交わる二人の王
巻き上がる土煙が少しずつ晴れていく。
しかしとんでもない爆発だった、キハーノさん達がやったのだろうか?
恐らくゼロの力とぶつかり合ったことで生まれたのだろうが、それにしたって恐ろしい威力だ。
徐々に視界がハッキリしてきて、キハーノさんの姿が見えるようになってきた。
彼女の左目は黄金色に輝いており、槍を空へ突き上げる姿は姫騎士のように美しく見えた。
「ゼロに、勝った」
自分の目標を超えた彼女は、少し信じられないような面持ちでいるが、徐々にそれが理解出来たのか、笑みが零れる。
しかし再びキハーノさんを光が包むと、電池が切れたようにパンサさんが地面に倒れた。
身武一体が解除されたのだろう。
「パンサ!?」
驚いて彼女の体を揺するキハーノさんだが、反応がない。
その少し先で、砦の瓦礫に埋もれるようにして倒れているゼロ。
鋼の巨体にヒビが入り、どうにか起き上がろうとしているが、上手く体を動かすことが出来ていない。
「エクス、ト」
「なんじゃ」
よく見ればその傍らにはエクストが杖に寄りかかるようにして立っている。
先程の爆発に巻き込まれて一緒に吹き飛ばされたのだろうか。
「やれ、る、か?」
「老骨にはしんどいんじゃがのう」
するとエクスト王は杖を掲げ、真っすぐにゼロへと振り下ろした。
金属を叩いた音が辺りに響くと同時に、薄暗い光が二人を包む。
あ、やばい。なんか凄い見た事ある。
「う、うぅ」
「ちょっと、大丈夫なの?」
どうやら気絶していたアイディールさんが目を覚ましたようだ。
フィストとビッケさんが彼女の肩を押さえて起き上がらせる。
パンサさんもアイディールさんも、これ以上は無理だろう。
身武一体の副作用によってはキハーノさんも退場させるべきだろうが、見た所は何の問題も無さそうだ。
パンサさんが意識を取り戻さないところを見るに、キハーノさんの分まで肩代わりしてくれたのかもしれない。
「ビッケ、この女と彼女をなるべく遠くまで運んで」
「……一応聞くけど、貴女は?」
「ご想像の通りよ」
ビッケさんは少し悔しそうな表情をした後、アイディールさんを引き摺って、未だに何の反応もないパンサさんの下へと歩いていく。
そして動揺しているキハーノさんから彼女を奪うと、二人を抱えて翼を広げた。
「今度店に来たら!」
飛んでいく直前、私達の方は見ないままビッケさんが叫ぶ。
「サービスしてあげる!」
そっか、それなら絶対に行かなきゃね。
飛んでいく彼女を見送った後、再び視線をエクスト王達へと戻す。
あちらも準備が整ったようだ。
薄暗い光が収まり、怪物が姿を現した。




