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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第二章 人魚のティーエス
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どこにいますか天上院様

 頬をそっと撫でた風を感じ、清宮姫子は目を覚ます。

 混合世界。

 清宮が降り立った時も、天上院と同じく月と星の輝く夜だった。


「ん……ここは」

(おはよ、姫子ちゃん)

「悪魔さん……ですか?」

(うん、そうだよ~。早速だけど、鏡をプレゼントしたから、自分の顔でも見てみれば?)


 清宮が身を起こすと、手元に小さな手鏡が落ちていた。

 清宮はそれを手に取り、自分の顔を確認する。


「なに……これ」


 鏡に映る清宮の左目は、存在しなかった。

 いや、その表現は正しくないかもしれない。

 左目にあったはずの眼球が存在せず、代わりに青白い炎、鬼火がそこに存在していた。


(ふふっ、どう素敵でしょ?)

「な、なんで……」

(それはね、咎人の証。悪魔と契約して願いを叶えた者の証)


 清宮は驚きのあまり、しばらく鏡をボーっと見つめているのみだった。


(ふふっ、まぁ眼帯でも買って隠せばいいじゃん! 今はそんなことより君のスキルがちゃんと使えるかどうかの確認だよ!)


 悪魔にそう言われても、衝撃のあまりに鏡を見つめたまま動けない清宮。


(姫子ちゃ~ん?)

「……」

(おーい)

「……」


 悪魔の呼びかけにも反応しない清宮。


(チッ、調子に乗ってんじゃねえぞクソガキ)


 悪魔がそう言うと、鏡に映る清宮の左目の鬼火が激しく揺らめく。

 すると、清宮の左目に針を刺されたかのような痛みが走る。


「……!? キャアアアアアアア!」

(いいかい姫子ちゃん? 普段の僕は君が可愛いから特別に優しくしてあげてるけど、僕の言う事を無視したり逆らったりしたら、こうやって痛い事しちゃうよ?)

「痛い痛い痛い痛い痛い!」

(わかりました、ごめんなさい悪魔さんは?)

「わかりましたごめんなさい悪魔さん!」

(うん、よろしい)


 そう言うと左目の鬼火は再び穏やかになり、清宮の痛みも引いていった。


「ハァ……ハァ……」

(さて、姫子ちゃん。もう一回言うよ? スキルの確認をして)

「ど、どのようにすればよろしいのですか?」

(うん、まずはグレイプニルだね。現れよ、グレイプニル! って言ってごらん?)

「あ、現れよ、ぐれいぷにる!」


 清宮がそう言うと、清宮の右腕が巨大な鎖へと変化した。


「な、なんですか……これ」

(神鎖グレイプニル。ご覧のとおり、右腕が使えなくなるけど姫子ちゃんの思う通りに動かせて、しかもすっごい堅い鎖を召喚できるんだ!)

「は、はぁ……」

(あとは、召喚術―ケルベロス―って言って?)

「しょ、召喚術けるべろす!」


 そう言うと、清宮の目の前に三つの首を持つ犬が現れた。

 それぞれ口から涎を垂らし、目には厳つい傷。グルルと恐ろしげな唸り声を上げている。

 地獄の番人と名高いケルベロスだ。

 それを見て、固まる清宮。


(あはは、ちょっと怖いかな? でもこの子に慣れ)

「か……」

(ん?)

「可愛い……!」


 そう言うと清宮はケルベロスに抱きつく。


「とってもきゅーとですわ! もふもふですわ!」

(えぇ……)


 ケルベロスの三つの顔も、自分を召喚した主に困惑の表情を向けている。


(あ、あのー)

「可愛いいいいい! 清宮家ではペットが飼えなかったのです! 幸せです!」

(姫子ちゃーん)

「んーーーーー! もふもふ!」

(話を聞け)

「キャアアアアアア!」


 悪魔がイラッとした声で言うと、再び清宮の左目が痛みだした。


(人の話を聞きなさい)

「申し訳ありません悪魔さん!」

(全く……まぁケルベロスを怖がってないならいいや)


 悪魔は思わずため息をつく。


(究極性技 裏四十八手、ちゃんと使える感じはする?)

「えっ、あっ、はい! なにやらソレを使おうと思えば、体が勝手に動きそうな感じがします!」

(ならよし、身武一体は今度説明すればいいや。じゃあ姫子ちゃん)

「はい?」

(どこかに導かれる感覚が、漠然とするでしょ?)

「はい。暖かくて、強い力を感じます」

(その方向に、天上院弥子がいる)

「ッ!」


 悪魔のその言葉に、弾かれたようにその方角を見る清宮。

 彼女が習得したスキルは天上院弥子センサー。

 本来は〇〇センサーという名前のものであり、特定の人物名を入れて習得する。


「この方向に、天上院様がいらっしゃるのですね?」

(そうだよ。さ、ケルベロスに乗って行こ!)

「わかりました、では」

(あ、待って!)

「え? あ、はい」

(前世からの忘れ物だよ、姫子ちゃん)


 悪魔がそう言うと、清宮の前に一本の刀が現れた。


「……岩徹し(イワトオシ)


 それは清宮家が所有していた家宝の刀。

 いや、正確には刀ではないかもしれない。

 この岩徹しは持ち主の意志により、薙刀へとも姿を変えると清宮家では伝わっている。

 なぜ魔法のない地球で、そんな刀が存在したのか。

 それは未だ明らかにされていない。


 だが清宮姫子にとって、そんな事実はどうでもいい。

 この刀は天上院弥子を殺めて、清宮姫子が自刃した時に用いた刀。

 二人の体をその刀身で貫いた妖刀である。


「そう、また私に力を貸してくれるのね?」


 清宮が岩徹しの柄を握ると、一瞬岩徹しが震えたように感じた。


「右手は……ぐれいぷにるがあるから、左手だけでも使いこなせるようにしないとね」


 刀は両手で持っても相当重い。

 だが清宮は、それをどうにかしてみせると決意した。


「待っていてくださいね天上院様。今、馳せ参じます」


 清宮はケルベロスの背に乗り、駆ける。

 センサーが示す、彼女の想い人の下へ。


「あの方を一人にしていると、また他の女に目移りをなさいますわ」

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