フリジディ王女の部屋
案内してくれるとは言ったそうだが、アイディールさん自身は砦の指揮官としてここにいなければならないらしい。
なので、いつもアイディールさんと仕事をしているらしい二人のうち、背の高い方の女性が案内してくれることとなった。
その際に、フィストやキハーノさん達のことを話したのだが、
「あー。魔族や植物人の方は大丈夫だとは思いますが、人工生命体の方は隠しといて下さい」
と言われたので、キハーノさんとパンサさん以外は姿を見せることにした。
そのことを説明するとキハーノさんは少し悲しそうな顔をしながらも、これから仲良くなってゆけばいいのだと優しく微笑んでくれた。
「うっ、ヤコの中央王都の知り合いって誰だろうと思ったら……」
幻術を解いて姿を見せるフィストさんが、隣にいるビッケさんと一緒に苦々しい顔をしている。
アイディールさんはそんな二人の顔を見て、不審そうな顔をした後、思い出したのか合点がいったという表情になった。
「あぁ、あの時の魔族ですか。もう一人は存じませんが」
「どうしてもこの女だけは苦手なのよね……」
「別に貴女に好かれたいとは思ってませんし」
そういえばこの二人は私がフィストと出会う前から既に因縁があったんだっけ。
確か王都祭の決勝戦で戦って、その時はフィストが負けたとか。
私が出会った後も、私が指名手配で追いかけられて、捕まって拷問されてたし、そりゃ苦手意識あるわな。
「じゃあ私は忙しいので、後は任せましたよ」
そう言うとアイディールさんは再び指示作業に戻ってしまった。
これ以上時間を取らせるのも申し訳ないし、さっさとここを離れることにしよう。
青い服を着た治安委員さんの案内で、フリジディ王女の下へと向かう。
現在フリジディ王女は最上級兵士全員を倒した後、力を使い果たして寝ているようだ。
その話を聞いたキハーノさんが「最上級兵士を全員……? どんな化け物だ」と驚いていたが、私も改めて彼女の恐ろしさを感じる。
私も決して油断していたわけでは無く、本気で戦って負けたのだ。
それを倒してしまうだなんて、やはりフリジディ王女の力は凄まじいと言わざるをえない。
「こちらです」
案内された部屋は、武骨な砦の中でありながらも、その扉だけ美しい装飾が施された、他とは明らかに格の違う扱いの部屋だった。
治安委員さんが手元の機器を使って扉を開けると、自らは部屋に入らず、私達に入るように促した。
「私が案内出来るのはここまでです。では、失礼します」




