期待
ゼロに掴まった私は、拘束から逃れようと必死に抵抗したが、あまりにも壊れる気配の無いその枷に、やがて諦めた。
結局、私はアイツに傷一つ付けることが出来なかった。
どんなに斬りかかっても弾かれ、銃を放っても涼しい顔でいなされた。
化け物。
奴を倒すなどと不可能だ。
鉄の壁に向かって赤ん坊が殴り掛かるようなものだ。
勝てっこない。
自分への言い訳を並べ、失意に暮れていた。
そんな私へ、一筋の光が差した。
「お待たせしました。リーダー」
ゼロによって閉ざされていた扉が開かれ、一人の少女が姿を現す。
暗かった部屋の明かりが灯り、私を拘束していた枷は自動で外れた。
「怖い思いをしたようですね、もう大丈夫ですよ」
助け出してくれた少女、パンサは地面に崩れ落ちた私へ手を刺し伸ばす。
その美しく白い手を見て、私は迷った。
ここから逃げて、どうする?
どうせすぐにゼロに捕まって終わりだ。
私はきっと恐ろしい目に合うだろうが、きっとパンサだけなら誤魔化せるかもしれない。
だったら逃げようなんてするよりも、大人しく捕まっていた方が。
しかしパンサは、そんな私の思考をまるで読み取ったかのように微笑んで、私の頭を撫でた。
「リーダー。諦めたら、絶対に目標は達成出来ません」
「でも、やっても無理だ。勝てっこないよ、あんなヤツ」
「勝てますよ、絶対に勝てます。無駄な努力は、大きな成功を呼ぶんです」
そう言うとパンサは、怖がる私を抱きしめる。
人肌をイメージして加工されたシリコンに、温かさなどは感じない。
だが、何故か私の心の闇を晴らすような、強い力が伝わって来た。
「リーダーは、絶対にゼロに勝てます」
こんな私でも勝てるんだろうか? 根拠の無い自信で行動し、皆を危険な目に合わせてしまった私が。
こんな私にも出来ることがあるんだろうか? 皆に迷惑ばかりかけて、全く成長出来ていない私が。
「いいですか? よく聞いてください。私は貴女に」
こんな私に、期待してくれる人なんているんだろうか?
「期待してます」
こんな私を、頼ってくれる人なんているんだろうか?
「頼りにしてますよ、リーダー」
強い力が、私の心を満たす。
みなぎってくるエネルギーは、私の弱気な感情を消去する。
失った自信は再起動され、新しい自分が更新される。
私は戦わなければならない、そして勝たねばならない。
出来ないなら出来るようにする。不可能なら可能にしてやる。
そうだ。信じてくれる人がいるんだ、期待してくれる人がいるんだ、頼りにしてくれる人がいるんだ。
例えそれが一人でも。
私を応援してくれる人がいるんだ。
前を見ろ、チャンスはいつでも手を差し出している。
「ならば立たねばならない」
私は今度こそ差し出されたパンサの手を力強く握り返し、立ち上がった。
そして開かれたドアに向かって走り、自分を閉じ込める部屋から飛び出した。




