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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第三章 獣人のドレッド
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逆恨みだけど強いんだけど新たな世界だけど

 紛れもなく美少女のガラードだが、そんな彼女にも天上院の美少女感知センサーの反応は微弱。

 もうこのセンサーぶっ壊れてるんじゃないのか。

 そう思った天上院は、センサーの示す先など関係無くもう美少女に声を掛けようと思い、ガラードの手を握って彼女を口説き始めた。


「初めまして、私の名前はヤコ・テンジョウインと申します。お嬢さんの名前は?」

「は、初めまして。サー・ガラードと申します」

「素敵な名前ですね。この辺りの甘味処に興味があるのですが、よろしければお勧めの場所を教えていただけませんか?」

「何してんだお前」


 そんな天上院はの頭をドレッドが容赦なくぶっ叩く。

 ドレッドは鎖が解除されたことにより獣人としての力を取り戻し、その力でぶっ叩かれた天上院の顔は王城の壁に埋まった。


「ドレッド、誰この人?」

「ヤベーやつだよ、気にしなくていい。それよりも私と手合わせしてえんだろ?」

「うん、いいの?」

「私も久しぶりに思いっ切り暴れてえんだ。今回は付き合ってやるよ」

「わーい! ありがと!」


 ドレッドはガラードと共に何処かへ行くようだ。


「おい、壁に埋まってねえでお前も来い」

「この世界の女性は私に冷たい」


 顔を壁から引き抜かれた天上院は、その襟首を持って引かれながらドレッドに何処かへ連行される。


「どこに行くのさ」

「王城内の訓練施設だよ」


 階段でもお構いなく天上院はドレッドに引き摺られる。

 最早乙女に対する扱いではない。


「痛い痛い痛い! 馬鹿じゃないの! 普通に歩けるよ!」

「そうか、じゃあ歩け」


 そう言ってドレッドは天上院を放り出した。

 階段の上から。

 ひょーいと投げ出される天上院。

 ビターンという音と共に着地した。

 もう完全に喧嘩を売られている。


「ふふふ、ドレッド。こっちが下手に出ていれば付け上がっちゃってぇ……許さないぞぉ?」

「こっちのセリフだオラ。こっちはお前のせいで牢屋にぶち込まれたんだよ」

「ドレッドが幼女誘拐なんてするからですぅー。逆恨みもいいとこですぅー」

「あぁそうだ逆恨みだ。私はあの日、お前に負けたことを忘れられねえんだよ」


 階段の上からドレッドは殺意を持って天上院を睨み付ける。

 白狼と化した彼女の目は、激しい怒りで燃えていた。


「油断して本気を出さなかったとはいえ、負けは負けだ。あの日のお前ドヤ顔、夢にまで出てきやがるんだよ」

「へぇ……それで?」

「だからお前を、この逃げ場のないエンジュランドという場所で、本気の私が殺す」


 彼女の目は、獲物を捉えた狩人の目と化している。



「ねぇ、私との手合わせはー?」

「シッ! 空気くらい読んで欲しいっす!」


 少し離れた場所で、ガラードとクランはそんな二人を見ていた。



「来い、ぶっ殺してやる」


 そう言ってドレッドは訓練所の扉を開く。

 訓練所の中はまるで透き通った無色のシャボン玉の中にいるかのような錯覚を天上院は覚えた。


「なに、ここ」

「私達ガンマンが自由に銃をぶっ放して言いように作られた施設さ」


 そう言ってドレッドは懐から銃を取り出し、無色の壁に向かって引き金を引く。

 銃口から放たれたドレッドの弾は、壁にぶつかり跳弾……なんてことにはならず、そのまま勢いを一気に無くして、壁の外にコトリと落ちた。


「えっ、この壁に人がぶつかったらどうなるの?」

「人体に影響はねーよ。ま、場外アウトってトコだな」


 そう言ってドレッドは再び天上院に向き直り、その銃口を向ける。


「さて、変態女。ケリを付けようぜ」

「折角助けてくれたのに殺そうとするなんて、無駄なことをするんだね」

「勘違いすんな。私はお前を殺すために助けたんだ」

「殺す殺すってそんなに言ってちゃ、言葉が軽くなるよ?」

「ハッ! なら本気だってことを教えてやるよ……グラァアアアアアア!」


 ドレッドは吠えた。

 振動により、シャボンのような壁がビリビリと揺れる。

 ドレッドの叫びは全く収まらない。

 それどころかドンドン大きくなっていく。

 叫びと共に、ドレッドの体から白い体毛が生えてくる。

 いや、体毛だけではない。

 顔や体の骨格まで変化している。

 その手足からは鋭い爪が伸び、その顔は獰猛な狼の顔へと変化した。


「変身中に攻撃しちゃいけないっていうのは不文律だよね」

「グラァァアアアア!」

「……ペニバーン!」


 最早ドレッドは人の言葉を発さない。

 会話は魔力を介せば可能なはずだが、それが出来ないということはつまり会話をするという知能すらも獣の力に飲まれているということだ。

 今のドレッドにあるのは、ただ目の前の敵を屠るという闘争心だけ。

 そんな彼女の姿を見て、背筋に冷たいものが走った天上院は、直前までのふざけた雰囲気を捨てさり、ペニバーンを召喚してドレッドに構える。


「グラァア!」


 完全に獣と化したドレッドが気合を入れるように吠えると、その背中から巨大な銃が一対生えてきた(・・・・・)

 銃は天上院にその銃口を向け、牽制とばかりに二つの弾丸を放つ。


「〝ヨリソイ″!」


 銃を見た瞬間に危険と判断した天上院は、究極性技でその弾丸を防ぐ。

 しかし防いだその弾は、着弾と同時に高い音を出して爆散した。


「なにこれ!」


 爆散したその弾は白い煙を訓練所内にまき散らす。

 天上院はその煙で完全に視界を奪われてしまった。

 しかし天上院にはその視界が奪われようと、相手が女性であれば確実にその居場所を見付ける切り札、美少女感知センサーがあった。


「……え」


 しかし天上院は、その切り札が意味の無いものだと悟ることになる。

 天上院の感知センサーは、ドレッドの居場所をどこにも示していなかったのだ。

 まさか逃げたのか?

 そんな考えが天上院の頭を一瞬過ぎる。


 その一瞬が、この勝負の結果を決定付けた。

 ガァン!

 そんな音と共に、青いベールの一部が砕ける。

 咄嗟に天上院は、ペニバーンを砕けた場所に突き出した。

 ベールが砕けたのなら、そこに砕いたドレッド自身がいるはず。

 そう判断しての突きだった。


 しかし、突き出したペニバーンが何かを刺し貫いたという感覚は無い。

 天上院は仕方なくペニバーンを引き戻す。

 しかし、それは出来なかった。

 ペニバーンが全く動かなかったのだ。


「……掴まれてるね」


 白い煙で視界が潰されていてもわかる。

 美少女感知センサーの反応が無くてもわかる。

 ドレッドは今、ペニバーンをその手で掴んで、天上院の目の前にいる。


 天上院の青いベールが、完全に割れた。

 遮るものが無くなった二人。

 一人は両手で槍を突き出し、もう一人は片手でその槍を掴んでいる。


 ドレッドの本気。

 彼女の言葉に、何一つとして虚飾は無かった。


 「ッ!」


 天上院は身の危険を感じ、ペニバーンを手放して大きく後ろに下がった。

 天上院が先程までいた場所には黒い弾痕がいくつも生まれる。

 もし天上院が避けずにあそこでペニバーンを取り返そうと躍起になっていたら、今頃ハチの巣だっただろう。

 主に手放されたペニバーンは、光の粒子となってドレッドの手から消滅する。

 しかし再び天上院の手元に光と共に現れた。


「グルル……」


 折角奪い取った敵の武器が消え、ドレッドは不満げに唸る。

 ペニバーンを取り返した天上院だが、状況は完全に天上院の不利だ。


「ペニバーン、お願い」

(承知した)


 天上院はペニバーンを訓練所の屋根に掲げる。

 すると天上院は光に包まれて消えてしまった。

 残されたドレッドは、以前敗北した時と同じ状況に、油断なく辺りを警戒する。




-------


「ヤバい」


 ここはペニバーンの精神世界。

 そこで天上院はペニバーンに言った。


「ドレッドがマジで強いんだけど、どういうこと?」

「ふむ、以前戦った時も強かったが、本気とやらを出すと身体能力が向上してよりバケモノになるな……」


 ペニバーンもドレッドの獣化を見て、冷静に状況を判断する。


「美少女感知センサーにドレッドの反応が無いんだけど……」

「それは間違いなくあの煙玉のせいだろう。奴の攻撃方法は己の体を巡るエネルギーを弾として銃に装填し、発射しているようだ」


 今は変態の下で戦っているが、ペニバーンは元神槍グングニルである。

 戦っているうちにドレッドの戦闘方法を見抜いていた。


「だから煙で蔓延してたあの部屋じゃ、ドレッドの居場所を特定できなかったんだね」

「あぁ、だから主はセンサーに頼らず、自らの力で奴とぶつかるしかない」


 ペニバーンは天上院にそう告げる。

 しかしそんなことを言われても無理な話だ。

 先程戦った時にそれは歴然。

 身体的なスペックが違い過ぎる。


「……ペニバーン。完全変態モードで今のアイツに勝てる可能性は?」

「難しいだろうな。我々の攻撃が当たればどうにかなるかもしれんが、奴は早すぎる」


 天上院が身武一体をしたところで、ドレッドはその攻撃全てを避けてしまうだろう。

 ペニバーンは言外にそう言っていた。


「ロウターと完全変態したらどうなるの?」

「奴の体を見てみよ。確かにロウターと身武一体を為せば、奴の速度についていけるかもしれんが、あの分厚い筋肉を貫通するほどのダメージを与えるのは難しいだろう」


 つまりペニバーンと身武一体をすれば速さが足りない。

 ロウターと身武一体をすれば破壊力が足りない。

 ペニバーンはそう言ったのだ。


「……なら」

「ん?」

「なら、同時に変態しない?」


 変態が、またロクでもないことを思い付いた。

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