六柱
「な、なにこれ。身体が……」
『首を切れ』
エクスト王がそう言うと、地面に膝を付いたフィストはそのまま自らの首をナイフで搔き切った。
辺りに飛び散る鮮血、あまりにショックな出来事に思わず目を疑う。
フィストが、やられた?
いや、そんなはずはない。私の美少女感知センサーが教えてくれている。
「知っているぞ、高度な幻術の使い手だとな」
杖を振り被ると、そこには再びエクスト王に襲い掛かろうとしていたフィストの姿。
やっぱりだ、あんなことでフィストが死ぬはずがない。
「『王の眼』を誤魔化せると思ったか?」
「やってみなくちゃわかんないでしょ?」
攻撃を防がれた為に、一旦エクスト王から距離を取るフィスト。
「敵は一人じゃないという事を忘れるなよ」
しかし、その背後からゼロが襲い掛かる。
「お前の相手は私達だ!」
だが、キハーノさんとパンサさんによって、その攻撃は一瞬とはいえ防がれた。
しかし圧倒的なパワー差の前に、フィストが避ける程度の時間を稼ぐ程度ではあったが。
「話にならん」
フィストを不意打ちから守ることに成功したものの、ゼロの強烈な一撃を真っ向から食らった彼女達は大きく吹き飛ばされた。
本当にあの化け物は一体どこからそんな馬鹿力を生み出しているのか。
「その様子を見る限りだと、フリジディとの身武一体を成功させたようじゃな。やはり危険だ」
そう言ってエクスト王は再び杖を構えて私を狙って来る。
フィストやビッケさんにキハーノ達がどうにか止めようとしてくれるが、ゼロが彼女達を通さない。
一方の私はというと、ゼロから貰った一撃が存外に大きかったのと、まだフリジディ王女とイージスちゃんとの身武一体が不安定なようで、身体が上手く動かない。
「ヤコ!」
フィストの悲鳴が聞こえる。
同時に私へと迫る杖の先は、真っすぐに心臓を狙って突いてきた。
こんな爺ちゃんの杖くらい防いでやると思ったが、その先端は身武一体によって強化されているはずの私の体を抵抗なく貫いた。
姫子ちゃんに刺された時のように感じる明確な死の感覚。
真っ暗になっていく視界。
前回の時は正直自業自得なとこもあったので、馬鹿なことを考えていた覚えがあるが、今回に関しては無念しかない。
誰でもいいから、助けて。まだ、ここで死ねない。
黒く染め上げられた視界を、青白い光が切り裂いた。




