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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第一章 魔族のフィスト
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天上院弥子が愛した女 魔族のフィストーSide2ー

 ヤコはやっぱり転移者だった。

 記憶喪失とか言ってたけど、その程度はすぐに分かる。

 別に転移者程度なら珍しくもない。


 チョコやスマホを見せたらちょっとびっくりしてたけど、使い方は普通に分かってそうだった。

 ヤコの世界にもあったのかな?


 魔術の基本的なことも知らなかった。

 今日停まる村に向かう最中、いろいろ教えてあげた。

 村に着くとお腹が減ったので、その辺の料理屋に入る。

 そこで一つ事件が起こる。


 ヤコは文字が読めなかったし、私以外の人が喋っている言葉が理解できなかったのだ。

 私は魔術的な力の強い種族だったので、理屈がよくわかっていないヤコでも会話が出来たのだろうが、普通の一般人相手にはそうもいかないようだった。

 一瞬思った。

 このままヤコに魔力を用いた会話方法を教えなければ、ヤコはずっと私に頼るしかなくなる。

 私に依存するしかなくなる。

 だが私はすぐそんな考えを振り払った。

 それは醜い独占欲だし、なにより目の前の悲しそうな彼女の顔を見て、そんな事は私に出来ない。


 魔力を用いた会話方法をヤコに教えると、もともと私と会話できていたおかげで基礎的なことは理解していた彼女はすぐにマスターした。

 彼女は早速魔力を使って話しかけてくる。


「フィスト」

「ん、なに?」

「愛してる」


 教えてよかった。

 彼女の嬉しそうな顔を見て、私はそう思う。


 ごはんを食べた後、情報局に行きたがる彼女を抑えて今夜の宿を探す。

 すぐに宿は見つかった。

 彼女の希望でベッドはダブルベッドになったが。

 エッチなことはしないという私の意見は軽く流されてしまう。

 ちょっと期待している自分がいるのがどうしようもない、思わずため息をついてしまう。


 今度こそ情報局に行くという彼女を再び抑えて、診療所に向かう。

 彼女の背中を刺しまくったのが未だ心配なのだ。

 幸い特に問題はなかったらしい、よかった。

 診療所内で人目を気にせず抱きついてくる彼女には閉口したが。


 今度こそ彼女希望の情報局に向かう。

 今日は情報局がどんなものか見せに来ただけだから、依頼を受ける必要はないと言ったが、彼女は掲示板を右から左へ注意深く見る。

 そのうち彼女は一つの依頼を見つけた。


「緊急依頼?」


 それは情報局が早急に解決すべきと判断した依頼だ。

 危険なものも多いが、中には単純に迷子を捜してほしいなどのものもある。

 今回は後者だった。


「これなら迷子を捜すだけだし、そこまで大変ではなさそうだよ、どう?」

「んー、そうね」


 この程度ならいいやと思って、一応依頼に参加する。

 買い物ついでに捜せばいいだろう、迷子程度なら。


「さて、買い物に行きましょうか」

「ねぇ」

「ん?」

「情報局って、迷子保護する役目もあるんだよね?」

「えぇ、そうね」

「迷子になった子って、情報局に行こうとしなかったのかな?」


 言われてみればおかしな話だ。

 情報局くらい誰でも知ってる。


「もう一ついい?」

「何?」

「感じるんだ。今にも消えそうな、不安でたまらないっていう反応を」


 どうやら、ただの迷子捜しにはなりそうになかった。



「フィスト、走るよ!」

「わかった!」


 天上院は突然走り出す。

 迷子に関する手がかりを何かつかんだのだろう。

 よくわからないが、とりあえず彼女の反応とやらを信じて走る。

 周囲の人が奇異なものを見る目で私達を見る

 ちょっと恥ずかしいがこの際仕方がない。


「くっ、間に合わない! ペガサス、ペニバーン!」


 ヤコが叫ぶと、ペガサスとあの高そうな槍が現れた。

 私達はペガサスの背中に飛び乗る。

 やはりまだ鞍がないから乗りづらい、お金が出来たら買うように言おう。


「ペガサス、全速力で走ってくれ!」

「急ぎの様だな、我が主。だがそれならば走るよりもいい方法がある」


 そう言うと、ペガサスは一声嘶き、翼を広げて大空へ……って、え、ちょ、高――――


「きゃあああああああああ!?」


 ちょ、高い高い高い!

 落ちたらどうするのよこれ!

 固定してる道具もないのよ!?

 思わず前方にいるヤコを強く抱きしめる。

 そんな私の声など聞こえていないかのように、ペガサスは突如として急降下を始めた。

 ジェットコースターというのに昔一度乗ったことがある。

 あれの安全バーなしバージョンを想像してほしい、そんな感じだ。


「あ“あ“あ“あ“あ“あ“あ“!」


 思わず女の子として出しちゃいけないタイプの声で叫ぶ。

 ペガサスが何かに凄い勢いでぶつかって着陸した。

 不思議と衝撃はあまりない、ペガサスの魔術だろう。


 私は着陸と同時に地面に転がる。

 転がりながら私がこれから何をすべきか考える。

 物凄い恐怖体験を経験して、逆に私は冷静になった。

 目の前にペガサスがぶつかり、大破している車の光景がある。

 おそらくあの中に迷子、つまり誘拐された子がいるのだろう。

 ならば誘拐犯の隙を見て奪うまで。


 私は気絶しているように見せかけた自分の分身を生み出し、自身は透過の術で人に見えなくさせる。


 その後、ヤコは車から出てきた人物と戦闘を始めた。

 その人物は人間だったが、なにやら異様に強い。

 ヤコの攻撃を全て見切ってカウンターを入れてくる。

 状況はヤコに不利、私は思わずその人物の後ろに回り込んで不意打ちをしようと思ったが、その瞬間ヤコの体を光が包んで消える。


 突然の事態に私は焦ったが、すぐに光と共にヤコは現れた。

 変態的な姿で。

 なにアレ!?

 服は!?


「凄いや、この状態の私を何て呼ぼうか。魔法少女マジカル☆ヤコとかどうかな?」

「完全変態ドスケベ女の間違いだろ!」


 この時ばかりは誘拐犯と自分の意見が一致した。

 しかし変身、いや、変態したヤコはとても強く、さっきまで苦戦した相手を圧倒的な力で倒してしまった。

 呆然と見守る私をよそに、マウントを取ったヤコが誘拐犯をタコ殴りにし始めた。

 うわ、容赦なさ過ぎて若干引くわ。

 このまま終わるかと私は思ったが、そうはならなかった。


「姉貴から離れろ変態!」


 誘拐犯にも仲間がいたのだ。

 その仲間は誘拐した少女に銃口を当てて、ヤコに脅しをかける。


「とにかく、コイツのドタマに風穴開けられたくなきゃ姉貴を離しな!」


 今こそ私の出番だ。

 私は透過の術で奴らに見えていない。

 ここで下手に攻撃すると引き金を引かれて女の子が殺されてしまう可能性があるので、慎重に拳銃を魔法で無力化した後、少女を拘束している誘拐犯をナイフで思いっきりぶっ刺す。


「ぎゃあっ!」


 痛みで少女を離した誘拐犯を蹴り飛ばし、少女を優しく抱きかかえる。


「女の子は大丈夫よ、ヤコ!」

「フィスト! 最高だよ」


 ふふ、ヤコに褒められちゃった。

 彼女が誘拐犯にトドメを刺している間に、仲間を拘束して回復魔法をかける。

 こいつらは殺さずに情報局に引き渡さなきゃ。

 誘拐犯の回復が終わり、振り返るとヤコも丁度終わったのか、変身が解除される。


「お疲れ様! ヤコ」


 私は彼女にねぎらいの言葉を掛けるが、なにやらヤコの様子がおかしい。


「世界とはどうして広いのだろうか。神はどうして男女の区別をお作りになったのか」


 ヤコはどこか遠い目をして、なにやら語り始めた。



 おかしなヤコを村まで連れて行って誘拐犯を情報局に引き渡すと、有名な指名手配犯の一味だったようで、大金が貰えた。

 宿代で私の懐も寒くなってきたからこれは助かる。


 宿に帰ると、疲れたので入浴しに行く。

 ここのお風呂はネットでも評判だったので楽しみだ。


「風呂は心が澄む……仙人の明鏡止水、その一端を掴んだかのような錯覚を覚える」


 相変わらずヤコは変なカンジだったが。

 この状態のヤコは無害そうだと私は油断してしまった。

 油断の代償として、その後本調子に戻ったヤコに滅茶苦茶にされた。

 体は綺麗になったけど、心はなんか……うん。


 気を取り直して食事に行く。

 ヤコは食べ切れるのかという量を取ってきた。

 前世の料理もあったらしくて、取りすぎてしまったらしい。

 私も当初はお酒を飲みまくる予定だったが、この女の前で気絶したらなにされるか分かったもんじゃないと思い、程々にしといた。

 食事が終わり、ほろ酔い気分で私達の部屋に向かい、私はベッドにダイブする。


 明日は中央王都に行く。

 この世界の中心だし、明後日には王都祭がある。

 私は4年前に惨敗したが、ヤコなら……私に圧勝したヤコなら、少なくとも乱入は出来るだろうし、ひょっとしたら優勝だってしてしまうかもしれない。

 それに……


「もう寝ましょ。明日は中央王都に行くわよ」

「中央王都?」

「この世界の中心にある中央大陸、その更に中心にある中央王都。この世界の大体はそこで手に入るわ。貴女のお好きな美少女もね」


 あの王女もいる。

 世界最高の美少女が。

 私がヤコの一番になるうえで、ヤコが好きな美少女の一番になるうえで、最大の障害になるだろう人物。

 彼女をヤコが見たら……

 私の事なんてヤコはもう忘れてしまうかもしれない。


「ほう、それは楽しみだ。でも」


 そんな私の不安をよそに、ヤコは言う。


「今は目の前の美少女を愛でたいな」


 ベッドで寝そべる私に、ヤコは覆いかぶさってキスをする。

 ごちゃごちゃ考えているのがバカらしくなってきた。

 今は目の前のことを楽しもう。


「もう。疲れを明日に持ち越したくないし、程々にしてよね」

「ふふ、OKサインと受け取るね」


 私のOKサインに、ヤコは喜んで私の服を脱がしてくる。

 その後彼女は自身の服を脱ぎ……


 背中から大量の血飛沫を噴射した。


「ぐはぁ」

「ヤコ!?」


 安静にしていろ医者から言われたのに、今日のヤコはいろいろ暴れまわった。

 その上温泉に入ったり酒を飲んだりで血の巡りもよくなったのだろう。

 ある意味当然と言えば当然だった。

 回復魔法だってアフターケアは大切なのだ。


「ま、またドスケベ出来ないなんて……」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?」


 本当に、ヤコと一緒にいると退屈しない。

 大変だけど。

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