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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第三章 獣人のドレッド
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可哀想だけど目標決まったけどさよならだけど

「やぁ、美しい髪のお嬢さん、あちらに美味しそうなものがあるのですが一緒に食べませんか?」

「人間? 臭いから近寄らないで」

「……やぁ、滑らかな手のレディーよければ私と」

「きゃあ人間! なんでここにいるの!?」

「……マドモアゼル」

「あっち行って気持ち悪い!」


 時は夜、永刻祭の最大イベントが終わり、エンジュランドはお祭り騒ぎ。

 そんな浮かれたテンションで、ついでに誰かと絶頂に至れないかとハンティングする女が一人。

 何を隠そうこの私、天上院弥子だ。

 だが結果はこの通りである。いや知ってたけどね。

 エンジュランドに来てから一度も成功してないもん、ナンパ。


「何やってんだよヤコ」

「うるせえぞ負け犬」

「あぁ!? その言い方はねえだろうが!」

「本当の事だろうがクソボケ!」


 獣人の女性に手酷く振られて落ち込んでいると、くそ雑魚負け犬生き恥晒しが歩いてきた。


「なんであの展開で負けんだよ! 普通勝つだろ!?」

「前提条件考えろ! 知識として身武一体知り尽くしてても使ったのは初めてだぞ!」

「うるせえ言い訳すんな!」

「すみませんでした!」


 実際しょうがないとは思うけどねうん。

 でもまぁどうせなら勝ってほしかったと思わなくもないわけで。


「あ、やっほー。ここにいたんだ」

「これはこれは最強勝ち組生きる伝説様ではございませんか」

「差がヒデェ……」

「これが勝者と敗者の差だ」

「あはは、二人は面白いね」


 ドレッドと喋っているとガラードがやってきた。

 オイいいのか、祭りの主要人物が二人も出てきて。

 まぁ周りはなんか気付いてないし……大丈夫なのかな?

 ガラードは試合終了後から明るくなった気がする。

 今の言葉も、私とドレッドの仲を妬むようなニュアンスは全く含まれていなかった。

 初めて出会った時の様に純粋な笑顔をしている。


「ヤコはこれからどうすんだ?」

「ん? 普通に中央大陸戻るけど」

「そうか……」


 そう呟くドレッドの顔はどこか悲しげだ。

 いや、ドレッドの悲しい表情とかミジンコ以下でどうでもいいんだけど、なんかあるのかな?


「なんか今失礼な発想しなかったか?」

「いや別に? それで何?」

「良ければお前にエンジュランドと中央大陸を繋ぐ架け橋になってほしかったんだよ」

「あ、それは無理」


 いや面倒くさいとかじゃなくて無理。

 考えてみようか、あの国の主要人物ほとんど私に対する好感度低いよ?


「あー。まぁお前が嫌だっていうなら強制はしねえよ」

「うん、ごめんね」

「王様になってからやることいっぱいだねぇ」

「ところで君たち主賓席みたいなトコいかなくて大丈夫なの?」


 いやだってこの2人現状はこの国のNo.1と2でしょ?


「大丈夫だ、NO.3が頑張ってるから」

「ボーズさんマジ可哀想……」


 あの人には私を誘拐した主犯とかエロ本強盗クソ野郎の親玉とかの恨みはあるけど、それを差し引いても可哀想な気がする。

 なんだろう、周り女子しかいない状況で手伝ってと言えずに雑用一人で全部やる系男子並みの可哀想さだ。


「じゃあ私は主賓席戻るね」


 そう言ってガラードは去っていった。

 いや、ドレッドいらないからガラードちゃんには残ってほしかったんだけど。


「お前なんか今失礼なこと」

「考えてないよ」

「まぁいいか。中央大陸に帰るのなら私が送って行ってやるよ、いつ帰るんだ?」

「正直もうここいる必要ほぼないし、明日にでも帰ろうかなって」

「やけに早えな」


 正直マジで限界なんですよね。

 いい加減欲求が抑えられなくなってきている。

 数日前の応急処置すら寸止めされたせいでもうヤバい。

 満開☆世界の美女前線もあのクソ野郎を始末した時に破けて炭になっちゃったし……

 もう人肌が恋しいと言うより欲しいレベルに達してきてる。


「あぁ、そういえばあのクソ野郎はどうなったの?」

「あのクソ野郎?」

「ドレッドの元上司」

「アイツなら定期的に来る中央王都の役員に引き渡す予定だな。ウチじゃなくてあっちで裁くのが筋だろうし」


 そんな体面気にしないで極刑でいいと思うが。

 まぁ新たな国のリーダー様にお任せしよう。


「あー、後な」

「ん?」

「いややっぱいいわ」

「そこまで言ったら最後まで言っちゃってよ」


 ドレッドが何か言いたそうだ。

 正直こんな感じで内容引っ込められるのが一番モヤモヤするよね。


「ヤコに、私が組織の情報を中央王都の治安委員局に持って行ってもらおうと思ったんだ」

「あー」


 正直治安委員に全くいい思い出がないです。

 あそこの……なんだっけ?

 裁断者とかいったっけ。

 あの人私にやたらと恨み持ってるっぽいし、私が会いにいったら流石にまずいよなぁ……


「いやな、正直私も治安委員と会いたくねえんだよ」

「まぁ元犯罪者だもんね」


 というかドレッドが渡す必要あるのだろうか。

 ガラードちゃんかボーズさんに頼めばいいのでは。


「というかどんな情報なわけ?」

「私とお前が会った日のこと覚えてるか?」

「幼女誘拐?」

「そうそう。アレは別に家族から身代金せしめようと思ってたわけじゃねえんだよ」


 えっ、じゃあまさか……

 未来の美少女を人身売買ですか?

 続きの内容次第では本当に次期エンジュランドのNo.2ポジションが空くことになるけど。


「なんかスゲエ形相だけど多分違うぞ。アイツらは撒き餌にされる予定だったんだ」

「撒き餌?」

「あぁ、古代種族『植物人トレント』を捕縛する為のな」

「植物人?」


 正直誘拐は誘拐なので差などはないのだが、目的が意味不明だ。

 植物人ってなんだ初めて聞いたぞ。


「この世界で最も謎に包まれた種族。無邪気な存在だけを受け入れると伝わっているが、それ以外は全く謎の種族だ」


 なにそのフリジディ王女を紹介した時のフィスト並みに壮大な前フリ。

 いや、ドキドキするしいいんだけどさ?


「その植物人ってのを捕まえる為に子供がいるの?」

「あぁ、実は植物人の生態を研究したいって依頼が来ててな。それで大規模な捕獲作戦が組織で立案されてたんだ」

「うん? なんか国ぐるみでやれば良さそうな内容に聞こえるけど」


 犯罪組織が秘密裏に計画を進めるような内容なのだろうか。


「植物人達が住まう領域に対しての侵入は中央王都が禁止しててな……そこに無断で入ると密漁扱いで取っ捕まるし、なんなら研究チームが入るのに許可が下りた事例も無い」

「へぇ……」


 なんかミステリーっぽくて興味がある。

 結構好きだよ、実は火星人はいるけど国家機密で情報は伏せられてるみたいな話。


「そもそも植物人って本当に存在するの?」

「それは間違いねえ、捨て身で撮影した奴の映像が存在する」


 そんな決死で挑むような覚悟でないと撮影すら出来ないのか。


「撮影した人はどうなったの?」

「映像自体は話題になり過ぎて国も回収を諦めたらしく、スマホで検索すりゃ出てくるレベルだが撮影した本人の行方はわかってねーな」

「なにそれ怖い」


 口では怖いと言いながらも指が勝手に動いてスマホを検索する。

 えーっと、とれんと どうがで検索。

 なんか凄い同じ動画がヒットした。

 Y〇uTubeみたいなサイトにアクセスして、動画を再生する。


 ドローンにようなものによる空撮なのだろうか?

 再生ボタンを押すと同時に流れた映像の下に広がるのは広大な樹林。

 映像はしばらく何かを探すように樹林の上をいったり来たりする。

 だがそんなカメラの視界に、突如として巨大な槍のような木が地面から伸びてきた。

 どうにかそれを回避したが、また別の場所から木が伸びてくる。

 しばらく逃げ続けていたが、やがて周囲を木々に囲まれてしまった。

 カメラは木の枝に捕らえられるが、その瞬間カメラがドローンから分離し、地面に落ちる。

 落下するカメラだが、その映像は全くブレない。

 更に360度撮影に切り替わり、スロー映像になる。

 そしてカメラが地面に落ち、しばらくするとソレは映り込んだ。


 それは一見美しい緑のドレスを纏った令嬢。

 だがその肌は薄く透明で、幽霊のように見えた。

 そしてその後ろには深緑のローブを被った人物。

 令嬢が近付くと、カメラを墜落させた木が地面に沈むように消えて行った。

 あたりを見回した後、ローブを被った人物に話しかける。

 だがローブの人物は話しかけてきた令嬢を無視すると、カメラを真っすぐその視線で射抜いた。


 ここで映像は終わっている。


「え、何これ」

「何回見てもホラー映像にしか見えんな」

「いやむしろそのものでしょうよ……」


 透明なのも相まって尚更幽霊にしか見えない。

 体より服の方透けてくれませんかね……?


「この映像が本当だとして、こんなのどうやって捕まえるのさ」

「研究することが目的だ。どうやって捕獲するのか調べることも研究の一環なんだ」


 それはそれは。

 いやでも映像の女性綺麗だったな……

 なんだろう、久々にため込んだものを処理する時っていっそ盛大にやりたいよね。

 ガス抜きに失敗したから、もうこれは大爆発させるしか無いと思うんですよ。

 よっしゃ、閃いた。


「ねぇ、やっぱその組織の情報ってやつ。私にも教えてくれない?」

「あん? あー、まぁお前ならいいか。だが外には漏らすなよ? 一斉摘発のチャンスなんだからな」

「わかってるって」


 いや正直組織の話は全く興味ないんですわ。

 ただちょっとその……ね?

 どの辺に植物人とやらがいる森があるのか詳しく教えて頂こうか。




ーーーーーーーーー


「本当にもう帰るんだね」

「うん、忙しいだろうに見送り来てくれてありがとうね」


 エンジュランドの港にて、ガラードちゃんが見送りに来てくれた。

 まだまだ永刻祭の最中だが、ここを出て行く私を見送る為に主賓席を再び抜け出してくれたのだ。


「これから大変だろうけど頑張ってね」

「うん、究極聖技っていうのは結局教えてもらえなかったけど、いつか会えた時に教えてね」


 あぁそんな話もありましたねぇ……

 なんで私はガラードちゃんとの誘いを蹴ってドレッドと特訓したのか。

 天上院弥子人生七不思議の一つですねこれは。


「おーい、船出すぞ」


 ドレッドが船の上から私に声を掛けてくる。

 運転するのはお前じゃなくて船番さんだろうが。


「んじゃ、またね」

「いつか必ず遊びにくるよ」


 私はガラードちゃんと軽い抱擁を交わすと、その頬に軽くキスをする。

 これは別れの挨拶だからセーフ。

 ちょっと抱き締めたらムラムラして抑えきれなかったとかじゃないからセーフ。


 乗り込むと同時に船は港を離れる。

 別れを惜しむ心など知らぬとばかりに船は加速していく。

 もう遥か遠くに手を振るガラードの姿が見えた。


「ヤコ」

「なにさ」

「なんつーかその……本当に色々ありがとうな」

「何を今更」


 ドレッドは今日の朝から険しい顔をしている。

 今更になって私と言う美少女と別れるのが辛くなったか。

 別れのシーンだからって湿っぽくなる必要ないでしょ、今生の別れじゃないんだから。


「前のこと引き摺ってたら次の恋が出来ないでしょ、切り替え切り替え」

「ははっ、そうだな」


 やっとドレッドが笑顔になったわ。

 コイツの辛気臭い顔とか見てもうざったいだけだからやめていただきたい。

 エンジュランドから目を離し、船の向かう先である中央大陸に目を向ける。

 すると船内から操縦していた船番さんが出て来た、なんだろう。


「ドレッド様、こちらに急速に迫ってくる存在をレーダーで感知したのですが」


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