絶対機王X・ゼロ
全身を鋼の鎧で包んだ小柄な人影。
真っ赤なサイレンのように明滅する目でこちらを睨む。
「中々に気分がいいな」
そうかい、こっちは割と最悪な気分だよ。
軽く体を動かすように怪物が腕を振ると、その風圧に巻き込まれた瓦礫が吹き飛ぶ。
「絶対機王X・ゼロとでも名乗ろうか」
ノリノリ過ぎだろ、自分の二つ名とか痛いわぁ。
なに? エクスト王のエクスと、身武一体によるクロスを掛けてるの?
うっわ中二病くせえ。
でも相応に強そうなのが本当に扱いずらい。
「ふんっ!」
絶対機王X・ゼロ……長いので以下エクゼロが地面を叩くと、私達の足元の地面が盛り上がり、槍のように突き上げてきた。
『その程度であれば私でも出来ます!』
何故か対抗心を燃やしたヴィエラさんが、エクゼロの足元から鋭い枝先の植物を生やした。
それは流石に見切られたのだが、避けられた植物から蔓が広がり、エクゼロの身体を拘束した。
「温い」
しかしブチブチという音を立ててその拘束は破られる。
なんというか本当に力任せだなエクゼロさん。
元のエクスト王は能力系特化っぽかったのに、ゼロと身武一体したら一転してパワーファイターになる意味が分からない。
ゼロってあんなに頭の悪そうな戦い方するヤツだっけ。
拘束を破ったエクゼロは、その勢いのままに私へ殴り掛かってくる。
その見た目からは想像も付かない程の速度で肉薄され、フリジディ王女とヴィエラさんが咄嗟に作り上げた盾をも壊して私を吹き飛ばした。
「先程のお返しだ」
そのまま城の壁にぶつかった私を掴んでぶん投げ、エクゼロも空へと飛んだ。
やばい、コレ直で喰らったら多分マジで死ぬ。
『させるか!』
ロウターの力で翼を動かし、エクゼロの踵落としをどうにか躱すことに成功。
先程やられたことをやり返そうとするとかマジで勘弁して頂きたい、ちょっとやり過ぎた自覚はしてるから。
「クハハ、どうだっ!」
どうだと言われましても。
エクゼロは私が避けたのに気付いていないのか、地面に向かって叫び散らしている。
なんだあの人、怖っ。
いや待て、ひょっとして。
心当たりがあるので、その姿を探すと、やっぱりそうだった。
フィストが短剣を構えて力を使っている。
私がやられた幻想をエクゼロに見せてるのか、なるほど。
ならば私がすることは一つ。
「究極性技 幸四十八手 其ノ三十五」
不意打ち上等。
こんなのと真正面から殴り合ったらおかしくなっちゃうよ。
私はヴィエラさんの力を借りて、蔓のロープをエクゼロに巻き付ける。
「"ヤブサメ"」
究極性技 幸四十八手 其ノ三十五"ヤブサメ"
逃れられない獲物に疾風の一撃を叩き込む。
必殺の威力で刈り取る命は砕け落ちる的の如し。
「ぐはっ!」
頭に痛恨のダメージを受けたエクゼロが地面に向かって落ちていく。
こんだけ執念深い相手だ、まだやられちゃくれないだろう。
気を引き締めなければならない。




