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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第二章 人魚のティーエス
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愛していますわ天上院様

 私はロッカーから刀を引き抜きます。

 あの方の血がべったり付いていました。

 私はそれを暫く見つめた後、舐めとります。

 あの方の味。いつまでも楽しんでいたいですが、そうもいきません。

 私は指を鳴らします。


「お呼びでしょうか、姫子お嬢様」

「このロッカーを清宮の地下室まで運んで。あと代わりのロッカーも」


 椿ノ宮のロッカーは全て我が社が作ったものです。だから代用品も用意出来ます。


 あの方の体が地下室へと運ばれました。

 湯浴みをして身を清めた後、清宮に代々伝わる正装に身を包み、家宝の刀を持って私もそこへ向かいます。

 この地下室は外から入る場合でも、中から入る場合でも鍵が必要です。

 私は部屋に入った後、持ってきたはんだごてで更に鍵穴を溶かしました。

 これで誰も、この部屋に出入りすることは出来ません。無論、私も。


「お待たせしました、天上院様」


 天上院様はロッカーから出され、色とりどりたくさんの花に包まれながら、美しい純白の棺にいらっしゃいました。

 気を利かせたメイドが移して下さったのでしょう、本当に有能です、感謝しなければ。


「今、私もそちらに参りますね」


 私は天上院様を貫いた刀を自分の胸に向け


「愛してます、天上院様」


 我が身を貫きました。







「おーい、おーい」


 誰かが私を呼ぶ声がします。


「清宮姫子ちゃーん」


 なんでしょう、頭がクラクラします。


「早く起きてくれないとチューしちゃうよ?」


 いけません。私の唇は天上院様だけのものです。

 頭痛を堪え、どうにか起き上がります。


「お〜。起きた起きた」

「貴方……どなたですか?」


 私の目の前には、真っ暗な空間にフワフワと浮く、背中に黒い翼、頭に小さな角を生やした誰かがいました。


「おはよう。清宮姫子さん、僕は名前なんて特にないんだ。悪魔さんって呼んで?」

「悪魔……さん?」

「そうそう。僕は君を地獄に案内しにきたんだ」


 その言葉を聞いて、私はどこか、諦めに似た感情を覚えました。


「地獄……ですか」

「そうそう、鬼に目玉を抉られ、全身を炎で焼かれて串刺しにされる、あの地獄」


 わかっています。

 この世の何より愛する人を殺したのです、地獄行きなんて当然でしょう。


「そうですか、わかりました。案内をよろしくお願いします」


 意外にも、私はあっさりソレを受け入れました。

 子供の頃は「悪い事をしたら地獄行きだよ」というか大人の脅しに泣いていた私なのに、いざそうなってみると冷静な私がいます。


「ふふふ」


 そんな私を見て、悪魔さんは笑います。

 愚かな人間を見て嘲笑う、という類の嗤いではありません。心から楽しそうに笑っていました。


「ねぇ、本当にそれでいいの?」


 悪魔さんは聞いてきました。


「天上院弥子に、もう一度会いたくない?」


 私はその言葉を聞いて、もう無いはずの心臓が、ドクンと高鳴るのを感じます。


「……会えるのですか?」

「私は悪魔だからね。で、どうする?」

「でしたら、お願いします。会わせてください」


 悪魔さんのその言葉に、私は頷きました。

 その言葉に悪魔さんは笑みを深めます。


「いいよ、会わせてあげる。ただしその前に2つ、お話がある」

「2つ……?」

「うん、いい話と悪い話。どっちから先がいい?」

「……悪い話からお願いします」

「おっけー、まず天上院弥子に会った後、君には最上級の地獄に行ってもらう」


 願いの対価、最上級の地獄。

 どんなところなのでしょうか、想像もつきません。

 それはそれは恐ろしいところなのでしょう。

 しかし、もう一度天上院様とお話しできる機会が貰えるならば……辛くはありません。


「わかりました、次の話をお願いします」

「ふふっ、そしてもう一つ。君にはもう一度人生を過ごしてもらいます」

「……生まれ変わる、ということですか?」

「んー、ちょっと違うかな。肉体は今現在そのままだし」

「それが天上院様に会うことと何の関係が?」

「いい質問だね。実は天上院弥子さんは、君に殺された後『混合世界』に転移してるんだ」


 混合世界、転移。

 聞きなれない単語が聞こえました。


「よくわかりませんが、混合世界というところに、天上院様がいるんですね?」

「そうそう、だから君も彼女を追いかけて、混合世界に転移してもらうよ」

「わかりました。では早速、よろしくお願いします」

「気が早いってば」


 悪魔さんはそう言った後、暗闇から一つの冊子を取り出します。


「えーっと、天上院弥子が取得したスキルがペガサスとグングニルと……美少女感知センサーと究極性技 真四十八手? 何取ってんだコイツ。まぁいいや、姫子ちゃんの業ポイントが2500だから……」


 悪魔さんはブツブツ言いながらその冊子を見つめています。


「よし、じゃあ姫子ちゃんには召喚術ーケルベロスーと神鎖グレイプニル、あと天上院弥子感知センサーと究極性技 “裏″四十八手をあげよう」


 しばらくすると、悪魔さんは私に微笑んでそう言いました。


「えっと……」

「あぁ、大丈夫大丈夫。あっちに着いてから僕が色々教えてあげるから。あとちょっと痛いから我慢してね〜」


 そう言うと悪魔さんは私に近付き、私の顔にそっと手を当てた後、私の左目に口付けをしました。

 瞬間、駆け巡る激痛。


「ァアアアアアアア!」

「んー」


 痛みに身を揺さぶる私を、万力のように悪魔さんはその両手で抑えつけます。


「よし、おーわり! 頑張ったね」


 その痛みは、悪魔さんが私の目から口を離すと、唐突に終わりました。


「これで君は混合世界に転移しても、いつでも僕と連絡が取れる」

「……よくわかりませんが、ありがとうございます」

「あはは、お礼はいいよ。君の左目、美味しかったし」


 その言葉に、私は思わず左目を抑えます。


「ふふっ、あっちに着いたら鏡で確認するといいよ」


 その言葉を最後に、私の意識は遠のいていきました。

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