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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第三章 獣人のドレッド
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出来たけど暴走してるけど圧倒的だけど

 光と共に天上院は、ドレッド達の前に現れる。

 その姿は昨日ドレッドと戦った時と全く同じ。

 股間にペニバーン、背中に翼というスタイルだった。


「で、出来た!」

「上出来だ! 気を抜くなよ、ここから維持させなきゃいけねえ」


 そう言うとドレッドは変身した天上院の下に近付いていく。


「どれくらい持ちそうだ?」

(30秒が限界だ。反動を無視して無理矢理やった形だからな)

「30秒が限界!」

「わかった。ならとりあえず身武一体をする前と同じように心を無にしろ、座禅を組んだっていい」


 ペガサスとの身武一体をにより手に入れた速さで天上院は座禅を組む。

 だが変身前と異なり、全く集中できない。

 走った後に無理矢理座っても、かえって心臓がバクバクするという表現が一番近いのだろうか。

 とにかく天上院は落ち着くことが出来ず、変身は30秒後に解除されてしまう。


「かったりい……」


 ペニバーンとロウターの力が抜けた天上院は、再び椿ノ宮の制服姿に戻った。

 そして昨日同じく、事後モードに移行する。

 心なしか前回よりもやる気がないように見え、訓練所の地べたに寝っ転がって大あくびをした。


「で、どうすればいいのだ?」


 ロウターがドレッドに質問をする。

 彼女はドレッドに「どうすればこの事後モードが早く解除されるのか」と聞いているのだ。


「あぁ、どうしようもねえんだな。これが」


 そんなロウターの言葉に、両手を広げて鼻で笑うドレッド。

 変身と維持は努力で行えても、使用後の状態はどうにもならないらしい。


「む、何も出来んのか」

「いや、努力じゃどうにもならねえってだけだ。身武一体を行った後の特徴として、行動はいずれも似たようなもんだが、自分の周りでなにが起こったかは全て覚えてるもんなんだ」


 そう言ってどこからか取り出した黒いマジックペンで、ドレッドは天上院の額に「変」という文字を書き込む。

 しかし正面から堂々とそんなイタズラをされた天上院は、そんなドレッドなど眼中にないとでもいうようにゴロゴロする。


「ねみぃ」

「だからどうしても目覚めさせてえのなら、外部者が強い刺激を与えて引っ張るしかねえのさ」


 ロウターがドレッドの言葉を聞いて思い出すのは、海底都市にてヒストリアに攫われたティーエスを取り返す為に、ロウターと身武一体を成した時。

 あの時天上院はペニバーンとの身武一体の反動中だったものの、ロウターによる強い呼びかけで覚醒した。

 そのことを思い出し、ロウターはどのようにすれば天上院が早く目覚めるかを考える。


「主殿、目覚めてくれ」


 無反応。

 「めんどくせえ」と言ったまま天上院は動こうとしない。


「主殿、目覚めてくれぬとキスをしてしまうぞ」


 気のせいだろうか、一瞬ピクリと肩が揺れた気がする。


「主殿、目覚めてくれねば襲ってしまうぞ」


 天上院は仰向けになって大の字になる。

 しかも下手くそな狸寝入りまで始めた。

 正直起きてるだろと内心思ったが、それでもロウターは声をかける。


「主殿……今目覚めてくれたら、今夜一つだけ主殿の願いを可能な限りなんでも答えよう」

「おはよう、ロウター」


 なんとも素直な女である。

 ここまで自分の欲望に対して素直だと感心してしまうかもしれない。


「主殿……」


 そんな天上院をジト目で見るロウター。

 起き上がって何かを期待した目でこちらを見る天上院から目をそらし、ドレッドに向き直る。


「説明は理解できた。これを何度も行えば身武一体を自在に使いこなせるようになるのだな?」

「恐らくな。ただ今すぐもう一回ってのはキツイと思うぜ? 反動は軽減出来るって言ってもあくまで軽減でしかねえ」


 ドレッドは未だ上半身しか起き上がっていない天上院の傍に歩いていく。


「ヤコ、どんな気分だ」

「ん~? なんか気だるい」


 そう言いながら首を回す天上院。

 イマイチ本調子ではないようだ。


「身武一体は激しい運動と一緒だ。沢山体を動かすのが身武一体だとしたら、運動後のクールタイムが今のお前の状態だ。再び運動出来るほど回復するには時間がかかる」


 そう言ってドレッドは未だ身武一体を保っているガラードを見る。


「まぁアイツみたいに何回も使っていくうちに慣れるさ」

「ねぇドレッド。勝負してくれないの?」

「あー? お前と戦って勝てるわけねーだろ」


 ドレッドはそう言ってガラードの提案を鼻で笑う。

 しかしガラードの目は据わっていて、心なしか息も荒い。


「ねぇ、ドレッド。しよ?」


 ゆらりと体を動かし、ドレッドに向かって歩いてくるガラード。

 その姿はまさに獲物に近付く獣のようだ。


「逃げたほうがいいかもしれんぞ主殿」

「そ、そうだね。ちょっと立てないから引っ張ってくれないかな」

「おい、お前ら待て」

「ドレッドォ……」


 ガラードは少し態勢を低くした後、一気に飛びかかって来た。


「チッ、クラン!」

「了解っす!」


 ドレッドが天上院に説明している間、クランは邪魔しないように静かにしていた。

 しかしガラードの様子が変わったのを察知し、どこからか取り出したバズーカ砲をガラードに向ける。


 クランがそのバズーカ砲を打つと、砲口からネットが射出され、ガラードを捕らえんとする。

 しかしガラードはその身体能力で素早く避け、ドレッドの背中に回り込む。

 ニヤリと口角を上げたガラードは、そのままドレッドの背中を激しく蹴りつける。


「ぐはっ」


 ドレッドは吹き飛ばされ、訓練所の壁にぶつかる。

 しかしガラードはそんなドレッドを追撃する為、壁にぶつかったガラードの襟を掴んで地面に引き倒す。

 そのまま馬乗りになり、ドレッドの首を絞めた。


「ねぇ、ドレッド。しよ?」


 ガラードはドレッドの首を絞めながら荒い息をする。

 その口からは涎が垂れ、それがドレッドの頬に落ちる。


「……!」

「アハッ」


 ドレッドが拳銃を取り出してガラードに向かって打つと、ガラードは即座にドレッドの首から手を離して距離を取る。


「ゴホッ……バカ女が」

「やる気になってくれたんだね、ありがと」


 ドレッドはガラードを睨み付けるが、その目をみたガラードは笑みを深める。

 ドレッドは一度深いため息をつく。


「そこまでお望みなら付き合ってやるよ……グォアアアア!」


 ドレッドが咆哮をすると、白い体毛が伸びて白狼の姿となる。

 ハクヒョウと白狼、二匹の白い獣が訓練所で対峙することになった。


「姉貴……」


 ガラードと対峙するドレッドを見て、クランが心配そうな声を漏らす。

 獣化した二人は、目の前で威嚇した声を発しながら睨み合っている。


「クランちゃん、下がってたほうがいいよ」

「ヤコさん……」


 クランは天上院の顔と、対峙する二人を交互に見る。

 ぎゅっと手を握り締め、訓練所の砂を掴む。


「嫌っす。ここで姉貴と一緒に戦うっす」

「どう一緒に戦うの?」

「それは……」


 クランは地面に転がるバズーカ砲を見る。

 先程ガラードに向かって放ったそれからは、網が飛び出したままに放置されている。


「君が打ったそれも、ガラードちゃんに避けられたでしょ?」

「……」

「君がドレッドと一緒にガラードちゃんと戦うっていうのなら、ドレッドは君をかばいながら戦わなきゃいけない」


 天上院はクランへ遠回しに足手まといだと諭す。

 ガラードの強さを天上院は知らないが、ドレッド曰くこの国で最強らしい。

 そんな存在と戦わなければならない状況で、誰かを庇う余裕などないだろう。


「ね。一緒に私と応援しよ」


 そう言って天上院は尻餅をついているクランに手を差し伸べる。

 数秒の間、二人の間に沈黙が流れる。

 だが天上院の手をはらい、自分の足で立ち上がった。


「……ここにいたら邪魔っす。さっさと観戦席にいくっすよ」


 そう言って天上院を置いて訓練所の観戦席に歩いていく。

 すれ違った時に見えたその目はうるんでいて、赤く充血していた。

 それを後ろ目で見たドレッドは、改めてガラードに向き直る。


 憎たらしいことにガラードはクランが決断するまで待っていたらしい。

 クランと天上院が観客席に移動したのを確認した後、ガラードは体に力を込める。

 すると、ガラードの背中から大砲が生えてきた。


「なにあれ!?」

「獣化モードになったガンマンは自分の銃をああやって装備できるんすよ。ドレッド姉貴もやってたでしょう?」


 ドレッドも同じように力を込め、背中から銃を生やす。

 二人は無言で睨み合った後、姿勢を低くしてどちらからともなく相手に襲い掛かった。


「まぁ」


 それを見ながらクランがボソリと諦めたように呟く。

 身武一体をしているガラードを相手に、獣化したドレッドはなんとか食らいついている。

 ガラードが接近してくれば拳を振るって応戦し、遠く距離を取れば背中の銃で牽制する。


「精霊から与えられた銃。精霊銃と、量産銃じゃ比べ物にならないっすけどね」


 ドレッドの銃を避けるガラードの背中の大砲から高い音が鳴り、訓練所内に響く。

 やがて音が収まると、その砲口が光り輝いた。


「ガァアアアアア!」


 ガラードが叫び、大砲をドレッドに向ける。


「……!」


 避けようとするドレッドだが、ガラード自身が方向転換し、照準を正確に合わせる。

 そしてついに大砲からドレッドに攻撃が放たれた。

 それは例えるなら光の奔流。

 照準などあわせるまでもなかったのではないかと思うほどに野太い光線が、ドレッドを飲み込んだ。

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