清宮姫子編 その8
光が収まると、私は三面六臂の鬼神へと姿を変えています。
この時私の意識はどうなっているかと言いますと、私が見ている景色は一つだけです。
というのも私と身武一体をしているのは、ぎどらちゃんの中でもペロちゃんと呼んでいる真ん中の顔の子のようで、他のポチちゃんとタマちゃんが左右二つの顔を担当してくれているようです。
普段から三つの首を統率しているペロちゃんが、他二匹の情報を処理して私に伝えてくれるので、私は普段と殆ど変わらない気分で戦うことが出来ます。
岩徹しというのは本当に不思議な刀で、いつの間にか4つの刀に分裂して私の腕に収まっています。
現在私の腕は6本、その内の4つが分裂した岩徹しを持っているわけですから、残りの腕は2本。
その残った腕はメガロドンを拘束するためのグレイプニルを召喚する為に使います。
2本のグレイプニルを召喚して放つと、特に問題なく鎖はメガロドンを捕らえました。
しかしここからが問題で、メガロドンを捕らえたのは良かったのですが、海を縦横無尽に泳ぎ回るせいで、私は海中を引き回しにされることになりました。
完全にロデオです。どうしてくれましょうか。
しかも本当に面倒なのは、私の腰に括り着いている安全ロープの存在でして、ある程度までは伸びてくれるのですが、一定以上引き延ばされると完全に自由が効かなくなります。
なので安全ロープの移動可能範囲外までメガロドンに逃げられると、グレイプニルで拘束している意味がほぼなくなってしまうのです。
いっそこのままメガロドンがどこぞへ逃げてくれればそれでいいのですが、どうも一度狙った獲物は逃がさないという執着力のある子のようで、ある程度までは逃げてもグレイプニルの拘束が緩くなったと感じた途端に戻ってきて非常に面倒です。
何度もそのやり取りを繰り返す間にメガロドンも学んできたようで、範囲外からいきなり猛スピードで突撃してくるといった攻撃をしてくるようになりました。
持久戦に持ち込まれると、まだ慣れたとは決して言う事が出来ない身武一体の維持も厳しくなってきますし、この間に他の敵に潜水艦が襲われては話になりません。
私は次にメガロドンが突撃してくるタイミングを見極める為、グレイプニルから伝わる振動に意識を集中させました。
どこまでも張り詰めて伸びるグレイプニルが、一瞬緩くなる。
間違いなく距離を置いたメガロドンがこちらに突撃を開始した証です。
私は鎖が示すメガロドンのいる方向に四つの刃を構え、戦いを終わらせる一手を指しました。




