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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
最終章 第二次中央戦争編
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フィストの閃き

 ビッケと合流した私は、すぐに店を出た。

 王都には既に臨戦態勢とも言うべき緊張した雰囲気が流れている。

 魔王の足止めとして、渾身の置き土産を用意したつもりではあるが、それでいつまで抑えることが出来るかは分からない。

 それほどまでに、私にとって魔王というのは強力なのだ。

 先程ビッケに診断してもらったから、ある程度の安心はしているが、今この時に見ている景色だって、彼女によって見せられた幻覚であり、本当の私は既に魔大陸で捕らえられているのかもしれない。


 いや、もしもの話をしたって仕方がない。

 私が、本当に助かっているという前提で、ここから先は行動しよう。


「ねぇ、あれ……」


 ビッケが、少し怯えたような声で何かを指差した。

 彼女の指し示す方を見上げれば、そこには空を覆い隠すように広がる巨大な戦艦。

 太陽を遮るかのように浮かぶその黒い塊は、人の根源的な恐怖心を呼び起こさせる。


「戦艦トレボール、か」


 ここに来る途中で、道行く人々が何人も口にしていた。

 荷物を纏めて、必死の形相で王都から逃げていく人達。

 彼らは口を揃えて言うのだ。


『トレボールがやってきた』


 トレボール。

 その名前を私は知っている。

 ヤコが、私と連絡が取れなくなる直前に訪れていた国の名前だ。

 その国に入って暫くしてから、彼女との連絡は一切途絶えた。

 嫌な予感のした私は、お師匠様……魔王・サタンに、修行の一時的な休止を願い出た。

 だがその許可は下りず、寧ろ魔大陸からの出国を禁じられることとなる。


 不審に思った私は、彼女の言いつけに背いて、その日の内に荷物を纏めて魔大陸を離れた。

 すぐさま大量の魔物に後を追われたが、サタン以外の魔物など、子供の頃からモノの数ではない。

 昔に魔大陸から逃げ出した時の様に、今回も軽く追い払ってやろう。

 そう思って追手の魔物に振り返った時、私は驚いた。


『すまんのう。命令なのじゃ、決して逃がさんぞ』


 大量の魔物の中に、一際、いや圧倒的な力を持つ存在が一人。

 あの魔王が直々に、私を追って来ていたのだ。

 本来彼女は、王であるが故に、基本的なことは部下へと指示をして、魔大陸の中央に君臨している。

 だがその彼女が直接私を追う者として現れたのだ。


 只事ではない。

 ここで捕まってしまえば、私にとって決して受け入れることの出来ない運命が訪れる。

 そう確信した私は、全力で彼女へと幻術を掛けた。

 

 今逃げるだけでは話にならない。

 いずれサタンは再び私を追って来る。

 だから、その未来への幻術も。


 結果はどうなっているかは分からない。

 咄嗟に閃いた事だったし、サタンには見破られるかもしれない。

 だが、少なくとも手に入れたであろうこの時を使って、出来ることをせねばならない。


「ビッケ、アレに乗り込むわよ」


 ヒントは殆ど無いが、ヤコが音信不通になった国と同じ名前を冠する、あの戦艦に答えがあるはずだ。

 だったら、乗り込んでその謎を暴いてやる。

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