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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
最終章 第二次中央戦争編
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破界

『勇ある者へ、祝福を』


 私の決断を悟った悪魔が、小さく笑い声を上げた。

 すると、この世界に来てから痛みしか感じることの無かった左目が、どこか心地良い感覚に包まれる。

 暫くしてそれが収まったかと思うと、今度は別の感覚が現れました。


 左目が、見える。


 悪魔に奪われたはずの左目が見えるようになっている。

 左目を隠すために巻いていた桃色の布の裏面が、見える。

 恐る恐る布を取ると左目は確かに、右目と同じ景色を映していました。


『報告です』


 同時に、私の身体中を満たしていく力。

 自分の限界が無くなっていくかのような感覚。


『第一段階が全て終了しました』


 天上院様を守る決意も、力も手に入れた。

 後はやるだけ。

 ぎどらちゃんの背を軽く叩い、天上院様の下へと急ぐようにお願いします。

 大きく嘶いたぎどらちゃんはその羽を広げて飛び立ち、あっと言う間に天上院様達の真上へと辿り着きました。

 状況を見れば、不届き者が天上院様へとまさに触れようとしている直前です。

 普通に降りたら間に合わない。

 私はぎどらちゃんから飛び降りながら岩徹しを抜き、そのまま振り下ろしました。


「キミ、は」


 狙い通り、伸びていた手を斬り落としながら着地。

 普通の人間なら自分の手が斬られた所に驚いて飛び退いたり、慌てたりするところです。

 しかしその様子もなく、斬られた自分の手首を軽く口を開けて眺めたかと思うと、吹き出したように笑い声を上げました。

 斬られた場所から血が噴き出ることもない。悪魔が言っていた通り、確かに化け物ですね。


「汚い手で、天上院様に触れないで下さい」


 私の背後には倒れたまま呻く天上院様。

 覚めない悪夢にうなされているような彼女を早くお助けしたいところですが、残念ながら真正面の存在から目を離すことは出来ません。

 唐突な邪魔が入ったにも関わらず、むしろ笑みを強めた化け物。

 天上院様を抱えて逃げることも考えましたが、その隙すらも与えてくれそうにありません。

 目を逸らしたら、死ぬ。


「そうかそうか。キミが七人目か」


 もう一つの手で斬り落とされた手を軽く撫でると、まるで手品のように新たな手が再生しました。

 そのまま治った手を掲げると、軽やかな音を立てて指を鳴らす。


「『破界』」


 化け物が呟くと、真上に輝いていた太陽が闇に隠れて夜が訪れた。

 どこからか黒い雲が現れ、激しい雨と共に雷が落ちる。

 地揺れが起こり、辛うじて残っていた建物が倒れ、人々の叫び声が響く。

 世界の終わりが、始まった。

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