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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
最終章 第二次中央戦争編
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男の意地

 低くフェンリルが唸ると、私の身体がゴミの様に舞い上がった。

 いや違う、正確には余りにも早すぎる突進に理解が追い付かなかったのだ。

 痛みは遅れてやってきた、というより、痛みがやってきた頃には体が手遅れだった。

 城を突き抜けたと思ったが、どうやら部屋の中まで吹き飛ばされたようだ。

 視界が霞むを通り越して、ボヤけている景色を必死に見回す。

 私がいるのは、どうやら誰かの執務室。

 仕事など幾らでもあるはずなのに、全く使われた形跡のない、というより物が殆ど置いていない部屋。

 

 こんなふざけた部屋は城に一つしかない。

 ドレッドの部屋だ。

 こんな部屋が私の死に場所だというのか? 冗談も大概にしろ。

 アイツの部屋で死ぬのだけは嫌だわ。


「ぐぅ、うぉお」


 何か、何かないか。

 相手はフェンリルだ、きっと私がまだ生きているのには気付いているだろう。

 正直最後の頼みがあの女の部屋とか死にたくなるが、今死ぬわけにはいかない。

 いっつも何にも仕事で役に立ちやしないんだ、こんな時くらい私を助けてみやがれ。

 必死に部屋を荒らしながら探し回っていると、私の足元に瓶が転がって来た。

 中には丸薬のような怪しげな塊が詰まっている。


「これは……」


 私はこれを知っている。

 二百年前の大戦にて猛威を振るい、あまりの犠牲の多さから戦後にエンジュランドで使用を禁止された伝説の薬物の形状に似ているのだ。

 そういえばガラード様の父上であるランスロウ卿が、永刻祭への出場者を決める登録会で、ドレッドを相手に使用したと聞いた気がする。

 なるほど、これはその時の証拠品か。

 これを飲めば。


 躊躇する自分がいた、飲む以外の選択肢など無いというのは分かっているのに。

 しかし、死ぬのだ。

 死んだのだ、ランスロウ卿は。

 これを飲んだら、確かにフェンリルを超える力が手に入るかもしれない。

 しかし、死ぬ。

 死にたくない、そう思うのは罪だろうか。

 私はエンジュランド第三位権力者。

 守るべき民を見捨てて、命欲しさに逃げるのは罪なのか。


 こんな時、あの方が居てくれたら。

 私の思考に過ぎるのは、堂々とした佇まいで君臨する主の姿。

 私が使えるべき、王の姿。


「ガラード様……ッ!」


 違う違う違う違う違う!

 頼るな、あの方に。

 あの方が居れば、私が死ななくても済むかもしれない?

 命を懸けてあの方を支えると決めただろうが!

 その言葉を、ただの口だけで終わらせたくない。

 ガラード様の留守にエンジュランドが崩壊していたなど、ありえん失態。

 怠け者のドレッドにも劣る不甲斐の無さ!


 振り返ると、フェンリルが私をぶち抜いた穴からこちらを覗いている。

 そしてその大きな口を開くと、お菓子の家でも食べるように壁を噛み破った。

 目の前を巨大な歯が通る。

 もう、やるしかない。


「聞け、化け物!」


 瓶の蓋を開け、中の丸薬を全て飲み込んだ。

 分量? どうでもいい、これで足りないことは無いだろう。

 私の最大限を、貴様にぶつける。


「私はエンジュランド第三位! サー・ガラード王様に使える家臣ボーズだ!」


 凄まじい、腹の奥底から、熱が溢れ出てくる。

 視界が真っ赤に歪む。身体が弾けそうだ。

 あぁ、だが、これなら、お前を殺せるかもしれない。

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