君臨する者達
ゼロの昔話は、その後も続いた。
「私自身も今はこうして機械の身体に魂を宿しているが、元は人間なのだよ」
彼らのリーダー、つまりこの世に争いを齎そうと考えた存在は、不思議な力で生物の魂を全く別の器に入れ替えるという力を持っていた。
元々不老不死の研究をしていたゼロに目を付けたその人物は、彼にこう提案する。
『機械仕掛けの身体が欲しくはない? 永遠に老いることの無い身体が』
ボクが協力してあげるよ。
そう言ってゼロの魂を、現在の身体へと注入した。
彼はその知的好奇心を満たし続けること可能な時間を手に入れ、際限なく研究を重ねた。
代わりにその人物へと忠誠を誓い、命令された指令を忠実に守った。
「中央王都と威嚇状態になれ、というのもマスターからの命令だった」
ゼロがマスターと呼ぶその人物は、他の5人とも協力して世界を争いに巻き込んだ。
そうして自分達によって都合の良い支配体制を200年かけて作り上げ、今に至る。
「あぁ、中央王都で思い出した。エクストという外道をな」
中央王都で君臨するエクスト王。
マスターは6人の中で最も、自らの考えに近かった存在を最重要地域の支配者に任命した。
「お前は知っているか? あの男の残虐さを」
私にとって、彼は何かと道中のサポートをしてくれた存在だった。
古代森林やトレボールに移動する時も彼の支援に大きく助けられたし、フリジディ王女によって指名手配された時、積極的に動いてくれたのも彼だった。
「あいつは他の協力者達と異なり、人間の身体で生きている以上は必ず老いが来る」
協力者達。つまり機械の身体を持つゼロなどは、肉体というものが無いために衰えはしない。
他にも人間とは比較にならない寿命を持つ者や、精神体となって肉体を持たない者などがいるが、エクストだけは正真正銘の人間である。
その為、200年も生きて居られるはずがない。
「確か、4人目だったか? 自らの子孫と魂を入れ替え、延命し続けているのだよ」
エクストは妻と一人だけ子を為すと、その子供が女であろうと男であろうと次の王位継承者に任命。
そして自らの身体が衰えると、マスターの手によって子供と自らの魂を入れ替える。
こうすることにより、200年もの間、人間の王者として君臨し続けた。
入れ替えられた子供がどうなるかなど、もはや言うまでも無い。
「今世は男だったが、来世は……そう、確かフリジディとかいう女だったかな」
次回の更新は8/11となります。




