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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第一章 魔族のフィスト
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異世界楽しいけど幼女誘拐されたけど覚醒しそうだけど

 食事を終えたので、店を出る。

 お代は全部フィスト持ちである、やはり申し訳ない。

 早急にお金を手に入れなければ。


「じゃあ、その情報局? ってところに行ってみてもいい?」

「その前に今夜の宿を探しましょ。夜になって慌てたくないし」

「確かにそうだね」


 フィストは再びスマホを取り出し、周辺の宿屋を調べる。


「ん、こっちに行けばあるみたい。ワリとすぐね」

「本当に便利だね。私もいつかほしいなー」

「そこまで高いもんじゃないし、ヤコだってすぐに買えるわよ。早く行こ!」


 スマホに案内され、宿に着いた。

 赤レンガ造りで少し小洒落た雰囲気の建物だった。


「ん、いいカンジの宿だね」

「この村で一番評価の高かった宿だしね。部屋はきれいだし、ご飯も美味しいって」


 二人がドアに近づくと、自動で開いた。

 自動ドアもある……当然か。


「じゃあ私、チェックイン済ませてくるから」

「あ、私も行く」 

「そう? そこのソファーで寛いでればいいのに」

「貴女と離れたくないの」

「はいはい」


 フィストが私に慣れてきたようだ、対応がしょっぱい。

 二人で受付に向かうと、スーツに身を包んだ女性が対応してくれた。


「一晩だけ泊まりたいのですが、部屋はありますか?」

「空いてますよ。お二人ですか?」

「はい、一部屋お願いします」

「二種類あるのですが、ベッドはツインとダブルどちらがよろしいですか?」

「ツイ「ダブルでお願いします」……オイ」


 フィストに凄い睨まれた。

 結構ドスの効いた声である、怖い。

 でも私めげない。


「一応ダブルの料金は少しお安くなっていますが」

「ダブルでお願いします」


 私と睨むフィストの二人を見て、受付のお姉さんが戸惑っている。


「そちらのお客様も、ダブルで問題はありませんか?」

「……大丈夫です」


 色々諦めたフィストちゃんである。

 凄く渋々といった感じの表情だ。

 そのうち自ら進んでダブルと言うようになって欲しい。


「わかりました。晩御飯はこちらでお召し上がりになりますか?」

「はい、ここで食べます」

「お客様のお部屋は301号室となり、晩御飯は夕方6時から9時まで、ホテル1階の食堂となります。どうぞごゆっくりお過ごしください」


 フィストが鍵を受け取り、部屋の確認がてら荷物を置きに行くことにした。

 まぁ、私は椿ノ宮の制服以外にはハンカチくらいしか持ち物なんて無いのだが。


「いやー、どんな部屋か楽しみだね」

「……」

「晩御飯も美味しいんだって? 食べたばかりなのにお腹が空いてきちゃった気がするよ」

「……」


 フィストちゃんの反応がない。

 これは意図的に無視しているタイプだな? この距離で聞こえてないはずもない。


「何か言ってよ」

「シないわよ?」

「それは残念」


 残念だなぁ、しょうがない。嫌がる女の子に無理矢理迫るのもよろしくないしね。

 まぁ、でも私ってちょっと寝癖悪いんだよね。

 ひょっとしたら寝ていても、手が動いてフィストの洋服を脱がせてしまったりするかもしれない。

 いやー、不安だなぁ。


「はぁ……」


 フィストちゃんが私の顔を見てため息をつく。

 失礼しちゃうなぁ。


 そんな会話をしている間に部屋へ着いた。

 フィストが鍵を開けて中に入ると、彼女は持っていた手荷物の中から服を取り出し、部屋に備え付けられていた洗濯機の中に放り込む。


「洗濯機付いてるホテルなんだ」

「洗濯機くらい何処のホテルにもついてるでしょ」

「え、そうなの?」


 私の知ってるホテルは、洗濯機なんて付いてる方が珍しかった気がするけどなぁ。

 フィストに洗いたい物があったら一緒に洗うけどと聞かれたが、残念ながら替えの服すら持っていない。

 服も買わないとなぁ……

 いや、別に椿ノ宮の制服はそこそこオシャレだけど、デートに着てくわけにもいかないし。


「じゃあ早速情報局に行こう」

「その前にヤコの背中の傷を見せに行くわよ」

「えー、大丈夫だよ」

「お願いだからいうこと聞いて。一応傷口は塞いだけど、結構深く刺しちゃったし不安なんだから」


 大丈夫だと思うけどなぁ、本当に。

 いや、魔法って凄いわ。

 普通なら入院どころかそのまま死んじゃうような傷を一瞬で治しちゃうんだもん。

 むしろこの世界に病院あるのか。

 全部魔法でええやん。

 結局私はフィストに言われるまま、ホテルの少し先にあるという診療所へ向かった。



◇◆◇



「26番の方~」

「あ、は~い」


 自分の番号を呼ばれ、診断室に入る。

 中には年配の女医さんがいた。


「えーっと、魔獣に襲われたけど、近くを通りかかった人が助けてくれた。しかし念のため傷を確認して欲しい。で大丈夫かい?」

「はい」

「じゃあちょっと襲われたところを見せて頂戴な」


 そう言われたので私はボタンを外し、制服を脱いで背中を見せた。


「んで、どこを襲われたんだい?」

「逃げてる時に捕まって押し倒されたので、背中をいっぱい牙で刺されました」


 大嘘ですわ。

 女医さんは聴診器を軽く私の背中に当てた後、ドライヤーのような何かを取り出して私の背中に向ける。

 そしてすぐにソレをしまうと、「もういいよ」と言ってきた。


「助けてくれたって人は本当に腕がよかったんだねぇ。確かに何かに刺されたような痕跡はあるけど、傷口も肌には全く見えないし、綺麗に塞がってるよ」


 流石はペガサス、治癒魔法も超一流である。

 肌にも傷は残ってないらしい、凄い。


「ただ、念の為数日は安静にしておきなさい。あまり激しく動くと傷口が開いてしまうかもしれないからね」

「わかりました」

「診療は以上だよ。何かあったらまた遠慮なく来なさい」


 女医さんにお礼を言って診療室を出ると、フィストが待合室で立ったまま腕を組んで待っていた。


「どうだった?」

「全く問題なし。傷一つないって。ただ数日は激しい運動はせずに安静にしておけ、だって」

「そう、良かった」


 そう言う彼女の顔は安心したという顔をしていた。

 やったのはフィストだとはいえ、彼女なりに心配していたのだろう。

 うーん、刺された甲斐があったかもしれない。

 つい可愛くて抱きしめてしまった。


「ちょっ、やめっ」

「もう少し、このままでいさせて。」

「ヤコッ、人目が……!」


 診療所に来ている患者が私達を見て何やらヒソヒソ話している。


「いいじゃん。恋人だと思われてるのかもしれないよ?」

「それが恥ずかしいの!」


 フィストは私を振り払うと、さっさと診療所を出て行ってしまう。

 やれやれ、気難しいお嬢さんだ。

 私もフィストに続いて診療所を出ようとすると、受付の人に呼び止められる。


「お客様、診療代のお支払いをお願いします」

「あ。」


 私お金持ってねーや。

 結局フィストは代金を払う為に出戻りをすることになり、かなり恥ずかしい思いをしたのだった。



◇◆◇



「もう、そんな怒らないでって」

「ヤコなんか知らない!」

「拗ねてる貴女も可愛いよ」

「つーん」


 フィストは完全にへそを曲げてしまっている。

 これはいけない。今回は流石に私のせいだ。


「ごめんって」

「さっさと情報局に行くわよ、ハグ魔」


 診療所から情報局までの距離は殆ど無いらしい。

 情報局は、地球でいう市役所のような外観の所で、清潔感のある建物だった。

 中に入ると、かなり沢山の人で混みあっていた。


「そこの掲示板に色々張り紙があるでしょ? そこから依頼用紙を取って受領申請した後、書いてある条件を達成して証拠をここに見せに来れば報酬がもらえるの」

「なるほどね」


 掲示板に近付き、それぞれの張り紙に目を通す。

 そこには日本でいうアルバイトのような仕事の求人から、森の中にイノシシの魔獣が出現したので退治して欲しいなどの依頼もあった。

 この顔を見つけたら治安委員局まで連絡を下さい、という指名手配の紙もある。

 治安委員局ってなんだろ、この世界の警察かな?


「今日はあくまで情報局がどんなものか見に来ただけだし、依頼を受ける必要はないわよ」

「んー、でも数時間で出来そうな簡単な依頼があったりしないかな、お」


 その時目に留まったのは、緊急依頼と銘打たれた赤い張り紙だった。


「緊急依頼?」

「あぁ、それは早急に解決すべき問題や、危険度の高いと判断された依頼よ。特に受領申請とかせずに達成した人に報酬が渡される、っていう依頼なの」


 内容は、6歳の娘がつい先ほど迷子になってしまった、探してほしい。というものだった。

 確かに迷子なら早急に見つけてあげなければいけない。

 報酬はそこまで高くない、というよりは殆どボランティアみたいな額だが。


「これなら迷子を捜すだけだし、そこまで大変ではなさそうだよ、どう?」

「まぁ元から今日依頼を受ける気は無いし、買い物がてら探すことも出来るしね」


 紙に書いてある子供の特徴を覚えて、情報局を出た。

 金髪のツインテールで、ピンクのワンピースを着た女の子のようだ。

 写真も付いているのだが、中々に可愛い子である。


「さて、買い物に行きましょうか」

「ねぇ。情報局って、子供でも知ってるよね?」

「そうね、どこにでもある公共施設だし」


 なるほど、迷子になった子が最低限目指すような場所ではあるわけだ。

 じゃあ、買い物をしている最中に解決するかもしれないな。


 そんな事を考えていた時、私の前を一台の車が走った。

 美少女感知センサーがその車に反応する。

 反応は全部で三つ。

 前部座席に二つと、車のトランクに一つ。

 前部座席の二つの内一つは、中々大きい反応だった。

 よっぽどの美少女なのだろう。


「は?」

「どうしたの、ヤコ」


 いやいや待て、トランクに一つって。おかしいだろ。

 隣にいるフィスト並みに大きな美少女の反応を見て、一瞬流しかけたが、トランクに人がいるのはおかしい。

 車は結構な速度でその場から去り、あっという間に見えなくなってしまった。


「ペガサス! ペニバーン!」


 私の呼び声に応じて、ペガサスとペニバーンが光と共に現れる。

 周囲の人々がびっくりしているが、申し訳ないけど構っていられない。

 私は状況をイマイチ理解していないフィストと共にペガサスに乗る。


「ペガサス、全速力で走ってくれ!」

「急ぎの様だな、我が主。それならば走るよりもいい方法がある」


 そう言ってペガサスは一声嘶くと、その翼を広げて大空へ飛び立った。

 かなり高く飛んだので、辺り一帯を一望出来る。

 だが残念な事に、景色を楽しんでいる暇は無い。


「きゃあああああああああ!?」

「あそこに見える車だ、急いでくれ!」


 大きな反応が目立つ分、見失った車を再び見つけるのは簡単だった。

 車は既に村を出ており、さらに速度を上げて遠ざかっていく。


「あいわかった! しっかり捕まっててくれ、振り落とされんようにな!」


 ペガサスはそう伝えると、翼を折りたたみ、落ちるように車に向かって突撃した。

 そんじょそこらのジェットコースターより怖い。

 ペガサスに備え付けられている綱をしっかり持っていなければ。

 不思議と風は全く感じない、これも魔法の一種なのだろうか。


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!」


 私の腰に凄い力でしがみついてくるフィスト。

 あ、フィストの少し控えめな胸が背中に当たって気持ちいい。

 ペガサスは勢いを緩めずに車にぶつかっていった。

 衝突した車は大きくへこみ、少し回転しながら滑った後にゆっくりと止まる。


「やっべ、中の子大丈夫かな」

「テメエ何してくれてんだ!」


 中から凄い怒っている様子の、サングラスをした黒服の女性が出てきた。

 フィスト並みに強い美少女の反応を示していた方だ。

 まぁ突然ぶつかってきて車を潰されたら誰でも怒るよね。


「正直車まで壊す気はなかったし、それについては悪かったと思ってる。ただ」

「あぁ!?」

「車のトランク、見せてくれない?」

「……なんのことだかわかんねぇな」


 どうやらシラを切るつもりらしい。

 まぁ明らかに間があったし、隠す気はほぼ無いのだろう。


「返してもらおうか?」

「はっ、すまないけど、あんたが欲しがってるもんは返してやれないね。そのかわり……」


 女性は懐から銃を取り出して、私に向けてきた。

 おぉ、本物は初めて見た。


「鉛をくれてやるっ!」


 大きな音を出し、銃は発砲された。

 だがペガサスが防御魔法を展開してくれたので、それに当たることは無い。


「チッ、面倒だね」

「究極性技」

「舐めんじゃねぇ!」


 フィストの時の様に近付いて攻撃しようと思ったが、動きを見切られてしまった。

 なんだこの人、凄い強いぞ。

 吹き飛ばされた私に女性は銃を撃ちこんでくるが、ペガサスが再び私を守ってくれた。


「強い……」

「当り前さ、鍛え方が違うんだよ!」


 究極性技 真四十八手を使うには相手に接近しなければいけない。

 しかしそれを使う前にこの女性は自分の攻撃を見切って反撃してくる上、距離を取れば防げはするが銃で撃たれる。こちらからの攻撃はできない。

 どうすればいいんだ。

 攻めあぐねていた私の心に、ペニバーンが語り掛けてきた。


(お困りのようだな、主殿)

「ペニバーン?」

(なら私が力を貸そうではないか)


 そう言うと、私の体とペニバーンが突如として謎の光に包まれた。

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