清宮姫子編 その15
そういえばこの世界に来てから、浴槽に浸かったことはあまりないですね。
一応ホテルやビッケさんの家でシャワーを浴びることはありましたが、基本的にはぎどらちゃんの魔法でどうにかしてしまうことが多いです。
いや、本当にあの魔法便利でして、今回もティーエスさんに誘われなかったらそれで済ます予定でした。
物凄いスッキリしますし、髪からも謎の良い匂いがするので、本当に入浴要らずなんですよね。
それでもたまにお湯で暖まりたいという時があるので、そういう時だけ湯浴みをしていました。
「ウチのお風呂はね、大浴槽ってほどでは無いんだけど結構大きいよ」
そう言いながら通されたお風呂は、確かに一般の家庭用としてはかなり大きいサイズでしたが、私達のような年齢の子供が二人入ったらそれが限界のようにも見えます。
お風呂に入るのに一番私が気にしているのが、この忌まわしき左目です。
脱衣所で取るべきか否か迷っていたのですが、何かを察してくれたのかティーエスさんは「気になるのなら取らなくてもいいんだよ」と言ってくれたので、そのままにしました。
湯気の立つ浴槽にどこか懐かしさを覚えながら、私は身体を洗おうと渡された手拭いに石鹸を付けると、ティーエスさんが私の肩を軽く指で突きました。
「ねぇねぇ、折角だし、お背中私に流させて?」
なんというか、この人本当に距離近いですよね。
一度出会った人は親友って感じなんですかね? 正直今日会ったばかりの人と一緒にお風呂入るって凄いですよね。
正直最初はぎどらちゃんがいるからと断ったのですが、物凄い悲しそうな顔と共にしょぼくれられたので思わず諦めて了承してしまいました。
しかし、ここまで来たのですからもう私は諦めて大人しく背中を流してもらうことにしました。
「ヒメコちゃんってさ、好きな人とかいるの?」
あー、恋バナですか。
まぁ女子二人が揃ったらやることは大体それなんですかね?
正直今までの人生で恋バナなんてしたことありませんが。女子高なので出会いも発生しませんし。
好きな人と言われて、パッと天上院様の顔がすぐに思い付くのが本当に辛いですね。
いつになったら忘れることが出来るのでしょうか。
というかティーエスさんって確か、あのアレックス? とかいう方と付き合ってるんでしたよね。
うわー、私が絶対弱い立場になるの確定じゃないですか、辛すぎるでしょコレ。
一緒にお風呂へ入ると言ったのを軽く後悔し始めた私ですが、どう答えようか迷っていると、ティーエスさんの方から口を開き始めました。
「私が大好きなアレックスはね、恋人であり、友達であり、先生なんだ」




