決着
私の心に余裕が生まれた。
そうだ、フリジディ王女の言葉で勘違いしちゃってたんだ、私。
別にこれは勝負じゃない、私とフリジディ王女が気持ち良くなる時間、いわばボーナスステージ。
考え過ぎんな、失敗しようがそれはもう全部私の責任だと諦めればいい。
「へぇ、なんか雰囲気変わったじゃない」
変化を読み取ったのか、フリジディ王女が私の髪を撫でる手を止めた。
なんだろう、今ならフリジディ王女に触れることが出来る、そんな気がする。
肉体的な接触じゃなくて、その本質に初めて触れることが出来る気がする。
つまり、彼女と真っすぐに向き合うことが出来ると思うんだ。
「さっきまでよりは期待してもいいのかしら?」
「お待たせ、やっと目が覚めたよ」
今なら出来る。
私の心の中で思いが爆発している、フリジディ王女が愛おしいという思いが。
どうなってもいい、その先が破滅的な終わりでもいいから、私はフリジディ王女と一つになりたい。
堕ちるなんて言葉は相応しくない、彼女と共に昇りたい。
フリジディ王女と、キスがしたい。
そう思った私は、一も二も無く彼女に飛びついた。
テクニックなんて金繰り捨てた、動物的な口付け。
それでもフリジディ王女は受け入れてくれた。
やっと気付いたかとでもいうように、少し呆れた眼差しを私に送りつつ、唇が触れ合う感触を楽しんでいる。
こんなもの、どれだけ考えたところで結局は肉体的な欲情から来るものでしかないって、あの日に夜の王が教えてくれたのに、さっきまでの私はそれを理解してるフリをしてるだけだった。
本当の自分をさらけ出して、相手にも心を開いてもらう。
身武一体は精神の繋がり、それ以上でもそれ以下でもない。
ペニバーンもドレッドもそう言ってたじゃないか。
あの言葉はそういう意味だったんだ。
そしてフリジディ王女は、最初からそれを教ようとしてくれたんだろう。
「……最後は、貴女のお仲間次第ね」
そう言って彼女が目を移したのは、ペニバーンとイージスの二人の方だ。
「どういうこと?」
「イージスは間違いなく最強で頼れる相棒なのよ。でもね、一つ欠点があるの」
あの銀髪の少女、イージスは如何なる災いも防ぐが、同時に受け入れるべき成長も妨害してしまうらしい。
フリジディ王女がどれだけ自らに厳しい修練を課しても、イージスと身武一体を行える時間は遂に伸びることは無かったらしい。
だからこそ彼女は『自分より強い者とだけ結婚する』とある日宣言した。
イージスの守りを打ち破り、本当の力を発揮させる者を長い間探し続けていたのだ。
「それなら大丈夫だよ」
再び眩い光に包まれる視界の中、全身から力が抜けるイージスちゃんの姿と、それを支える相棒の姿が、最後に見えた。




