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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第三章 獣人のドレッド
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天上院弥子が信じた女 獣人のドレッドーSide1-

「何回やっても同じだよバーカ」

「お前動きトロイよな~」

「うっ……」


 戦いに敗れた少女が地面に倒れている。

 彼女の手には訓練用のゴム銃が握られており、その体には多くの青あざが付いていた。


「実家は名家だけど、お前で末代だな!」


 少女は襟首を掴まれて訓練所から追い出された。

 しばらく立ち上がれなかった少女だったが、やがて壁に手をついてどうにか立ち上がる。

 きっかけは一人で的に向かって銃の練習をしていた時に、後ろから男子たちに煽られたからだ。

 カッっとなった少女はその場で決闘を申し込んだが、結局ボロボロに負けてしまった。

 練習用のゴム弾だから青あざで済んだが、これが実弾だったら少女の身体はあざどころか穴だらけだっただろう。


「……うぅ」


 彼女の家系はエンジュランドで代々ガンマンとして永刻祭に出場し、国の要職についてきた。

 母親が少女を産んだ時に死んでしまい、父親も再婚する気はない。

 なので一人娘である彼女には父親の多大な期待が寄せられており、彼女はその期待に応えようと努力し続けてきた。

 だがその努力は実を結ばなかった。

 同期の子供には誰も勝てなかったし、このままでは2年後にある10歳になった時の精霊の儀で、運命の銃を授かれるかも怪しい。

 いや、確実に授かれないだろう。


「どうしよう……」


 立ち上がった少女は服の埃を手で払う。

 訓練所には、少なくとも今日中には戻れないだろう。

 ならば少女の行ける場所は一つしかない。


「精霊山……」




 少女は木に向かってゴム弾を打ち込む。

 ゴム弾は木にぶつかり跳弾し、ぶつかった弾はまたほかの木にぶつかる。

 色んな木に乱反射したゴム弾は、再び少女に向かって跳ね返って来た。


「……!」


 それを少女は掌で受け止める。

 高い音と共に、その弾は少女の手に収まった。

 少女の手に走る激痛。

 しかし少女はそんなものを感じていないかのように、その弾を握り締めた。

 掌に涙が落ちる。

 それは痛みからではない。

 悔しさと悲しみが彼女の胸を押し潰す。


 そんな彼女の耳に、乾いた銃声が響いた。


「ッ!?」


 涙で潤む視界に、木々を飛び交う弾が見える。

 その弾が少女を襲おうとした時、再び少女はその弾を掴んだ。


「ヒュー、やるねえ」


 森に響く高い声。


「誰!」


 少女は訓練銃を握り締めて辺りを警戒する。

 飛んできた弾もゴム製であるとはいえ、当たればただでは済まない。

 十分に危険であり、少女は襲撃者の居場所を感覚で突き止めようとする。


「わりぃわりぃ。スゲエ特訓してる奴がいるなと思ってよ」


 しかしその襲撃者は目の前の茂みから堂々と姿を現した。

 襲撃者は少女と同じくらいの年齢で、これまた少女だった。


「あ、貴女は……」


 少女はその襲撃者を知っていた。

 何故なら少女が憧れている人物だからだ。


「お前なんでそんなスゲエこと出来んのに、演習はあんなに弱いんだ?」


 ドレッドはガラードの戦いを何回か見たことがある。

 同じ王宮の訓練所で何回か演習をしたことがあるからだ。

 だが、ガラードが勝ったことをドレッドは一度も見たことが無い。


「……動きが見えないんです」

「はぁ? 銃弾の動きを見切れてるなら、人の動きなんて余裕で見えるだろ」


 ドレッドの言葉に、ガラードは俯く。


「私、先読みが出来ないんです」

「どういうことだ?」

「例えばドレッド様が銃を私に向けてきますよね?」


 そう言ってガラードは立ち上がり、ドレッドの真正面に立つ。

 言われた通り銃を構えるドレッド。


「おう、それで?」

「ドレッド様、私に撃ってください」

「え、いいのか?」

「大丈夫です」


 ガラードがドレッドに頷くと、ドレッドはノータイムで訓練銃の引き金を引いた。

 しかしガラードは銃口から放たれたゴム弾を顔を少し傾けただけで避け切る。


「おぉ、流石だな」

「問題はここなんです」

「は?」


 顔を傾けたまま、ガラードがドレッドに話す。


「ドレッド様、私に弾を避けられたらどうしますか?」


 その質問にドレッドは逡巡した後、ガラードの目を見て答える。


「距離を取るか、敢えて懐に飛び込むかな」

「それです。それが私、わからないんです」


 ガラードは頭を通常状態に戻し、ドレッドから目を逸らして呟く。


「相手が次にどんな行動をするのか、それがわからなくて、いつも体が固まっちゃうんです」

「あー」


 理解することは出来た。

 しかし、ドレッドにそれの解決方法はわからない。


「ドレッド様はどうやって相手の先読みをしてらっしゃるんですか?」


 ドレッドは、一回も演習で勝てないガラードとは違う。

 むしろその逆。

 ガラードはドレッドが演習で負けたのを見たことが無い。

 ガラードを先程バカにした奴らに限らず、既に運命の銃を授かったガンマンを相手にして勝つくらいの実力者だ。

 流石、現永刻王の娘というだけある。

 彼女自身次期永刻王に最も近いと言われており、ランスロウ家の末代などと呼ばれているガラードとは天と地ほどの差がある。


「わかんねえな。なんか出来てるもんだったしな」

「……」


 その言葉を聞いて、ガラードは落ち込んだ。

 やはり自分は才能が無いのだ。

 ガラードの視界が真っ黒に染まっていく気がする。


「おい」


 そこに一筋の光が走る。


「無いものだけ見るんじゃねえよ」


 ガラードは弾かれたように視線をドレッドに戻す。


「お前、今自分に才能がないとか思っただろ?」

「……」


 ドレッドの言葉を、ガラードは否定しない。

 まさにその通りだったのだ。

 自分には才能が無い。

 永刻王になどなることは出来ないと思ったのだ。


「精神的先読みが出来なくても、物理的な現象に対する先読みはやべえだろ。お前」


 そう言ってドレッドはガラードに銃を向け、ニヤリと笑う。


「私が鍛えてやるよ」


 これが、ランスロウ家の一人娘と、現永刻王の一人娘の出会いだった。




「鍛えるって……ドレッド様が私をですか?」

「あー、まずそのドレッド様ってのやめろ」


 ドレッドは頭を掻いてガラードの肩に手を置く。


「え、でもドレッド様は……」

「ありゃ親父が偉いだけだ。私はなんも偉くねえよ」


 そう言ってドレッドはガラードの首に手を回し、豪快に笑った。


「永刻王の娘だろうが、名家の娘だろうが関係ねえ。そもそもエンジュランドは実力主義! 私とガラードは今からダチだ。気安く呼んでくれ!」

「で、でもドレッド様は私なんかと違って」


 ドレッドはガラードと違い実力がある。

 同年代どころか大人相手に立ち向かえるほどだ。

 それに対して自分は。

 そうガラードが言いかけたところで、ドレッドはガラードの口をその手で塞ぐ。


「あぁああだからそういうのいいんだって! 私とお前はダチ! いいな!?」

「は、はい!」


 ドレッドの勢いに負け、ガラードは頷いた。


「じゃあ早速特訓だ、目を閉じて、耳を塞いだ後30秒数えろ。その間に私はこの近くに身を隠す」


 そう言ってドレッドはガラードの目の前にある木の枝に飛び乗った。


「んで、数え終わったらこの笛を鳴らしな。そしたら私がお前に襲い掛かりに行く」


 そう言って木の上からガラードに笛を投げ渡すと、ドレッドは山の奥に消えていった。


「30、29、28……」


 言われた通りに目を瞑って耳を押さえ、数を数え始めるガラード。

 そしてカウントを終えると、耳から手を離してドレッドに手渡された笛を吹きならす。


「……」


 ガラードはその白くて小さな耳を立てて、辺りを警戒する。

 ドレッドが木の上から襲撃してくるなら枝の音が、地面を走ってくるなら草の音がするはずだ。

 耳をそばだてて、ガラードは油断なく訓練銃を構えた。


 その時、前方右の林が、ガサリという音と共に揺れた。


「!」


 その位置にドレッドがいると仮定し、銃を構えるガラード。

 しかしそのガラードの尻に、ゴム弾が当たった。


「~~~!」


 激痛に尻を押さえて地面を転がるガラード。

 転がる彼女の後ろにある茂みから、ドレッドが現れた。


「オイオイ、チョロ過ぎんだろ。ちょっとはフェイントも警戒しようぜ」

「うぅ……」


 だがドレッドのおかしい点が一つある。

 彼女が接近するまでの音がガラードの耳に一切入らなかったのだ。


「なんで音もなく私の背後に接近できたんですか?」

「私はちょっと森の奥行って手ごろな石を拾ってきただけだ。そんでお前の近くに隠れた後、適当なとこに石を放り投げたんだよ」


 子供が鬼ごっこでたまにやる、逃げると言って実は鬼の近くにずっといたというのと同じだ。

 だがそんな子供騙しにすら、ガラードはしてやられてしまった。


「うぅ」

「ほら、しょぼくれてねえで今度はお前の番だ。私から一本取ってみな」

「……わかりました!」


 こうして、ガラードとドレッドの修行の日々が始まった。

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