英雄と王
「ったく、黙って寝てりゃあ勝手なことを」
天へと昇っていく二人を見て、暫く呆けていた私だが、ドレッドの声で我に返った。
「もう傷は大丈夫なの? ドレッド」
「見りゃ分かるだろ。何も問題ねーよ」
そう言ってドレッドは髪を掻き揚げると何やら自分の体とその周りを探し始めた。
やはりどこか調子が悪いのだろうか。
「やっぱりねーか」
「どうしたの?」
「銃だよ。お前のは?」
どうやら彼女が持っていた絆銃クラレントと狂銃アロンダイトがなくなっているらしい。
もしやと思い、私も自らのガンホルダーを見ると、そこに差してあった清銃ディランと王銃エクスカリバーが無くなっている。
なんで、と思ったが、先程の出来事を思い出して納得した。
「そっか。精霊銃は彼女の力そのものだもんね」
「あぁ、結構気に入ってたんだけどな」
またどっかで別の買わねーとな。
そう呟くドレッドの声は、少し寂しそうにも見えた。
クラレントが無くなったということは、彼女と一緒に過ごしていたクランちゃん……その正体は彼女の母親だったわけだが、その心の支えすらも彼女は失ってしまったのだ。
「ドレッド」
「それ以上は何も言うな」
彼女は慰めを期待していない。
きっと、ドレッドの中ではもう折り合いが付きつつあるのだろう。
なら私の出る幕ではない。
「勝手に人を面倒ごとに巻き込んどいて、後は頼んだっつって自分達はサヨナラかよ」
少し怒ったような口ぶりだけど、表情は穏やか。
なんだかんだ手伝ってあげるつもりなのだろう。
ドレッドがそのつもりであれば、私も彼女の支えになりたい。
「ドレッド。ひとまずエンジュランドに」
戻ろう、そう伝えようとした時、私達を途轍もなく巨大な光が照らした。
少し遅れて聞こえてくる爆音、一体何が起こったのだろう。
そう思ってそちらを見ると、恐らく中央王都がある方角だった。
驚いている我々をよそに一人だけ、ヒメコという人間の少女がギドラを召喚する。
「終わりの時間だ」
その目に付けたピンク色の布を外すと、その空洞の中で燃える小さな炎が姿を現す。
「舞台に上がれる役者の数は限られている」
ヒメコは、その人差し指をこちらに向けた。
その指先にいるのは私ではない。
私の隣にいる二人だ。
「ペンドラー・ドレッド、ティーエス・セージ」
英雄の器という話を、アルト王からされた。
そして私は、それに満たないという話も。
結局、私は選ばれないのか。ドレッドと一緒に、戦えないのか。
「乗れ、中央王都に急ぐぞ」




