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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第二章 人魚のティーエス
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天上院弥子が恋した女 人魚のティーエスーSide3-

 その日は朝から騒がしかった。

 お爺様が昨日の夕ご飯を一緒に食べず議論していたし、私が起きた後メイドたちがいつもより念入りに部屋を掃除していた。

 朝ご飯を食べながらなにやら難しい顔をしたお爺様に話しかけてみる。


「何かあったの? お爺様」

「昨日の昼頃人間が海底都市に入国したいと言ってきてな。それを受けいるかどうかの会議をしていたのだよ」


 ニンゲン。

 私達人魚は基本的に海底都市で一生を終えることが多く、地上に住んでいるという人間の姿を見ることはない。

 地上を研修をしに行くものや、外交官でもない限り本当に人間と会うことがないのだ。

 無論他の種族も知らない。

 知識としてこの世に人間、魔族、植物人、獣人、そして人口生命体が存在するというのは知っているが、海底都市に住まう我々人魚にとってそのほとんどが半ば伝説のような存在である。


「これまで通り追い返して終了ではないのですか?」

「それがな、まず入国した方法なのだが地上から海を真っ二つに割いて海底都市までの道を作り、歩いてきたらしい」

「なんですかそれ」


 完全に化け物である。

 ニンゲンってそんな恐ろしいことが出来るのか。


「防衛局の総力を持って追い返すべき存在では?」

「それがな、どうやら我々と戦う意思は一切ないらしく、ただ探し物をしに来ただけだそうな。『真意の宝珠』で裏も取れている確実な情報だ」

「探し物とは?」

「それだけは口を割らなかったらしい」

「それは……結局どうなったのです?」

「あぁ、セージ家がその人物の滞在期間中監視することになった」

「なるほど、それで従者さん達が朝から忙しそうなのですね」


 私がそう言った後、お爺様がなにか言いづらそうに頭をかいた後、私の目を見てゆっくりと口を開いた。


「ティーエス」

「はい、なんでしょうお爺様」

「ティーエスの部屋にその人間が一緒に住むことになる」

「は?」


 思いっ切り変な声が出た。

 いや、これはさすがに驚く。

 あったこともない種族と共に生活をしろと言われているのだ。

 本当に何を言っているんだお爺様は。


「えぇえええええ!?」

「一応ティーエスと同年代の女の人間だ」

「そういう問題じゃないです! 心の準備ってものが」

「ちなみに今日からティーエスの部屋に滞在する」

「えぇええええええええええええ!?」


 どうなってしまうのだろうか。

 海を割って海底都市に歩いてくるような化け物。

 しかも私と同年代の少女だという。

 食べられたりしないだろうか、とても不安である。


 お爺様に少し抗議をしたが、この海底都市最高意思決定を、所詮一人の小娘にすぎない私が覆せるわけがない。

 こうなってしまった以上、後は私の気の持ちようだ。

 世の中いくらでも理不尽がある。

 相手に敵意がないとわかっているのだから死にはしないだろう。

 同年代の少女、しかも人間だ。

 むしろ新しい友達を獲得するチャンスと捉えよう。


「その人の名は何というのですか?」

「ヤコ・テンジョウインだ」

「ヤコ・テンジョウイン……」


 私は心の中でその名前を何度も反芻する。

 これから私の同居人。いや、そんな心持ちではダメだ。

 もう友達、むしろ義妹というくらいの心持ちでいかねばヤられる。

 何故かそんな予感がした。

 思いっきりじゃれついて相手を混乱させマウントを取る。

 これくらいの勢いで行こうと思う。



 そしてその人物がいよいよ屋敷にやってきた。

 最初にお爺様がその人と会ってその人となりを見るらしい。

 客室の扉に耳を張り付けて中の様子を伺う。

 意外にもそのニンゲンはお爺様に緊張しているらしく、声が固い。

 良かった。お爺様相手に威圧的になれる人物だったら私などお話にならない。

 これはまだ可能性がある。

 お爺様が私をお呼びになったので、私は覚悟を決め、勢いよく扉を開けて客室に入る。


 中には私より少し背が高く、透き通るような目をした女の子がいた。

 その子は突然入ってきた私に驚いたようで、少し固まっている。

 固まっている彼女へ畳みかけるように私は自己紹介をした。


「初めまして、私の名前はティーエス・セージ。ヤコ・テンジョウインちゃんだよね? よろしく!」


 自己紹介をしてもまだ固まっている彼女に追い打ちをかける。


「どうしたの~? 固まっちゃって。あ、もしかして私が美少女過ぎて固まっちゃった~?」


 うわっ、無いわ~。

 私のキャラじゃない。

 心なしか私を見るお爺様と従者さんの目も冷たい気がする。

 しかしそんな私へ彼女はにっこりと微笑み、口を開く。


「申し訳ない、貴女が美しすぎて思わず言葉を失ってしまいました」


 む、返しが上手い。あっさりと流された。


 こうなったら自室に連れ込んで物理的にマウントを取るしかない。

 そう思った私は彼女を部屋に案内してもみくちゃにする作戦へ移行した。

 初対面の私にここまで積極的に迫られたら引くだろうと見込んでだ。

 なのに彼女は私がベッドに誘い込んだり思いっきり抱きしめたりしても余裕で対応をする。

 ニンゲンって案外こういうコミュニケーションが普通なのだろうか?

 結局私が彼女からマウントを取る前に夕飯となってしまった。

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