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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第四章 植物人のヴィエラ
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お話したけど王城いくけどVIP待遇だけど

「さて、行こうか」


 姫子ちゃんのことはドレッドに任せよう。

 私はアイツのことを冷たく扱っているが愛故にだ。

 アイツにはそんな扱いをしても大丈夫だと思ってるからこそ冷たく扱えるんだ。

 信用と言う意味では誰よりもしているかもしれない。


 向かうは王城、フリジディ王女の住まう場所だ。

 だが今回はフリジディ王女に用は無い。

 王家の誰かに許可を貰えればそれでいいのだ。


「そういえば」


 フィストは今魔大陸にいるらしいが、ビッケさんはどうなのだろうか。

 王城に行く前に久々に顔を見たい。

 私は急遽予定を変更し、以前フィストに案内されたビッケさんのお店へ向かった。


「相変わらず奇抜な外装だなぁ」


 今はまだ昼間だからそこまででも無いけど、前回行った時は夜だったから凄いおどろおどろしかったのをよく覚えている。

 ん? お店の看板がCLOSEDになってるな。

 しまった、ひょっとして無駄足になったか。


「……ヤコさん?」

「お?」


 しょうがないと諦め、さっさと王城に向かおうとした私の背中へ、どこか人を誘う妖艶な雰囲気が滲み出ている声が掛けられた。

 私の知る限り、こんな色気のある声を出す人は一人しかいない。


「ビッケさん!」

「あら、やっぱり! お久しぶりねぇ、どうしたの?」


 おー。凄いラッキーだ。

 振り向くとそこには、真っ黒な日傘を差したビッケさんの姿。

 うーん、相変わらずえっちな格好で……

 その服装で町中歩きまわってるんだからもうたまりませんな。


「とりあえず入ってちょうだい、私からも話したいことがあるのよ」


 そう言ってビッケさんはお店の扉を開けて、私を中に誘った。

 私がそれに従って中に入ると、店のライトが自動で点く。

 ビッケさんがカウンターの上で軽く手を振ると、ドサドサと買い物袋が落ちてきた。


「ちょっと待っててね、すぐに何か用意するから」

「あ、お構いなく~」


 お構いなく~。

 って言ったけどビッケさんは厨房の奥に引っ込んでしまった。

 うーん、アポ無し訪問はやっぱりマズったかなぁ?


「お待たせ、こんなものしかないけど」


 そう言って出て来たのはいつぞやのサキュバスミルクアイスである。

 いやぁ、美味しいんだよねこれ。


「すみません、いただきます」

「えぇ、どうぞ召し上がれ」


 アイスをスプーンで口に運びながら、ビッケさんの話を聞く。


「ヤコちゃんが中央王都を出て行ってすぐの話なんだけどね、ヒメコちゃんって子と会ったのよ」


 姫子ちゃん、この世界での私の知り合いと滅茶苦茶遭遇率高いね。


「ビッケさんも姫子ちゃんに会ったんですか」

「えぇ、その反応だともう会えたみたいね」


 だがビッケさんはそう言うと、少し顔を曇らせた。


「でも今一緒に行動出来てないってことは、やっぱりダメだったのかしら」

「やっぱりとは?」


 ビッケさんは姫子ちゃんについて何か知っているようだ。

 私の知らないところでどのようなことがあったのだろうか。


「フィストがこの店に姫子ちゃんを連れてきたのよ、言葉が通じなくて困ってた姫子ちゃんを拾ったって」


 あぁ、そういえば私もこの世界に来たばかりのころは、他の人の言葉がわからなかったのをよく覚えている。

 たまたま最初に出会った人物が、他の人より魔力の扱いに優れたフィストだったから良かったものの、本来なら私も姫子ちゃんと同じく大変困ったかもしれない。

 というか姫子ちゃんもフィストが助けてくれたのか。


「それで、フィストがヤコさんの彼女だって言ったら、ヒメコちゃんが暴れだしたの」

「あー」


 うん、そりゃそうなるだろうな。


「それでどうなったんです?」

「私とフィストの二人掛かりで抑えたわ。でもその時に気になることを見つけたの」


 気になること?


「ヒメコちゃんはどうやら自分の意志で暴れたわけじゃないらしいのよ」


 え、自分の意志じゃなく暴れたってどういうことだろう。

 二重人格か何か?


「その時に私がヒメコちゃんを落ち着ける為にも思考を解析したのだけれど、ヒメコちゃん自身の思考伝達能力……自分の意志で自分の体を動かそうとする力が強制停止されてたわ」


 うわ、何それ怖いな。

 自分の意志とは関係なく体が動いちゃうって感じか。

 うわ、何それエロいな。

 自分の意志とは関係なく体は感じちゃうって感じか。

 それは違うか。


「その後落ち着いたヒメコちゃんとお話したのだけれど、記憶はあっても本人にその気は全く無かったらしいの」


 思い出すのは今まで出会った時のヒメコちゃんの様子。

 私と会話をしようとせず、無条件で殺しにかかってきた姫子ちゃん。

 もしも、その時の姫子ちゃんに私を殺す意思が無かったとしたら?


「私達を騙そうとした演技ではないはずよ。あの子の思考を解析した私が証明する」


 だが腑に落ちない点が一つある。

 もし姫子ちゃんを操り、私を殺そうとする第三者がいるとして、その人は何故私を殺そうとするのだろうか。


「いずれにしても、ヤコちゃんにお願いしたいのは、いつかヒメコちゃんを正面から見てあげて欲しいの」

「あはは、心配しないでくださいよ」


 それに関しては全く問題ない。


「私は死ぬのが怖くて女の子を諦めたりしませんよ」

「……そう、じゃあ心配いらないわね」

「ええ、心配しないでください」


 私の言葉にビッケさんがニコッと微笑む。

 うーん、素敵だ押し倒したい。

 サキュバスのビッケさんの笑顔には魅惑の魔法がかかっているのではないだろうか?

 だが押し倒すとフィストに怒られそうだな……


「じゃあ私はもう行きますね、いきなりお邪魔してすみませんでした。これ、プリンの代金です」

「お代はいらないわ。その代わりに機会があったらまた来て頂戴」

「えぇ、必ず」


 うん、本当に来てよかった。

 姫子ちゃんの貴重な話も聞けたし、王城近くまで来て気が変わったのは何か運命的なものだったのかもしれない。


「フィストは元気?」

「えぇ、今でも毎日連絡を取り合ってますよ」

「そう……ヤコさんにはちゃんと返事するのね? あの子ったら私がいくら呼びかけても返事しないのよ」

「あはは、それはそれは」


 後日この件をフィストに聞いたら

「だってビッケのメッセージって毎回説教臭いんだもの」

 だそうだ。


「では失礼します」

「えぇ、またね」


 私はそうしてビッケさんの店から出た。

 さて、王城行きますかぁ!


◇◆◇


「はい、次の方~」


 はりきって正面から堂々と王城に乗り込もうとしたら、門番さんに「あ、一般の方はあちらの窓口からお願いします」と言われてしまった。

 案内された窓口には、そこそこ人はいたものの、幸いすぐに私の番が来た。

 私の対応をしてくれる窓口の人は……チッ、男か。


「本日はどのようなご用件で?」

「こちらの紹介状を窓口に提出しろと言われたのですが」

「かしこまりました。少々お待ちください」


 そう言って受付の男性は中身を軽く確かめた後、そばにある謎のスキャナーのような何かに紹介状をかざした。


「本物であることが確認できました、只今上部に連絡させて頂きますので、こちらのカードを持ってあちらの転移陣に乗ってください」


 そう言って男性は私に黒をベースとして、金色で目のような絵が描いてあるカードを渡す。

 指し示された方向を見ると、いつぞやに見た転移陣がそこにあった。


 私は指示された通り、カードを持って転移陣に乗る。

 するとあたりが暗くなり、一瞬フワリとした浮遊感の後、再び明るくなった。

 フィストが以前、何回も使ううちに慣れると言っていたが、コレは未だに慣れない。

 転移陣で移動した先は、床に敷かれた赤い絨毯に、天井で控えめに光るシャンデリア。

 そして大きくていかにも高級感のある黒い木製の机と椅子のある部屋だった。

 だがそれらを差し置いて一番私の目を引いたのは。


「いらっしゃいませ、どうぞお座り下さい」

「只今お茶とお菓子をお出しします」


 ビシッと決めた少し初老のメイドさんと執事さんの二人組である。

 あ、この部屋アレだ。VIPルームとかいうやつだ多分。


 私は執事さんに案内された通り椅子に座ると、既に机の上には美しくカトレラリーがセットされており、メイドさんがパウンドケーキのようなものを持ってきてくれた。


「紅茶とコーヒーはどちらがよろしいですか?」


 なんかどっちを取っても凄いのが出てきそうだな……

 私はどっちかっていうと紅茶のが好きです。


「紅茶でお願いします」

「かしこまりました」


 そう言うとメイドさんは転移陣から見て部屋の真逆に位置する扉から去り、しばらくしてその手に紅茶のポットを乗せたお盆を持って戻って来た。

 え、なんだろう凄い緊張するんだが。

 パウンドケーキもなんか食べちゃいけない気がして手を付けてない。

 メイドさんはカップを置くと、そこに紅茶を注ぐ。

 カップも高そうだなこれ……

 メイドさんは紅茶を注いだ後、ミルクと砂糖、そしてクリームが入った小さな壺を置いて一礼し、執事さんと共に壁の花になってしまった。


 え、マジ?

 このだだっ広い空間で一人お茶するの?

 目の前には鮮やかな朱色の紅茶と、断面で宝石の様に輝く果物が入ったパウンドケーキ。

 どちらも「とりあえず高そう」という雰囲気のカップとお皿に乗っかっている。

 コレ本当に食べていいんですか?


「い、いただきます」


 いや、私普段は紅茶にはミルク入れるんだけどね?

 今回の紅茶はそんなことしたら味が台無しになるんじゃねーの、ミルク入れずにストレートで飲まなきゃダメなんじゃねーのとかいう謎の思考に囚われる。

 とりあえず紅茶を一口。


「……うん、紅茶だ」


 ごめんねバカなことしか言えなくて。

 でもそうとしか言えんのよ。

 申し訳ないけど元庶民現流浪者とかいう私には紅茶の違いなんてわからんのです。

 鼻に抜ける香りと舌の上で広がるうんたらかんたらとか言おうとすれば言えなく無いかもだけど、なんか安っぽくなりそう。


 続いて私はパウンドケーキに手を伸ばす。

 中に入ってるのは……ドライマンゴーと干しぶどうかなこれ。

 その他にも数種類入ってる。

 とりあえずドライマンゴーを一粒巻き込むようにしてフォークで切り分け、口に入れる。


「美味しい……」


 こっちは紅茶よりもハッキリわかるわ。

 口に入れたドライマンゴーが地球にいた頃も含め、今まで食べたモノとのレベルが違う。

 なんだろう、私の下手な解説でどうにか伝えようとするのであれば、私の中での「美味しいマンゴー」という記憶がこのドライマンゴーによって塗り替えられるとでも言おうか。

 よくテレビで「甘過ぎない」という表現があるが、それがなんなのかというのを教えてくれる。


 たった一口食べただけでこの感想ですよ。

 最後まで持つんですかね私。

 そう思いながら私が目を瞑ってティータイムを楽しんでいると、部屋の扉から「コン、コン、コココン、コン」と、不思議なノックが聞こえた。

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