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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第四章 植物人のヴィエラ
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王様だけど説明だけど久しぶりだけど

 ノックの後、扉がゆっくりと開かれる。

 まず先に入室してきたのは、腰にハンマーをぶら下げた全身を中世のような鎧でガッチリと固めた女性。

 次に入室してきたのは、白い布地に金色の刺繍を施された服を着た壮年のおじさん……というよりお爺さん?。

 そして最後には、腰に鞭をぶら下げたこれまた鎧を纏った女性だ。

 女性二人には見覚えがあるんだが、思い出せない。

 おかしいな、こんな綺麗な人だったら覚えてると思うんだけど。


 3人の内、お爺さんが私の向かい側の席に座ると、女性二人はそれより一歩後ろに付いて直立不動になった。

 席に座ったお爺さんにメイドさんが紅茶を注いでいる間、お爺さんは私をじっと見つめてきた。

 誰だろうこのお爺さん。多分偉い人だと思うけど。

 メイドさんが紅茶を注ぎ終わり、一礼して再び壁の花になった後、お爺さんがゆっくりと口を開いた。


「ガチレズバンザイ国のドスケべ=クイーン三世殿でよかったかな?」


 ちげーよ。

 いや合ってるけども。

 随分と懐かしいネタを放りこんでくれましたね。

 私がどう反応していいか困っていると、お爺さんはニヤリと笑う。


「ふっふっふ、冗談だよ。ヤコ・テンジョウイン殿でよろしいか?」

「確かに私はヤコ・テンジョウインですが……貴方は?」

「ほう、私を知らない者は久々に見たぞ。まぁ其方が知らぬのは仕方がないかもしれんな」


 そこまで偉い人なのか。

 でも悪いが本当に知らない、一体誰だろう。


「私の名前はリリー・エクスト。王だ」


 ……なんかちょっと偉い人に取り次いで許可だけ貰おうとか思ってただけなのに、一番偉い人来ちゃったよ。

 いや待て、今更王様だからと焦る必要はない。

 よくよく考えたらあの王女のお父様だ。

 これは将来あの王女様と結婚する為、一足早くお父様にご挨拶出来たとポジティブに考えよう。


「王様だったんですか、これは大変失礼いたしました」

「気にするでない。いつぞやの王都祭では私の娘と中々素晴らしい戦いを見せてくれたな。私の左右にいる二人の護衛に見覚えは無いかね? 乱入者の選別を担当した者達なのだが」


 あぁ! やっと思い出したわ。

 あの巨人の女性二人か!

 え、でもだいぶサイズが違うんですが。


「あのお二人ですか?」

「特別な術式で身体を小さくしておるのじゃよ。普段はこうして私を守ってくれておるんじゃ」


 へぇ、そうなんだ。

 近衛騎士様ってやつだったんだね。

 そういえばあの時指名手配されて、その後対処してくれたのは王様だって聞いた気がする。

 お礼を言わねばならないな。


「指名手配の件で、対処してくださりありがとうございました」

「いや、本来ならば放っておいたのだがな。『導き手』と知ってしまっての」


 えぇ……本来放っておかれるところだったんですか。

 やっぱりこの国ってちょっとヤバいよね。

 でも知ってるワードが出て来たな。

 海底都市でもエンジュランドでも聞いた単語だ。


「『導き手』というのに関するお話は聞いたのですが、イマイチよくわかっていなくて」


 ウミオーさんに聞いた話は抽象的過ぎたし、ランスロウ卿にはそう呼ばれただけだ。

 自分としては好き勝手に生きてるだけだし、そんな大層な役割を果たしてるとは思えない。


「ふむ、ならば私から細かく説明しよう」


 そう言うとエクスト王は人払いをした。

 メイドさんも執事さんも部屋から出て行き、残ったのは私とエクスト王だけになった。

 密室に男女二人、間違いは起こる気しません。


「鍵となるのは一人の『導き手』と、『七色の英雄』だ」


 エクスト王は立ち上がって、部屋を歩き回りながら語り始める。

 なんというか、ゲームのワンシーンみたいだ。


「第一に『苛烈の赤』、全てを圧倒し服従させる力」


 うん、強そうだ。

 多分それぞれの色に合致する人々と私が出会うのだろう。

 ひょっとしたら既に出会っている人物もいるのかもしれない。


「第二に『篤実(とくじつ)の橙』、全てと和解し、許す力」


 なんだその聖人。

 そんな人とこれから出会えるかもしれないのか、楽しみだな。


「第三に『理想の黄』、全てを夢見て、追い求める力」


 ほう、なんだろう。結構頭がお花畑な感じの子ってことなのかな?

 混合世界で会った子はワリと現実的な考えの子ばっかりだったしなぁ。

 そもそも女の子と決まってるわけじゃないけど、どんな人かは気になる。


「第四に『魔性の緑』、全てを惑わせ、狂わせる力」


 二連続くらいで優しそうなイメージだったけど、ここにきてまた攻撃的なのが来たね。

 ここまで「二字熟語+色+全てを~」って感じで紹介された。

 多分それがパターンなのだろう。

 というか緑って、私のイメージでは結構優しい色なんだけどな。

 どうやら国王様の紹介によるとそうでもないらしい。


「第五に『情愛の青』、全てを信じ、繋ぎ止める力」


 ここに来て再び聖人っぽい感じの人だね。

 七色の英雄さんは割といい人が多めなのかな?

 まぁでも優しそうな人っと怖そうな人の比率は3:2だけど。


「第六に『鼓舞の藍』、全てを勇気付け、戦わせる力」


 おぉ、強そうな感じの人だ。

 赤い人が単独で強いってイメージなら、こっちはリーダーシップ的な強さに聞こえる。

 さて、次が最後の一人っぽいな。


「そして最後に『苦悶の紫』、全てを悩み、やがて最高の決断をする力。以上だ」


 えっ、なんか最後の人だけ辛そうじゃない?

 でも最高の決断をするって言われてたし……悪くはないのかな?

 もしそんな人と出会ったのなら、その人の悩みを早く解消してあげたい。


「既に『橙、緑、藍』の力は覚醒している。残るは『赤、黄、青』、そして『紫』だ」


 えっ、もう3人も会ってるのか。

 緑と藍と橙?


「その七人全員が覚醒したと同時に、『概念』もまた動き出して戦いが始まるのだ」


 『概念』ってのも意味わからない。

 そもそも概念って戦える相手なのか?

 物理的な肉体があるのだろうか。


「まぁ、現状君に伝えられる話は以上だ。何か質問はあるかね?」

「他の英雄さんとやらの場所はわかってるのですか?」


 王様の話し方だと、七色の英雄さん達の場所を既に把握しているように聞こえる。


「把握している。だがそれを『導き手』に教えるわけにはいかん」

「何故ですか?」

「運命が変わってしまっては困るからな、あくまで予定調和で進まねばならん」


 なんか言い方が気に入らないな。

 まるで私の行動すべてが既に決められたモノのようだ。


「だが安心するがいい。既に向かうべき道を示す手掛かりはその手にある」


 手がかりを既に私が持ってる?

 そんなものを手に入れた覚えはないけれど……

 まぁいいや、本題に入ろう。


「それともう一つ、植物人達が住む領域へ立ち入る許可が欲しいのですが」


 200年前の中央戦争以来、許可は一度も出されたことが無いらしい。

 もし出されたとしても多少難題を課せられるだろう。

 だから若干身構えつつ、私はその質問をした。


「構わん、すぐにでも手配しよう」


 だが私の予想に反して、許可は物凄くアッサリ出た。

 いいのかよ。


「『導き手』が次にどこへ行くか直感で決めた先こそが正しい道だ。我々はそれを最大限支援する義務がある」

「もし私が気まぐれで急に行く先を変えたら?」

「その気まぐれこそが真の選択肢となるだけだ」


 うーん、まぁいいや。

 結局私は何も考えず、女の子追いかければいいらしい。


「質問は以上のようだな。今から許可書を発行する。この部屋で引き続き待つが良い」


 そう言ってエクスト王は部屋から出て行き、退出後に再びメイドさんが入室してきた。

 すっかり冷めてしまった紅茶をメイドさんが淹れ直してくれた。

 そのままお代わりのケーキを頂きながら待っていると、執事さんが手に書状を持って部屋に入室して来た。


「こちらが『古代森林』を管理しているラポシン王国へ渡していただく書状です」


 そう言って執事さんは豪華というよりは、エクスト王の着ていた服のような白を基調として、金の刻印がなされた美しい状箱を机の上に置いた。


「ラポシン王国へは、王国の国賓ヘリでお送りするよう国王様からご指示が出ておりますので、どうぞご利用ください」


 いや、正直そっちはロウターいるから大丈夫なんだけどな……


「今すぐ向かわれる形でよろしいですか?」

「大丈夫です」

「かしこまりました。ではこちらへ」


 かしこまりましたって……

 ヘリってそんなすぐ飛ばせるもんなの?

 王様が部屋を出て行ってから30分も経ってないけど。


 私は執事さんに案内され、部屋の外に出る。

 なんだろう、廊下が異様に広い。

 ティーエスの家やドレッドの家も広かったなぁ。

 この世界に来てから豪華な建物にしか来ていないせいで、逆にこれが普通に思えてきた。

 執事さんはとある部屋の前に辿り着くと、その扉を開いた。


「こちらでございます」

「えっ」


 執事さんが開いた扉の先、部屋の中にヘリがあった。

 既に運転手さんが乗っているのだが、ドッキリかなんかのギャグにしか見えない。


「あの……これどういう」

「ヘリです」


 いや、ヘリだけども。

 どうやって飛ぶんですか。いや仮に飛んだとしても死ぬでしょコレ。


「どうぞ乗ってください」

「嫌です」

「何故です?」


 え、コレ私が悪いん?

 しゃあない、執事の目がマジで「え、なんで乗らないの?」って目をしてるし付き合って差し上げようか。

 私が近付くとヘリの扉が開いたので、そのまま搭乗する。

 なんだこのヘリ、前にも横にも窓ガラスが無い。


「本日のフライトを管理するのは、この私エモット・フラウンでございます」


 中に入室した私に挨拶してきたのは、白髪頭でギョロ目のお爺さんだった。

 え、パイロットには全然見えないんだけどマジで大丈夫なのかコレ。

 いや、まぁドッキリだろうしいいか。

 「ドッキリ大成功」の看板が出て来た時にどんな反応しようか考えようかな。


「では飛びます、シートベルトをお締めください」


 ヘリの座り心地は結構いい。

 お爺さんがヘリのボタンをすごい勢いで操作している。

 数十秒後、ヘリのプロペラがすごい勢いで回転を始めた。

 待て、マジで飛ぶの?


 そしてそのままヘリは部屋の中で浮き上がった。


◇◆◇


「お疲れ様です。ラポシン王国に到着しました」


 な、なんだったんだ。

 ヘリは部屋の中で浮き上がった後、そのまま真上に飛び上がった。

 天井へぶつかる! と思ったが、何故かヘリはそのまま真上へ飛び続ける。

 そしてあるところで止まったかと思うと、今度は再び下に降り始めた。

 あくまで外が見えなかった為、おそらくそうなっているだろうという予測でしかない。

 だがヘリの扉が開いたので外に出てみると、ヘリに乗る前に見た部屋では無く、どこか別の国の城の屋上だった。


「すみません、このヘリってどういう乗り物なんですか?」

「はい? ヘリはヘリですが」


 私の知ってるヘリコプターと違う。


「私の知ってるヘリは瞬間移動出来るものじゃないんですよ」

「ヘリは転移陣よりも遠くへ瞬間移動する為の装置ですよ?」


 最初からそう言え。

 この世界のヘリのおかげで、目的地には恐ろしく早く到達することが出来た。

 なんか王都の町並みを一望しながら飛ぶのかなとか考えてたけどそんなことはなかった。


「では私はこれで」

「ありがとうございました」

「お初にお目にかかります、御使者様。ラポシン王国第一王女、ピア・カモンと申します」

「ん?」


 中央王都へと転移していくヘリを見送っていると、後ろから声をかけられた。

 なんか聞いたことある声だなと思って振り向く。

 するとやはり見覚えのある人だった。


「えっ!?」


 どうやらあちらさんも覚えてくれていたらしい。

 自己紹介でピア・カモンと言っていたか。王都祭で私が乱入した時に戦った女性だ。

 私を蹴り飛ばした後、容赦なくガトリングをぶっ放してくださったのは今でも覚えている。

 彼女以外にも2人、侍従さんのような人が傍にいる。


「覚えて下さっているようで嬉しいです、お嬢さん」

「あの時の……ドスケべ=クイーン三世!?」


 そうそうドスケべ=クイーン三世ですよお嬢さん。

 なんだろう、エクスト王にそう呼ばれた時は何言ってんだろうコイツ感が凄かったんだけど、この女性みたいな美しい人に「変態」として覚えられてるとなんかこう……ゾクゾクします。


 ピア王女は驚きを隠せないようで、端整な顔を唖然とさせながら一歩後ろによろめいた。


「『古代森林』への立ち寄りを中央王から許可されたのが……この変態?」


 いやだなぁ、そんなあからさまに距離を取られたら……近付きたくなるじゃないか。

 私はピア王女に向かって、二歩程近付く。


「えぇ、正式にこうして王様から許可書を頂いて参りました。貴女が私をエスコートしてくださるんですよね?」

「ひっ」


 あー、可愛いなぁ。

 やっぱり美少女の怯える顔っていいよね。

 でもそろそろやめとこう、虐めすぎて嫌われるのは本意では無いし。

 ピア王女も段々と平静さを取り戻して来たのか、軽く咳払いをして仕切り直した。


「コホン、御使者様に大変な失礼をしました。カモン王家が御使者様の為、全身全霊でご協力させて頂きます」

「気にしないで下さい、こちらも少々ふざけ過ぎました」

「ご案内いたします、どうぞ中にお入りください」


 ここはお城の屋上だ。

 丁度太陽が沈みかけており、夕日が綺麗に見える。

 ラポシン王国のお城は中央王都のお城より幾分か小さい。

 ところどころ修繕中のような場所も見受けられる。

 私はピア王女の案内に従い、城の中へ入った。


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