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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第一章 魔族のフィスト
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お腹が空いたけどお金がないけど文字も読めないけど

「いくつか聞きたいことがあるんだけどいい?」

「ん? いいわよ」


 村までの道中、私はこの世界についていくつか質問することにした。

 フィストとより深く交流を深めたかったというのもある。


「魔術を使うときに、魔力を消費したりしないの?」

「するわよ? そんな基本的なことも知らなかったの?」

「あぁ、私って実は記憶喪失なのよ。自分の名前以外ほとんどわからないの」


 勿論大嘘である。

 ただ都合よく説明する方法が思いつかなくてね。


「嘘ね」


 バレた。


「記憶喪失にしてはあなたの目に不安さが無いわ。転移者かなにかでしょ?」

「転移を知ってるの?」

「えぇ、この世界によく来るもの」


 この世界に転移者はあまり珍しくもないようだ。この世界の文化の一部も、その転移者の発案であるものもいくつかあるらしい。

 スマホやチョコがその最たる例だ。

 こっちの世界ではクリスマスとかも祝ったりするのだろうか?


「ひょっとして魔力を消費するって、体力みたいに自分の体のエネルギーを消費するのか、っていう意味の質問?」

「質問の仕方が悪かったね。そういうことだよ」

「そういうことなら、消費しないわよ。魔術は空気中に存在する魔力を消費して発動するの。科学だって、自らの体から電力を生み出したりするわけじゃないでしょ?それと一緒よ」

「さっきのスマホの時も気になったけど、それっていつか空気中の魔力がなくなってしまうんじゃないの?」

「それについては心配しなくていいわ」


 フィストはそう言うと、前方に手をかざして火の玉を生み出した。

 おぉ、凄い。ザ・魔法って感じだ。


「今、私は空気中の魔力を消費して、炎を生み出しているでしょう? でも、消費しているといっても魔力自体は、〝炎”と形を変えているだけで、そこにちゃんと同じ量だけ存在しているの。つまり魔術は魔力の姿を変えて色んなものにしているだけで、使い捨てじゃないのよ」


 フィストが手を握ると、火の玉は消える。

 マジシャンみたいだ。


「こうして炎を消せば、魔力は再び元の姿に戻るのよ」

「へぇ」


 魔力とは実にクリーンなエネルギーである。

 この国には温暖化とか、そういうのは無いのだろう。

 当たり前のように感じていたが、この世界にも太陽がある。

 

「私にも使えるかな?」

「得手不得手はあるけど、ある程度ならヤコも使えるはずよ」


 私も幼い頃は箒を持って空飛ぶ魔女ごっことかしたものだ。

 いや、ペガサスがいるから空飛ぶ魔法はいらないと思うけど、魔法自体には凄い憧れる。


「この世界には国とか存在するの?」

「えぇ、いっぱい存在するわよ。ただ、私は魔大陸から出て、狩り場を探して適当にフラフラしてただけだし、あまり地理には詳しくないの」

「魔大陸?」

「あぁ、私たち魔族の多くが住む大陸よ。この世には中央大陸を含めてたくさんの大陸があるの」


 世界はとても広いようだ。当然美少女も色んなタイプの美少女がいるのだろう。

 胸が高鳴りますね。


「あ、魔物とかっているの?」

「魔力が暴走して獣に影響を与えた魔獣は頻繁にいるけど、魔物は一種の災害ね。大きいのから小さいのまで様々だけど、本当にとんでもないのが生み出された場合に限って、人も魔族も協力して討伐したりするわ」


 人間と魔族の関係は、そこまで悪くはないらしい。

 そうして二人が話している内に、村は見えてきた。

 村といっても、そこまで廃れた感じはない。

 寧ろ、レンガ造りの家や、鉄筋コンクリートのアパートのようなものがあり、村というより町に見える。地面も石できれいに舗装されていた。


「え、これで村なの?」

「村でしょ。そこまで大きくないし」


 私としてはかなり発展して見えるのだが、まぁ異世界と地球では価値観が違うのだろう。

 これから色んなカルチャーショックがあるかもしれないが、最初の内は慣れていくしかない。


「先にご飯食べるでしょ? どんなの食べたい?」

「あ。」

「どうしたの?」

「私、お金持ってない……」

「バカね、私が出すに決まってるでしょ」


 うわぁ、今度お返ししなきゃだな。

 これは一刻も早く私もお金を稼ぐ方法を見付けなければヒモ状態になってしまう。


「私みたいなのがお金を稼ぐ方法はあるの?」

「村の中央にある情報局に行けば?この世界の人が住む所ならどこにでもあるんだけど、魔獣の討伐要請とかあるわよ。私もよく使うし」

「そういえば、こう言い方って失礼かもしれないけど、フィストって魔族でしょう? 人里に入って大丈夫なの?」

「あー、大丈夫大丈夫。魔族といっても魔力の扱いが人より優れてるってだけで、見た目は人間と変わらないし。バレやしないわよ」


 バレなきゃ犯罪じゃないの思考は嫌いじゃないよ。

 フィストと私は村に入り、適当な店にあたりをつけた。

 決め手は一般的な食堂のようで、美味しそうな匂いも漂ってきたからだ。


「値段とか気にしなくていいから、好きなの頼んでね。いくら食べてもこの店の値段なら問題ないだろうし」

「わかった」


 私はフィストから受け取ったメニューを手に取って、それを開いた。

 そこで衝撃の、いやある種当たり前の事実に気付く。


「んー、私も昨日から何も食べてないし、いっぱい食べちゃおうかな。ナッツの炒め物とかいいわね。ヤコはどうする?」

「…ない」

「ん?」

「文字が読めない」

「え。」


 ヤバい、全く読めないぞこれ。

 いやだってメニュー表が日本語でも英語でもないもん。


「あれ、それならなんでフィストの言っていることがわかるんだろ?」

「あ、あー。そっかそっか。ヤコは異世界人だものね。分かった。取りあえず私と同じものを注文するわね、食事中に説明しちゃうから」

「お願い」


 フィストは店員をよび、メニューの注文をする。

 よくよく聞けばフィストと店員が会話している言葉も、何を言っているかわからない。

 なんか若干ショックである。

 私この世界で生きていけるんだろうか。


「ん、ヤコ。そんなに気に病むことじゃないって。ヤコもすぐ出来るようになる」

「本当?」

「えぇ、いい? この世界の人々は勿論違う言語を用いるわ。でもそれだと国同士、お互いの言葉がわからなかったりして大変でしょ?」

「そうだね」

「だからこの世界では魔力を使って会話するの」


 この世界では魔力を媒介として異文化人同士交流を行うらしい。

 自分の伝えたいことを魔力に込めて、それを相手に伝達する。

 自分の意思を相手に直接届ける、といえばわかりやすいだろうか。


「へぇ、それぞれの言語をいちいち学ぶ必要はないんだ?」

「えぇ、これは言語を使える者なら誰でも使える能力だし、ヤコなら料理が来るまでに習得出来ると思う」


 私はフィストに魔力を用いたコミュニケーション方法をレクチャーしてもらった。

 フィストは魔族なので人よりも魔力の扱いに長けており、異世界人の私ともすぐに言葉の接続が出来たらしい。

 最初に出会った人がフィストで本当に良かったと思う。

 魔力で喋るイメージとしては、目の前にある空気に自分の感情を乗せ、日本語でもなんでもいいから言葉に出す。

 そうすれば魔力が自分の言葉を相手の言語に変換し、そのまま伝わるとのことだ。


「次にこのメニュー表の読み方だけどね」

「うん」


 フィストによるとメニュー表に書いてある文字自体は地域ごとに違うらしいが、基本的に魔力に干渉する素材で書かれており、喋ったり聞いたりするのと同じ様に伝わるらしい。

 なるほど、さっきフィストが指を差して注文していた写真の下に「カシューナッツの炒め物」と書かれているのがわかった。

 折角この世界での会話方法が分かったのだし、私もフィストに気持ちを伝えてみよう。


「フィスト」

「ん、なに?」

「愛してる」

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