後は頼んだ
しかしリヴァイアサンの身体スペックがおかしい。
あれだけの巨体で、この高速で走る車に一切遅れることなく付いてくる。
通り過ぎた家屋を圧し潰し、時に瓦礫を飛ばしてトラックを破壊しようとしてくる。
「避難は殆ど終わったらしいわ!」
リースがくれた情報によると、住民の避難は粗方終わったらしいのだが、中央王都との討伐協力要請の反応が全く無いらしい。
やべえなぁ、俺らも無限に時間稼ぎ出来る訳じゃねえし。
唯一なんとか出来る方法があるとすりゃあ。
「アレクとティー達が戻ってくるまで、死ぬ気でやるぞ」
「えぇ、それしか無いわね」
既に連絡はした。
丁度片付いたようで、すぐに戻ると返事が来た。
なら絶対すぐに来てくれるはずだ、間に合ってくれるはずだ。
「ギャォオオオ!」
そう信じてドラムを叩き続けていると、リヴァイアサンが明らかに今までと異なる動きを見せた。
いきなり止まって天に向かって吠えたかと思うと、その口周りに渦潮の如くエネルギーが集まっていく。
待て、流石に分かるぞ。それヤバいヤツだな?
嫌な予感過ぎる、待ってくれ。
そんなもん所詮トラック如きが避けられるはずねぇだろやめろ。
「ギャアアアアアア!」
そして放たれる水流のブレス。
大波のように勢い良く押し寄せるソレはきっと、このトラックを残酷に飲み込むだろう。
流石伝説の化け物、明らかに生物っていう領域で収まる器じゃねえ。
こんな災害みたいな攻撃が生まれながらにして出来るってんなら、そりゃ生き物としての格が違う。
ここまでかと俺は諦め、最期にリースを見た。
だがその顔はまるで諦めてねえ、それどころか笑ってやがる。
なんでだ。
「ねぇ」
俺が見ていることに気付くとリースはむしろ笑みを強め、押し寄せる波の方を見た。
「どうやら賭けには勝ったみたいよ」
それは、どういう。
思うより先に、今まで聞いたことも無いような爆音が耳を鳴らした。
驚いて視線を大波へと戻すと、なんと『波が割れていた』のだ。
待て、どういうことだ。俺は夢でも見てんのか?
家屋を飲み込んで土砂を含んだ濁流を切り裂いて、上空へ立ち上っていくのはサンゴ礁の海よりも透明なグリーンブルー。
リヴァイアサン程ではないが、十分に巨大な。しかし恐ろしいというよりも頼もしい大きな影。
その上に堂々と立つ二人の男。
オイオイなんだよ、早過ぎるだろ。最高だよ。
すまねぇな、俺らにはこれが限界なんだ。
やれることはやらせて貰った、全力でな。
それでも力不足なんだ、足りねえんだ。だから。
助けてくれ、頼む。




