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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第一章 魔族のフィスト
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風呂に入ったけど興奮したけど死にそうだけど

 服を脱いだ二人は、宿の風呂に入っていた。

 今はほとんどの客が食堂に夕飯を食べに行っているため、風呂に客は全くおらず、二人の貸し切り状態だった。


「あー、やっぱ人間の文明はいいなぁ。魔大陸だったら浄化魔法かけて終了だし」


 フィストは炭酸によって体に付着した小さな泡を撫でながら、その気持ちよさに恍惚とする。


「風呂は心が澄む……仙人の明鏡止水、その一端を掴んだかのような錯覚を覚える」

「あんたその状態まだ続いてんの?」


 天上院弥子が女と風呂に入った場合、風呂の中で痴漢行為を行ったりはしない。

 風呂とは湯の温かさを楽しむものであり、その風情を壊すような無粋な真似を天上院はしないのだ。

 これは完全変態モードが終わった今の状態でなくても変わらない。


「んー、普段の性欲バリバリなヤコもキモいけど、こっちの状態のヤコは別のベクトルでキモいなぁ」

「………」

「なんかお風呂入ってたら汗かいてきちゃった。もう一回体洗ってこよっかな」

「あ、私も行く」

「そう? じゃあ一緒に行きましょ」


 フィストは油断していた。

 普段より落ち着いた様子の天上院。そして風呂の温かさ。

 この二つがフィストの警戒を緩め、危機察知能力を鈍らせていた。

 だから先程までと様子の変わった天上院に気付けなかった。


「タオル貸して頂戴、お背中やってあげる」

「あ、いいの? じゃあお願い」


 フィストは天上院にタオルを渡す。


「ちょっと手を後ろで交差させてくれる?」

「へ? 何よ突然」

「いいから早く」

「んー、こういうこと?」

「そうそう……」


 天上院は手を後ろで組んだフィストの手首を掴み。



「この時を、待ってた」



 邪悪に笑った


「ッ! ヤコ!?」


 身の危険を感じ、咄嗟に天上院から離れようとしたフィストだが、もう遅い。

 手は先ほどのタオルで後ろ手に縛られ、思うように身動きが取れない。


「ふふっ、風呂場で走ると危ないよ」


 すぐに天上院に捕まり、再び椅子に座らされてしまった。


「くっ、油断したわ……! あんたいつから!」

「もう一回体洗ってこよっかな。のあたりからかな」

「あんた自分が何をしようとしてるか分かってるの?!」

「あはは、さてと」


 とても楽しそうに笑いながら、天上院は自らの豊満な胸にボディソープを垂らす。


「お背中やってあげる」


 天上院は風呂で女に痴漢行為をしたりしない。

 ただし風呂から出て体を洗おうとする女に至ってはその限りでない。


「あぁ、お背中と言わずに」


 垂らした石鹸を泡立たせながら、怯えるフィストの耳元にそっと囁く。


「全部ヤってあげるよ」


 数十分後、目の光を失ったフィストが、自販機で買った牛乳を片手に虚空を見つめているのだった。



「おーい、ご飯行こー」

「あ……うん」


 まだ若干天上院に襲われた感覚が抜けきっていないフィストだが、天上院に付いていくと決めた時、覚悟はある程度していたため、幸いすぐに立ち直った。


「ここのご飯美味しいんだっけ?」

「あぁうん、バイキング形式でどの料理も美味しいんだけど、葡萄がよく取れるところだから、ワインの飲み放題が特に人気らしいわ」

「お酒かぁ」


 天上院はこんなだが、高校に通うピチピチの16歳である。

 当然酒は飲んだことがない。


「普段は私そこまで飲む方じゃないんだけど、今回はヤコもいるし酔いはあんまり気にしなくていいわね」

「私はお子ちゃまだからジュースでも飲むよ」


 食堂に着くと、他の客はほとんど食べ終わっており、あまり混んではいなかった。


「お、美味しそうな香りがするね」

「私は飲み物を注文しておくから、先に取って来なさいよ」

「ありがとー」


 フィストの言葉に甘えて、天上院は料理を取りに行く。

 転生者たちが教えたのだろうか、地球で見た料理多くある。

 それを見るとつい嬉しくて手に取ってしまう。


「取ってきたよ~」

「多ッ! そんな食べれるの!?」

「あはは、取りすぎちゃった」

「もう、ちゃんと全部食べるのよ」


 フィストも料理を取ってきた頃、丁度ワインも届き、乾杯をする。

 天上院はオレンジジュースだ。


「じゃあ二人の出会いを祝福して」

「そうね、乾杯」

「かんぱ~い」


 フィストは飲むと言っていたワリには、あまり杯を重ねることはなく、食事は特に何事もなく終わった。

 二人は食堂を後にする。


「気にせず飲んで良かったのに」

「明日に影響するほど飲みたい気分じゃなかったのよ。それに泥酔したら寝てる間に貴女に何されるか分かったもんじゃないって途中で気付いてね」

「あらら、狙ってたのにバレちゃってたか」


 まぁ泥酔して反応が虚ろな女を抱くのはあまり天上院も好きではない。

 このやり取りは冗談である。


「もう今日は寝ましょ。明日は中央王都にいくわよ、ヤコ」

「中央王都?」

「この世界の中心にある中央大陸、その更に中心にあるという中央王都。この世の大体はそこで手に入るわ。貴女のお好きな美少女もね」

「ほう、それは楽しみだ。でも」


 天上院は疲れてベッドに倒れこむフィストに覆いかぶさり、軽い口付けをする。


「今は目の前にいる美少女を愛でたいな」

「もう。疲れを明日に持ち越したくないし、程々にしてよね」

「ふふ、OKサインと受け取るね」


 ヤコは、もう抵抗することのないフィストの服を脱がせ、自分の服も脱ぐ



 その時ヤコの背中から大量の血飛沫が飛び散った。



「ぐはぁ」

「ヤコ!? どうしたの!? ヤコ!?」

「大丈夫大丈夫、問題ない。続けよう」

「問題しかないでしょ!?」


 医者から安静にしていろと言われた天上院。

 そんな彼女の今日の行動を見てみよう。


 1、幼女を助ける為、ペガサスで爆走

 2、黒服の女と完全変態モードで戦闘

 3、温泉に入って血の巡りがよくなる

 4、フィストの衣服を脱がせて大興奮


 傷口は開く、当然である。


「ま、またドスケベ出来ないなんて……」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!? 医者ーーーー!」


 天上院の異世界転移二日目の夜は、騒がしく過ぎていく。



「ヤコ、気をしっかり持って!」

「死んじゃうかもしんない」

「今応急処置の魔法をかけるわ、そしたら落ち着いてペガサスを召喚して!」

「フィストがチューしてくれたら治るかも」

「お願いだからこんな時くらいバカなこと言わないで!」


 その後、フィストの必死な介抱と、ペガサスの回復魔法にとり、どうにか天上院は一命を取り留めた。


「死ぬかと思った」

「こっちのセリフよ……なんで当人が一番冷静なのよ」

「そろそろマジで死ぬぞ、主」

「なんか出血に慣れてきた自分がいるんだよね」


 前世は刀で腹部を刺されて死亡。

 現世は一日一回は背中から出血。

 天上院は体感で3日連続、死にかけている。

 一周回って余裕になって来たのだ。


「もう。今日はHなことはもうしないわよ。これでまた傷口開いたら見た目は治っててもどこかしらおかしくなりそうだし」

「うー」

「うーじゃありません、もっと危機感持ちなさい!」

「わかったよフィストお母さん」

「ちょっとは反省しろぉおおおおおお!」

「ホテル内ではお静かにしたほうがいいよお母さん」

「誰のせいよ!」


 フィストの怒りはなかなか収まりそうもない。天上院が悪いのだが。

 天上院がフィストを宥めている間、ペガサスは魔方陣を展開する。


「我はもう帰るぞ。部屋の中に馬がいるというのは人間的にはマズかろう」

「突然呼び出してごめんね」

「主の呼びかけとあれば、いつでも駆けつけよう。ではさらばだ」


 そう言ってペガサスは魔方陣に消えていった。


「クールだねぇ、あの子」

「そうね、ペガサスには名前を付けてあげないの?」

「んー、今度呼び出すときまでに考えとくよ」


 どうやらペニバーンに引き続き、天上院の名付け第二の犠牲者が出るのは間違いないようだ。


「電気消すわよ。おやすみなさい、ヤコ」

「おやすみ、フィスト」


 暗くなった部屋の、ダブルベッドの上、フィストに何か変態的なアプローチを仕掛けようとしたが、今度こそ本気で怒られそうだったのでやめておいた。


(なんか、眠れないな)


 今日は天上院が異世界に来て二日目。初日は気絶していたため、こうして夜を越すのは今日が初めてである。


(未来への期待と不安が織り交ざったような、そんな気分)


 天上院は暫く眠ることができず、天井を見上げていた.


(初めて留学に行った日を思い出すな~)


 眠れぬ天上院は、地球にいた前世の思い出に浸る。


(そういえば、あの時なんだろうな。私が女の子に興味を持ったキッカケって)


 それは遠い遠い過去の事。

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