ツー、ツー。

 そこで時間が来てしまい、強制で通話は切られてしまった。

 でも、父さんの伝えたいことは、しっかり伝わった。


「またね、父さん、母さん」


 久しぶりに聞いた親の声に、なんだか元気が出て来た。

 ヴィクティムちゃんにもお別れの言葉を言って、スキルブックを閉じる。

 究極性技 幸四十八手に関しても調べはしたのだが、結局見つからなかった。

 仕方ないから実際に使って確かめるしかないだろう。


「ヤコ」

「ん?」


 振り向くと、そこにはパジャマ姿から着替えてドレス姿に戻ったヴィエラさんの姿があった。

 一応電話は木の外でやったのだが、起こしてしまったのだろうか。


「何をしていたのです?」

「あぁ、電話をしてたんだよ」

「でんわ? それはなんですか?」


 マジか、電話知らないのか。

 いやまぁ、使う意味もなさそうだしなこの人。

 多分私とおばば様以外の人物を知らないんじゃなかろうか。


「遠くの人と話す為の方法だよ」

「おばば様ならすぐ近くにいますよ?」

「いや、お話してたのはおばば様じゃないんだ」

「私以外の人と、お話したのですか? 運命の人、ヤコ」


 え、待って。その言い方怖いからやめて。


「私の両親とお話してたんだよ」

「りょうしん?」

「うん、お母さんとお父さん」

「おかーさん、おとーさん……それは大切な人?」


 大切な人だよなぁ。

 今日の電話で改めてそれを感じたわ。


「うん、そうだよ」

「私よりも、大切ですか?」


 おおっと。

 コレはなかなか答えずらい質問だね。

 こういう時の正しい回答はコレだ。


「いいや、君が一番だよ」


 これでいいんだ。

 どっちも大切なんて馬鹿正直に言う必要は無い、というか絶対言っちゃいけない。

 この会話を私の両親が聞いてるわけじゃないから両親は傷付くことは無いし、そもそもこういう質問をしてくる女の子は「君が一番」って言って欲しいだけだからね。

 尚、両親の目の前でこの質問をされた場合は詰みです、諦めて欲しい。


「そうですか。良かったです」

「勿論さ、私は君の運命なんだから」

「では、愛の証明をお願いします」


 ……ん?

 なんだそれ、愛の証明?


「何をすればいいんだい?」

「それは私が説明しようじゃないか」


 うぉっ、びっくりした。

 いきなり目の前の地面からボコッっという音と共におばば様が出て来た。


「愛し合う二人が初夜を終えた翌日に、愛の証明は行われる」


 おうその初夜ってやつな。

 ただ二人で並んで寝ただけなんだけどその点についてはどう思う?


「それは精神で結ばれた二人が、今度は実体で愛し合うのじゃ」


 待って。流れがおかしい。

 この流れはアレだぞ、昨日の誓いのキスと同じ流れだ。


「ズバリ、『導き手』殿とヴィエラの本体とのセッ〇スじゃ」


 そろそろブチ〇してやろうか、このバ〇ア。

「ふざけんなバ〇ア……!」

「おやぁ? まさか愛の証明が出来ないなどとは言うまいな?」

「何が愛の証明……! やってることは特殊なオナ〇ーでしょうが!」


 やはりここでおばば様を始末するしか無い。

 この人物も恐らく植物人である以上、きっとどこかに本体があるはず。

 それにペニバーンで大穴開ければ、私とヴィエラさんだけの素敵な世界の出来上がりだ。

 なるほど、好きな人との愛を邪魔する人間を殺そうとするヤンデレの気持ちが理解出来た気がする。


 よっしゃ、とりあえずこの森に生えてるそれっぽい木を片っ端から切り倒していくか。

 そう決めてペニバーンを呼び出そうとした私に声が掛けられた。


「愛の証明をしてくださらないのですか、ヤコ」

「ぐっ……!」

「愛の証明は愛し合う二人が永遠に結ばれるための儀式。安心せよヴィエラ、まさかやらないはずがない」


 私をヴィエラさんが潤んだ瞳で見つめてくる。

 クソッ!


「や、やるよ当然じゃないか」

「おぉ、流石だ導き手殿! では早速始めてくれ。ワシはここで見届けるからのう」


 せめてお前はどっか行きやがれ!

 絶対確信犯だろ! 愛の証明とやらが本当に存在するのかも怪しいものだ。


「くっ……!」


 どうする、本当にやるしかないのか。

 思い出すのは夜の王、そして両親の言葉。


― 君がすべきことは、相手に対する責任を全て抱えることさ

― だから僕たちの事は気にしないで、ヤコは自分のやりたいことを


 私のすべきこと、そしてやりたいこと。

 ヴィエラさんの不安そうな表情。

 目の前にある小さな苗木。


 やることはもう、一つしか無い。


「あっ……」

「ほう、本当にやるのか」


 オイちょっと小声で聞こえたぞ。

 やっぱり愛の証明なんて儀式ホントは存在しないだろ。

 まぁ今更やめないけど。

 やるからには徹底的にやってやる。


 私は苗木に近付き、まずは女の子の髪を触る様にその枝に触れる。

 最初は前戯からだ。一度目は誓いのキスとほぼ同じ感じで軽く口付けをする。

 普段は女の子の様子を見てフレンチかディープかを繰り返すのだが、如何せん今回のお相手は物言わぬ苗木だ。

 軽く横目でヴィエラさんを盗み見たが、手を前で祈るように組んで頬を染めてるだけで表情の変化は見られない。

 ならばこちらの自由にやらせてもらおう。


 適当に2、3回ほど軽いキスをした後に、枝一本を横から口に含むようにして咥える。

 強過ぎない程度に幹を撫でながら咥えた枝を舌で顔を動かしながら舐める。

 それをちょっと疲れたら再び枝を変えてフレンチキスをしての繰り返し。


「よし」


 全体の1/4の枝は舐めたところで、本番に入る。

 まぁ普通は前戯を継続しながら交互に服を脱いでくもんだけど、今回は相手が相手。

 私は服を脱ぎながらも口だけは動かし、まだ舐めてない枝を舐める。

 そんなに急いで全部脱ぐ必要は無い、時間はいくらでもある。


「……よし」


 最後に自分の下着を脱いだところで、本番を始める。

 やはり、ここが一番の難関だ。

 相手が人の形をしてないのが一番の問題である。

 この真っすぐ伸びた苗木相手に、自分の培ってきた性技は通用しない。


「究極性技 幸四十八手 其ノ一」


 だから、新しく手に入れた性技に頼らせて貰おう。


「"タチカナエ"」


 究極性技 幸四十八手 其ノ一 "タチカナエ"

 双方が望む願いを実現させる技。

 相手が病める時は自らが支える。

 自らが病める時は相手が支える。

 愛がそこにある時、"タチカナエ"は常識を捻じ曲げる。


「ッ……!」


 私の体が、ヴィエラさんの苗木と一つになるのを感じる。

 幹に絡ませた手足がまるで、苗木に溶けていくかのような感覚。

 間違いない、今なら。


「イけるっ……!」


 その日、私は何かを失って何かを手に入れた、そんな気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ