防御は最大の攻撃
トレボールサイドの切り札とも言える最上級兵士を、フリジディ王女が触れただけで破壊された。
その一角が破壊されたことにより、封印の紋章を保つことが出来なくなった最上級兵士達は、すぐに陣形を解いて、フリジディ王女を警戒する態勢を取った。
「ビックリしたでしょ?」
頭を破壊し、動作不能となった最上級兵士をフリジディ王女は蹴り倒す。
「簡単よ。頭の中にちっちゃな盾を召喚してあげただけ」
身武一体を行うと、通常時よりも技のレパートリーが増える。
フリジディ王女の場合も同じだ。
単純に防御力が底上げされるのに加えて、その操作力も跳ね上がる。
精密な計算を行っている最上級兵士の頭脳に触れ、その中に盾を召喚。
最上級兵士といえど、堅固な表面ではなく、それに守られているはずの中身に直接的なダメージを与えられてしまえば、防ぐ事など出来はしない。
「普通はこんなことしないんだけどね。可愛い子が台無しになっちゃうし」
危険と判断した最上級兵士達は、フリジディ王女から距離を取る。
しかしそんなことは許さないとばかりに、彼女は更に力を行使する。
「貴方達だけはスクラップにしてあげるわ」
彼女が両の掌を前に突き出すと、五体の最上級兵士達は六面体の盾に包まれた。
その破壊力にモノを言わせて無理矢理破壊しようとする最上級兵士達だが、フリジディ王女の盾には傷一つ付くことは無い。
フリジディ王女が掌を思いっ切り握るとその六面体の盾は収縮を始めた。
鉄が砕けるような破壊音と共に、盾はどこまでも小さくなっていく。
やがてフリジディ王女の拳程に小さくなり、漸くその収縮が止まった。
収縮が止まると盾は姿を消し、サイコロのように綺麗な鉄の塊が五つ、地面に落ちる。
「時間ね」
そう言うとフリジディ王女の身武一体は解除され、力を失った王女は身を支えることが出来なくなった。
倒れる彼女を親衛隊の一人が支える。
余りにも強力な『イージスの盾』とその力だが、一つの代償があった。
通常、天上院弥子やアイディール達のように、ある程度の鍛錬を積めば、身武一体の時間は伸びる。
だがイージスの盾は、それすらも防いでしまうとでも言うのか、『3分』という最初の制限時間から決して伸びることは無い。
よってフリジディ王女はこうして最上級兵士全員が彼女の傍に揃う機会を伺っていたのだ。
「後は責任取りなさい。アイディール」
そう言うと力を使い果たしたフリジディ王女は、そのまま目を閉じた。




