くらぁ剣
随分とでかいウツボだなぁ。
たかだかウツボ如きに俺の大好きな街を壊されちゃたまんねえよ。
だからさ、頼むトライデント。お前の目的はもう終わってるのかもしれないが、もう一度俺の為に力を貸してくれ。
『当然だ』
なんとも心強い返事だ。
そして光が俺を包むと、また筋肉ムキムキのおっさんに絞め落とされて俺の意識は無くなった。
ふむ、さてこの魚をどうすれば良いのだろうか。
我が主の故郷で暴れまわる不届き者は即座に排除せねばならん、あのミューズの関係者だというのであれば容赦などいらん。
「当然のように意識を手放すとは……」
人魚がなにやら言っているが、些末な問題に気を配っている状況ではない。
「相手は伝説の魔物だ、何か策があったりしないか? トライデント」
「知らぬ、どんな生物でも頭を狙えば大体は死ぬ」
少しばかり首回りが太いようだが、なに、切りごたえがあるというものよ。
先程より首を振り回しているのが気に食わん、一発殴って黙らせるとしようか。
私は魔物の頭へと飛びかかり、そのまま脳天に拳を振り下ろした。
「ギャオオオオ!」
確実に一撃を与えた感触があるのだが、如何せん図体の差はなんともしがたい。
踏ん張ろうとしたのだが振り落とされてしまった。
先程の人魚の傍へと着地する、さて次はどうしてくれようか。
「全く、随分と乱暴な解決をしようとするな」
そう言った人魚は、口笛を吹いてここまで主と共に乗って来た巨大なタコを2匹、いや2杯呼び出した。
タコも大きいのだが、如何せん相手の魔物と比べると少し差があり過ぎる。
2対1とはいえ、流石に相手にならないだろう。
『我が手に集え、海の怒りよ』
む? そのままタコをけしかけるのかと思いきや、タコはその巨大な図体をドンドンと収縮しながらこちらへと移動していく。
そしてどんどんと小さくなり、更にその姿形までが変わっていく。
やがて2杯のタコは2本の曲剣となって、人魚の手に収まった。
「深海王~喰剣~」
なんだダジャレか。
一瞬そう思って呆れたが、その剣から感じる威圧感はそれで済ませていいものではない。
二本の曲剣を少し低めに構え、人魚はリヴァイアサンをその目に捉える。
「トライデントよ、あの化け物の首を落とすのを手伝ってはくれないか」
元よりそれが我が主の意向。
貴様が首を切り落とすよりも先に、我が槍が突き殺してしまうかもしれんな。




