最高にロックな解決法
リースについて行くと、そこはティーの家……の中にある俺達の楽器を置いているスタジオだった。
最近は忙しさを極めており、あまり使っていないが、それでも仕事が終わった後に皆でどうにか時間を合わせて練習をしたりしている。
ティーエスの歌声に関しては中毒性の高いリラックス効果があるらしいので、そのライブを行う為の練習は寧ろ公務だとばかりに開き直っていた。
いや、今はそんなもんどうでもいい。
「なんでこの場所なんだ?」
「これを外のトラックに急いで運ぶわよ」
ん? なんでこの非常時に楽器を移動するのだろうか。
訳が分からん。
だがリースが意味の無いことを提案するとは思えないし、とりあえず大急ぎでドラムセットとキーボードを運んだ。
アレクのギターやティーのマイクも持っていこうとしたが、それは必要ないからと断られる。
楽器を運んだトラックは何やら普通のものと異なるようで、やたら派手な電飾が張り巡らされている上に、荷台に天井どころか壁も無いというかなり特殊なものだった。
「なんだこれ」
「いいから、楽器をセットして」
トラックの荷台には電子機材が沢山積んであり、まるでライブ会場のような……ってまさか。
一瞬リースの方へ視線を向けたが、その表情は真剣だ。
なにより今は突っ込んでる時間も惜しい。
俺は黙ってドラムをトラックに設置する。
用意が終わり、リースが最終確認をするとトラックの運転をしてくれるらしいウッケンという男性に声を掛ける。
すぐに動かしてくれるそうで、いつでも演奏が出来るように待っていろと言われた。
その言葉で完全に察したが、やはりリースの考えというのは。
「ワイゼル、危ないからここにあるベルトをして」
俺は設置したドラムと同じく固定された椅子に付いているベルトを装着する。
そして俺らを載せているトラック、いや動くオープンライブ会場は勢い良く走り出す。
覚悟は出来た、やろうじゃないか。
「曲はどうすんだ?」
「派手な音を出せれば正直なんでもいい。マイクで叫ぶのは避難場所への指示とかだから」
リースが手元の機械を操作しながら、自分のマイクの位置を調整する。
そうかそうか、なるほどな。
基本はリースが俺に合わせてくれるらしいので、本当に好きなリズムで叩けばいいらしい。
しかも避難勧告もリースがやってくれるようだ、俺の仕事ほとんどねえな。
ならいいだろう、全力でやってやる。
俺はスティックを握り締めて深呼吸をした後、ドラムに振り下ろした。




