ロウターと
光が収まり、私の目の前に立つのは何度も肌を重ねた銀髪の美少女。
「変わらないんだね、こっちの姿は」
「あぁ、心は変わらない」
思い返せば何度もロウターに救われた。
命を救われたという面で考えれば、ペニバーンよりも多いだろう。
いや、命だけじゃない。精神的に苦しい時も君は私の傍に寄り添ってくれていた。
「でも、より強くなる」
本当に、今日のロウターはカッコよく見える。
いや勿論普段からカッコいいのだが、なお一層のこと輝いて見えるんだ。
助けられた補正が掛かっているのは正直否定が出来ない。
危機を救われて惚れてしまうような乙女心が、私にもまだ残っていたとは。
ロウターは私を抱き寄せて、そっと髪の毛を撫でる。
出会った頃はあまり得意そうでなかった行為も、数を重ねる内にコツを掴んできたようだ。
未だにコンプレックスを持っているようだが、それは私とペニバーンを見ているからであって、十分に上手になったと思う。
「なぁ、主よ」
初めて出会った時から、ロウターは私に何も言わず付いて来てくれた。
たまにあの世で選んだスキルで、別の何かを選んでいたらと考えることもあったが、彼女達を選んだ方が絶対いいという結論になる。
ペガサスに乗って駆ける私なんてカッコいいんじゃないか。
最初はそんな妄想で選んだ。
でも、今となってはきっと直感で最高の今を悟ったんじゃないかなと思う。
ちょっと気分が舞い上がってるかな、でもやっぱりそうだろう。
「愛してるぞ」
ストレートな好意は、一切の壁に当たる事無く心に響く。
その一言を伝えた唇が迫り、私の返答を待たずに塞いだ。
私とペニバーンがやるような小技をしない、瑞々しい若葉のようなロウターの愛は外れが無い。
いや、その言い方は誤りだろう。
当たりしか引かないのだ。
「主が他の誰かを愛してる時でも、私は変わらず主を愛し続ける」
でも、負けられない。
自分が気持ちいいだけ、されるがまま?
そんなの私のプライドが絶対に許さない。
私は彼女の頭を両手で抑えながら、唇の感触を味わう。
きっといつかロウターは私よりも上手になる日が来るかもしれない。
だけど、今は絶対に負けない。
ロウター、今の君が出来ない技を教えてあげるよ。
最近の彼女はキスの際、積極的に舌を絡めようとしてくる。
ここは少し私達の真似っこ感が否めない、たどたどしさが残るその行為。
今回は少し心苦しいけど、それを利用させてもらうよ。
ロウターが私の唇をどかして、歯に添わせるようにして舌を動かす。
少し得意気なロウターの顔を歪めてあげたい。
いつも通りに口を少し開いて、ロウターの舌を受け入れる。
すかさずに侵入して私の口内を支配しようと動かす。
私ならすぐに舌を入れずに、少し焦らしたりするものだが、やはりまだ少し駆け引きに慣れていないんだろう。
だからこういう不意打ちを食らう。
穏やかに微笑んでいたロウターの眼が驚きで染まる。
肩が跳ね、私から舌を抜こうとするがもう遅い。
彼女の舌は私の歯によって噛まれているのだから。
さっき君の頭を抑えたのは、絶対に逃がさないする為。
いきなり噛み付いたんじゃない。
彼女が油断して舌を這わせている内に、ゆっくりと歯を重ね始めたのだ。
血が出る程に強く噛んだら、折角の雰囲気が台無しだもの。
「なぜ」
実際に聞こえはしなかったが、彼女の眼がそう言っている。
ごめんね、すぐ気持ちよくしてあげるから。
噛んだままのロウターの舌先を私の舌でくすぐるようにして舐める。
一度だけじゃ伝わらない、何度も、何度も舐める。
でもこんなんじゃ、苦痛の方が上回ってるだろう。
君を信じるよ。私がただ君の舌に噛み付いたわけじゃないと察してるはずだと、信じるよ。
ゆっくりと私は歯から彼女の舌を解放する。
離した時、一瞬迷うように身を震わせたが、そのまま私の口の中から舌を抜くこと無く留まってくれた。
ありがとう、信じてくれて。
私は噛んだ場所を重点的に舐めながら、ロウターと舌を絡める。
「私は、もっと学ぶ必要があるな」
長時間のキスで流石に息が苦しかったのか、顔を離して大きくため息を吐くロウター。
君の王道は完成されていると言っていい。
でも、私の奇策は大当たりを狙う為にあるんだ。
「いつか私がビックリするようなサプライズを期待してるよ」
「あぁ、任せて欲しい」
再び私達を包む光は、これまでよりも一際強く輝いた。
F王女「私達も身武一体してるはずよね?」
A盾「蚊帳の外感がハンパないわ……精神繋がってるはずなのに」
P槍「まぁ、仕方ない。こちらはこちらでやるとするか」
V嬢「浮気ですね、ヤコ」
※文中の技は天上院様の人並み外れたセンスと経験、ロウターとの信頼によって可能としたモノです。
実際に試すのは各個人の自由ですが、責任は一切取りません。




