さあ敵役を倒そう
やっと、抱きしめることができた。
どこかで選択を間違えたんじゃないかって、後悔する日もあった。
でも今、腕の中でそっと私に寄り添ってくれる姫子ちゃんを感じて、確かに満ち足りた気分になっている自分がいる。
ヘイヴァ―のホテルで舌を噛まれたあの日の夜に、いいや、きっとロッカーの中で彼女の刀にお腹を刺された時に、次こそは幸せにしてみせると誓ったんだ。
彼女の想いに飲み込まれるんじゃない、私のエゴに飲み込むんじゃない、お互いが妥協するんでもない。
お互いの距離感を、気持ちを、しっかり掴み合うんだ。
恋愛ってそういうものじゃないか。
「天上院様……」
「姫子ちゃん」
そういえば、姫子ちゃんにずっと言いたいことがあったっけ。
「ねぇ姫子ちゃん。弥子、って呼んでよ」
「へ?」
空からは豪雨と雷。
正面には唸り声を上げながら巨大化していくガンホリ・ディルドーの姿がいるが、そんなものは二の次だ。
やっと手に入れたこの温もりを、もう少し楽しませてくれないか。
「天上院様、じゃなくてさ、弥子って呼んで?」
「あ……」
姫子ちゃんは少し腫らした眼でしばらくこちらを見つめた後、何故だかもの凄い数生えている腕のうちの一本で目を擦った。
「弥子、さん」
さん付けかぁ、まぁ今はそれでもいいや。
これから二人でもっと仲良くなればいいしね。
「バォオオオ!」
待ちきれないのか、最早聞き取れないほどの爆音で唸り声を上げるガンホリ。
うるさいなぁ、本当に初めて会った時と一緒で空気の読めない奴だよ。
ラブロマンスに敵役はいいスパイスになるけど、主張が激しいのはナンセンスだと思うんだよね。
どうせ一緒なら、いつもみたいにスッといなくなってくれればいいのに。
「姫子ちゃん」
「はい、弥子さん」
「一緒に戦ってくれるかい?」
私が聞くと、初めてキスした図書館で見せた、あの照れたような可愛い笑みのような、それでいて力強さを感じる綺麗な表情を見せてくれた。
「当然です!」
本当に嬉しそうな声で姫子ちゃんは頷くと、彼女の全ての腕が私を抱きしめる。
私もどうにかその隙間を縫って抱きしめ返すと、私たちは鮮やかな七色の光に包まれた。
多分これが最後の身武一体。
バッチリ決めて、全部終わらすんだ。
ガンホリがこの世界を滅茶苦茶にして、自分の物にしようとしているのであれば躊躇う必要もない。
私だってこの世界でやりたい事がまだまだ沢山あるんだ。
色んな美少女に出会ったし、面白い人だっていっぱいいた。
そしてきっと、まだ会ってない人だっていっぱいいる。
もう十分だろって?
勝手に決めないでくれないかな、私は。
「女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!」




