茨の国の姫
悪夢の始まりは、大きな地震からだった。
突然の揺れに調度品は全て床に落ちて割れ、潰されないように避難するのが精一杯だった。
元々修繕中だった我が国の城は崩れ、臣下達の懸命な助力によってどうにか外へと出ることが出来た。
「ピア王女、問題はありませぬか」
「えぇ、私は大丈夫です」
目の前で完全に崩れ落ちている城を見て、私は思わず頭を抱えます。
現状、国の予算の殆どを中央王都との取引で賄っている我が国としては、城を建て直す程の財力はもうありません。
それこそ修繕ですら、お金が足りなくて後回しにしていたほどです。
最早こうなっては城の建て直しは諦めるしかないでしょう。
幸い執務は机と椅子さえあれば何処でも出来ます。
一番の問題は民間の被害です。
ラポシン王国の中でもかなり頑丈な造りをしている王城がこの有様なのです。
国全体の被害を考えると、最早立ち直れるかどうかが心配になってきます。
「ピ、ピア王女様」
「言いたいことは分かるわ……分かってるから言わないで頂戴」
「い、いえ。そうではなく」
今後の国の方針をどのようにすべきか。
中央王都からの借りをこれ以上増やすことになってしまうのか。
そもそも、力を貸してくれるのか。
そんな勘定を頭の中で必死に考えている私から、大臣は怯えた顔で離れる。
確かに重大過ぎる苦難を前に悩んではいるが、そんな恐ろしい顔をしているだろうか。
「ピア王女様。う、うしろを」
「え?」
言われて振り向くと、天空へと聳える大木がそこにはあった。
いや、違う。
確かに『ソレ』を構成しているのは、間違いなく樹木であったが、私の知る常識の中で存在し得ないような存在。
後方で崩れている元ラポシン王城よりも巨大な図体に、一たび振るえば辺り一帯を潰せるであろう巨大な手足。
あまりに巨大な樹木の化け物が、私達を見下ろしていた。
「嘘、でしょ?」
化け物はその両腕を空高く上げると、背中から恐ろしく太い茨を噴き出した。
気付けば王国は茨の檻に囚われ、逃げることが不可能になってしまった。
人間の逃げ場を塞いだ化け物は、その大きな口を歪めて……嗤ったように、私には見えた。
そしてその腕を振り上げ




