異形、登場
背中には二対の翼。
一対は白く柔らかい羽根で構成された翼。
そしてもう一対は、黒い光沢を放つ金属の翼。
背中だけではない。
両手には魚の透き通るヒレが、胸元には獣のような毛皮が。
歩いた跡には、水も土も無い道であろうと美しい花が芽吹く。
ようやく立ち上がったらしいエクゼロへ近付いていく。
私を認識したらしく、牽制のつもりだろうか? 両手をこちらに突き出し、エネルギー弾を放って来た。
美味しそうなおやつだね。
真似して両手を合わせると樹木と花で出来た虎が現れて、それを飲み込んだ。
「何ッ!?」
あはは、驚いてる驚いてる。
お返しに、こっちも凄いのを見せてあげよう。
エクゼロの攻撃を飲み込んだ虎が崩れていくと、中から現れたのは鋼鉄の鮫。
その口が開くと、空気を震わせる音と共に極太のエネルギー砲が発射された。
避けようとしていたみたいだが、まだ先程の一撃から完全に立ち直っていなかったらしい。
光に飲み込まれていくエクゼロの体。
やがてそれが収まると、後には全身が炭のようになった何かが残った。
でも、これじゃまだまだ不安だな。
さっきだって、これで大丈夫だと思ったら奥の手が存在したのだ。
徹底的にやらなければ。
私はエクゼロへと近付き、この姿になっても相変わらず股間部に付いているペニバーンを構える。
そしてそれを思いっ切り突き出した。
エクゼロは動かない、確実に避けられないトドメの一撃。
だが、それは防がれてしまった。
しかも、片手一つで。
手加減をしたつもりはない、全力を込めた必殺の突き。
それは容易く阻止された。
「やぁ、お久しぶりだネ」
目元まで被ったスポーツキャップと、ヘソ出しの服に青いジーパン。
ペニバーンを軽く押し戻すと、ソイツは立ち上がって私の方へ向き直る。
「貴方は」
「そういえば自己紹介もまだだったっけ」
いつになく上機嫌そうにニコニコと笑って首をかしげている。
「ボクも忙しかったしネ、許してよ」
いつだったか、初めて会った海底都市で質問をしたはずだ。
なんで私を手助けしてくれたのか、そして人間がどうしてこんな場所にいるのか。
一つ目の質問には答えてくれなかった。
そして二つ目には、そもそも人間ではないと答えられた。
「異形なんて呼ぶナンセンスな人もいるけど、無能な神に代わって世界を更なる高みへと導いてるのさ」
闇の様に黒い髪が揺れ、光のように瞬く黄金の瞳。
誘うように深みを増して、私はそれに目を奪われる。
「ボクの名前はガンホリ・ディルドー。よろしくネ!」




