通信
ゼロに捕まった時点で通信機は絶対に回収されていると思い込んでいたので、こんな物が胸元に入っているのに気付かなかった。
なんだ? 人のことを拘束しておいて身体検査しなかったのかアイツ。
レディーの身体に触れるのはマズいとでも思ったのだろうか、馬鹿じゃねえの。
いやでも待てよ、逆に罠の可能性もあるか。
使ったらなんか爆発するみたいな感じだったらどうしよう。
スマホもあることが確認出来たが、そちらを使うよりは高機能らしい専用通信機を使う方がまだ可能性があるだろう。
両方とも罠を仕掛けられてるか、アイツが馬鹿紳士なのかどっちかだ。
着陸と同時に、私はペニバーンとロウターを召喚する。
地面に降りると人間からの攻撃だけでなく、近くにいた人工生命体も襲い掛かって来た。
即座にロウターが防壁を張ってくれたが、集中砲火のせいであまり長い間持ちこたえられそうに無い。
ある程度魔力が扱えるフィストやビッケさんも援護してくれているが、圧倒的物量差といった感じである。
ただ皆が稼いでくれたその時間によって、私は通信機を取り出すことが出来た。
パッと見では変化はないが、果たして本当に使えるか否か。
「それは通信機か!」
中央王都から放たれる弾丸をその手で弾き返すという離れ業を行っているキハーノさんが、通信機を持っている私に気付いた。
彼女は作戦会議の時に私が持っているこの通信機を見た事があるのだ。
「ゼロに回収されていなかったのか」
「うん、でも罠かもしれなくて」
「貸せ!」
そう言ってキハーノさんは私の手から通信機を奪い取ると、迷わずにボタンを押した。
確かにキハーノさんなら、それこそ辺り一帯を灰燼に帰す威力の爆弾とかでもない限りは大丈夫だと判断しての行動だとは思うのだが、それにしても一切躊躇無いのは凄いな。
問題なく通信機は起動し、一拍置いた後にアイディールさんへと繋がった。
『テンジョウイン!? 生きていたのですか!』
「空飛ぶ戦艦から今脱出したとこ! 敵には囲まれてるし、そっちからも攻撃受けるから結構やばい」
私との通話が繋がったことに、アイディールさんはかなり驚いた様子だったが、私の状況を悟ってくれたのか、すぐに「中央王都側の景色を見ろ」と指示を出してくれた。
言われた通りに視線をそちらに向けると、大きな砦から空に向かって一筋の野太い光線が放たれた。
『今撃った光線が見えましたか!? その場所にどうにかして来なさい。救助に行くのは不可能です!』
「わかった、ありがと!」
アイディールさんとの通信を切り、この場から脱出しようと顔を上げたが、ロウターが張ってくれた防壁にひびが入ったのが見えた。
そして同時に、私の目の前に緑色の光が弾けた。
誤字報告機能による誤字報告を初めて頂きました。
非常に恥ずかしいですが、本当に助かります。
ありがとうございました。
返信機能が無かったので、この場に代わって御礼申し上げます。




