パンサさん
「しまった! あれだけゼロが隙を晒していたのだから、不意を打てばよかった!」
「駄目です、リーダー」
フィストが登場したことにより、我に返ったキハーノさんが悔しそうに言った後、ゼロの後を追おうとしたが、パンサさんに引き留められた。
「何故だ! 絶好のチャンスなのだぞ!?」
「確かに今、ゼロを倒すのは容易かもしれません、しかし物事には順序があります」
順序?
なんだろう、別にあの化け物を始末出来るのならしてしまった方がいいと思うのだが。
「中央王都のトップであるリリー・エクストとゼロは、この戦いの共犯者です。もしその片方が計画途中で潰れたとしたら、もう一人が予測不能な行動に出る可能性があります」
エクスト王とゼロが共犯。
まぁ、言われてみれば確かにそうだろう。
どちらもユグドラシルのお婆さんが言ってた通りであれば『世界の六柱』とかいうメンバーの一員だし、あまり記憶が定かではないが、ゼロ本人が自白していた。
確か、次はフリジディ王女だとか言っていた気がする。
「ならば、どうすればいいのだ」
「他の英雄……いえ、まずは中央王都のフリジディ王女と合流しましょう。つまり、すぐにここを脱出するのです」
なんだろう、少し引っ掛かってはいたのだが、このパンサという子は少し怪しい。
なんというか、詳し過ぎるのだ。
今少し口走りそうになったが、英雄という単語は間違いなくフィストやキハーノさんを示す『七色の英雄』を指すのだろう。
さっきもエクスト王とゼロの関係について明言していたし、情報通と言うにしては少し知り過ぎている。
「ねぇ、パンサさん」
「なんでしょう、ヤコさん。計画にご不満がありますか?」
「いや、別にそれは構わないんだけどさ……少し貴女、怪しくない?」
今それを指摘すべきかどうかは分からない。
しかも若干まだ頭がクラクラするせいか、曖昧かつ直球過ぎる質問になってしまった。
藪蛇である可能性もある。
だが、聞いておいた上で判断がしたい。
ここでパンサさんが敵であることが判明し、ゼロ達と繋がっていたとしたら、追い払ったはずのゼロが呼び戻されて絶望的な状況にもなりうるかもしれない。
そんな私の質問に、パンサさんは少し考えるような間を開けた後、ゆっくりとその口を開いた。
「分かりました。ではまずここを脱出し、中央王都にてフリジディ王女と合流が出来たらお話しましょう。それではいけませんか?」
「……了解、悪くない話であることを祈ってるよ」
「大丈夫です。決して貴方達にとって損になる話ではないはずですよ」
パンサさんを疑ったことによって、キハーノさんから若干睨まれた気がする。
いや、でもここは流石にハッキリしとくべきだと思うんだよね。
悪く思わないで欲しい。
パンサさんの意見によって私達は、ひとまずここから脱出することにした。




