イージスの盾
「私に協力して欲しいのなら、私との身武一体を成功させてみなさい」
フリジディ王女との身武一体?
何を言っているんだろう。身武一体って人と武器が出来る技じゃないのだろうか。
一定以上の神格を持つ、というのが条件なはずだが、もしかして対象が人間でもそれさえ満たしていれば可能なのか。
「さぁ、遊びましょ」
彼女がそう言うと、見慣れた光に私達は包まれた。
間違いなく身武一体を行う際に出てくる光だ。
この中の空間は人によって違ったのだが、フリジディ王女の結界の中は真っ白だった。
本当に真っ白で、それ以外の色は拒絶する程の強い白さ。
事実、私の指先が若干揺らいで見える程である。
「この空間、やはり……」
そして、私の隣には召喚していないはずのペニバーンの姿が。
何故彼女がいてロウターはいないのか。
不思議に思いながらもロウターを召喚しようとしたが、何故か応答が無い。
「久しぶりね、グングニル」
どこからか鈴を転がしたような声が聞こえると思ったら、ペニバーンの前に美しい銀髪をした、赤い目の少女が現れた。
金髪で高身長なペニバーンと対照的に、年端もいかなさそうな外見をしたその少女は、どこか憎々し気な目をしてペニバーンを睨み付けている。
「やはり。イージスか」
「そんな人間の女なんか主にして、どこをほっつき歩いてたの」
なんだなんだ、よくわかんないけど雰囲気が悪い。
察するに、この女の子がフリジディ王女と普段身武一体を行っている『イージスの盾』の化身なんだろう。
ペニバーンは元々『グングニルの槍』という代物だったはずだ。
この少女と何かあったのかもしれない。
「創世神に仇為す存在を殺す為だ。お前が一番良く分かっているだろう」
「はーん? そんなんに世界を賭けるの?」
「資質は十分だ、可能性は大いにある。むしろ彼女以上の適任はいないだろう」
創世神とかいう聞きなれない単語が出て来た。
なんだ、七色の英雄とか六柱とか以外にもなんかいるのか。
正直説明が大雑把過ぎて、これ以上増えられると理解超えちゃうよ。
とりあえず私がイージスちゃんにディスられてて、ペニバーンがそれをフォローしてくれているというのだけは理解した。
「ようこそ。ヤコ・テンジョウイン」
そして、白い世界の中からフリジディ王女が突然現れた。
「とても可愛いでしょう? これが私にとって唯一の相棒、イージスよ」
フリジディ王女とイージスの盾、そして私とペニバーン。
四人しかいない空間で、私達の戦いは始まった。




