欲竜ガンホリとの戦い 下
「ねぇねぇ」
五人目のガンホリは言う。
「ボクは生存欲、他の何を切り捨ててでも、自分だけは生き残ってなければならないよね?」
確かに、死ぬことは怖いことかもね。
強い痛みや苦しみを伴う場合だってあるし、生きてさえいれば叶うかもしれないことが、全て無に帰ってしまう。
けれど。
「自分より大切なものが見つかる、例え自分が死んでも、それさえ無事でいてくれればいいと」
そういうものがある人程、きっと自分だけが大切な人よりも強くなれる。
黄色に輝く光が、そう伝えると、生存欲のガンホリは、どこか納得したような顔をして、静かに消えていった。
「ねぇねぇ」
六人目のガンホリが言う。
「ボクは獲得欲。あれもこれも、全て手に入れないと気が済まないんだ」
確かにね、この世界の全ての美少女と、私もお近づきになりたいよ。
ただ。
「手に入れることだけ考えていたら、手に入れた時点で価値は失せるわよ」
獲得欲のガンホリは、少しギクリと強張った表情で赤色の光の言葉を聞くと、少し気まずそうな表情をして消えていった。
「ねぇねぇ」
残るガンホリはあと二人だ。
七人目のガンホリは言う。
「ボクは優越欲、他の誰よりも自分が一番じゃないと気が済まないよね」
確かに、一番になった時は嬉しいし、周りからの尊敬が心地良いよね。
ただし。
「自分以外に迷惑をかけて、道を外れた行為をすれば、必ず報いを受けますよ。」
優越欲のガンホリは、神妙な顔をしてその言葉を受け止めたが、優しく寄り添う紫色の光が体を包むと、肩の力が抜けたようにホッとした表情で消えていった。
「ねぇねぇ」
いよいよ最後のガンホリだ。
8人目のガンホリ、一体何を言うのだろうか。
「ボクは性欲。エッチって最高に気持ちがいいよね!!!」
うん!!!
はい?
あれ、やばい、否定する根拠がない。
私が盛大に認めると、性欲と名乗ったガンホリは私に思いっきり抱き着くと、口元が裂けているのではないかという程に大きく笑い、そのまま私の胸に顔を埋めた、
途端に体の奥底から込み上げる強烈な何か。
暴走する程に荒れ狂うそれを押さえつけようとすればするほど、余計に激しく突き動かされる。
あぁ、この何かの正体を私は知っている。
性欲だ。
まずい、性欲に対する回答を私は持ち合わせていない。
性欲のままに生きてるタイプの人間だから、他の欲に対しては答えることが出来たけど、これは本当に分からない。
「アハハ、ボクの勝ちぃ~!」
勝ち誇るガンホリが高らかに笑う声と共に、気が遠くなっていくのを感じる。
「ねぇ」
誰かが私を呼んでいる。
「この子に、最高のエッチをプレゼントしようよ」




