フリジディ王女の真骨頂
劣勢へと傾く王国軍。
その最前線を一人で支えるフリジディ王女。
無数の上級兵士と下級兵士が襲い掛かるが、かすり傷一つ負わせることが出来ずに彼女の盾で攻撃は防がれ、周囲を護衛する直属の精鋭によって砕かれる。
他の全戦線が後退している中、未だに一歩も引くこと無く孤立奮闘している。
本来、普通であれば隊を周囲と合わせて後退させるのが正しい選択であるが、フリジディ王女の隊は一切引くことを許されない。
国家防衛の要である彼女が退いたという事実は、軍全体の士気に関わる。
引いたところで背後には自らの故郷である王都しかなく、そこで追い詰められるくらいならば一歩も引かない。
フリジディ王女の判断の下、彼女の隊は一歩も引かず、勇敢に戦い続けた。
数々の戦場で武功を上げ、その最前線を維持し続けた『不貫の王女』は、国の防衛でもその絶対性を失うことは無かった。
だが当然、トレボール軍にとってはそんな隊を許すわけにもいかない。
彼女の隊によって士気が保たれているというのであれば、それを潰せは勝敗は決したも同然。
その判断の下、トレボールは全力の集中砲火を行うことに決定した。
「へぇ。赤い羽虫がいっぱい来たじゃない」
フリジディ王女の隊を囲む、六体の最上級兵士。
戦場の死神として一体一体が無双の活躍をしていたその化け物が、雁首を揃えて王都軍の心臓を仕留めに来たのだ。
王女の舞台に負傷者は一人もいない。
味方に降り注ぐ全ての攻撃を、王女が盾によって防いでいるからだ。
だが、最上級兵士達の攻撃は他の人口生命体の比では無い。
最上級兵士全員が両手を広げ、青い閃光を撒き散らす。
そして組み上がっていく封印の紋章。
防御力は圧倒的に高いものの、敏捷力があるわけではないフリジディ王女の隊は、成す術無くその光の檻に囚われてしまった。
「なぁんだ。結局考えることって、機械も人も同じなのね」
フリジディ王女は、完成した封印の結界の中、嘲笑うように人形達を睥睨する。
「スキル封印の陣を組まれた程度で負けてたら、私は今頃死んでるわよ」
そう呟くと、フリジディ王女の身体が激しく輝きだす。
光が収まると、『イージスの盾』と身武一体を為したフリジディ王女の姿が現れた。
「いい? よく聞きなさい鉄屑共。私のイージスは、スキル封印ですら防ぐのよ」
そう言うとフリジディ王女は、最上級兵士の一人に近付き、その頭を掴む。
「そして私が力を解放すれば、こんなことだって出来るのよ」
フリジディ王女に頭を掴まれた最上級兵士の頭が爆発した。




