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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第五章 人口生命体のキハーノ
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作戦だけど始まったけどヴィエラさんとだけど

 日は大空の真上に上り、黒一色のトレボールを照り付ける。

 普段は与えられた各々の役割を全うする人口生命体達が、中央の巨大モニターに身体を向けて整列。

 そしてそのモニターの下、トレボールで最も巨大な建造物『機城』のバルコニー。


 短き黒の髪の毛と、人並みの身の丈。

 帝王という些か質素とも言える黒一色の服装。

 その眼に色は無く、映る世界にはが見えているのか。


 機械帝・ゼロ。

 最後の『世界の柱』であり、原初の人口生命体にして、彼らの王。

 付き添う意志無き人形二人に導かれ、建国以来初めてその姿を晒した。


 姿を見た事が無いにも関わらず彼を護衛し続けた最上級及び上級兵士100名。

 城の庭に並んだ彼らを睥睨すると、馬鹿にしたように鼻を鳴らして空を見上げる。


「物語の終幕が始まる」


 この世界の終わりを告げて。


「喜劇が終わり、悲劇が始まる」


 笑い声は叫び声に。


「そして私は幸せを握り締める」


 呟いたゼロの頭上に、影が舞い降りた。



◇◆◇



「皆、持ち場には付いたか?」


 正午5分前。

 機城にて演説が始まる直前。

 キハーノさんから伝わる音声に、全員の緊張が増すのが分かった。


『ヤコさんに、直接バルコニーに乗り込んで上級兵士全員を相手取ってもらいましょう』


 パンサさんから提案されたその作戦とも言えないような無茶ぶりは、当然全員から反対された。

 戦力差があまりにも酷過ぎる。

 確かに私はトレボールへと入国する際、下級兵士の攻撃を一人で捌いていた。

 しかし上級兵士の攻撃は彼らとは比べものにならず、一人ひとりが国家戦力に直結する破壊力を所持。

 さらにその格上である最上級兵士という戦闘のみに特化された最新の人口生命体は、彼らだけでトレボールに敵対した国家を完全に殲滅したと言われる。

 そんな最上級兵士5体の下に、19名の上級兵士が5組。

 計100体の大戦力を、私一人で。


 さらに、それを行えばキハーノさんが目的としていた「人口生命体による革命」が成立しない。

 私が直接トレボールに乗り込み、戦ったという明確な事実が残る。


『戦う必要はありません、注目を集めてくれれば良いのです』


 この作戦は奇襲。

 ゼロの首を、メンバーの誰か一人が落とせば勝ち。

 上級兵士達と戦うことは、勝利条件と関係が無い。


『全てが監視されたトレボールに立ち入れば、その瞬間から高機能センサーによって発見されます』


 トレボールの技術は非常に高い。

 それこそ、目に見えない生体反応を感知するセンサーが隅々にまで存在するくらいに。


『だから、全員でヤコさんと同じ生体反応を発しながら逃げましょう』


「いくぞ……3,2,1」


 キハーノさんのカウントダウンを息をひそめて待つ。

 私がいるのは機城に最も近いマンホールの下。

 他にも色んな地点から私と同じ生体反応とやらを出しながら、キハーノさんの仲間達が飛び出して攪乱する予定だ。


「0!」


 その声と共に、キハーノさんの仲間達が飛び出す。

 たちまち地上では大騒ぎである。

 私の役目はこの後、攪乱によって手薄になった機城に乗り込み、上級兵士達の挑発だ。


 司令塔であるキハーノさんに、各自の情報は逐次報告される。

 そして下級兵士では対処出来なくなった頃合を見計らって、私に指示が来るのだ。


「今だヤコ、やってくれ!」


 当初の予定よりも早い指示だ。

 偵察の時点で、トレボール全国民が敵に回る可能性があることの予想が付いた。

 下級兵士や一般人とはいえ、あまりにも大きな戦力差に予定が繰り上がったのだろう。

 これではあまり攪乱の方も成功しているかは怪しいが、かといって私が登場しなければ作戦が動きもしない。


『上級兵士達の挑発か、どうしよう』

『おや、何を言っているのですかテンジョウイン』


 肝心な上級兵士達の挑発だが、その助言は以外にもアイディールさんからの発案だった。


『貴女はその道のプロでしょう』


 そんな言葉により超特急で用意することになった現在の私の服。

 キハーノさんの研究室から適当に使えそうな布と資材を頂き、一回限りの使いきりで作り上げた。

 私のセンスと直感でエクセレントに作り上げた新作、どうぞお楽しみください。


 その新作を用いてマンホールからスーパーマンのように空高く飛び出し、地上を眺める。

 周囲には人ひとりおらず、どうやら皆の攪乱がかなり成功しているようだ。

 正直この目で確かめるまで不安ではあったものの、こうして完璧な状況を作り上げてくれたキハーノさん達の連携と手腕は素晴らしいと思う。


 であれば、私としても期待された仕事をこなさねばならない。

 私は背後に聳える機城に振り返り、上空から城の敷地内を見下ろす。

 ズラリと並んだ他の人口生命体よりも豪奢な服に身を包んだ集団。

 間違いなくアレが上級兵士達なのだろう。

 バルコニーに目を向けると、黒いスーツに身を包んだ誰かがじっとこちらを見つめていた。


「遂に来たか、この時が」


 本来なら聞こえないはずの距離から、その人物が呟いた声がハッキリと聞き取れる。


「我が名はゼロ。マスターの望みと自身の願いを叶える為、この世界を売り飛ばす者だ」


 人から名乗られたのなら、私も名乗り返さねばならない。


「私の名前はラブドール・クイーン。技術大国アダルティからやって来た機装戦士だ!」


 ゼロに見つかった時点で、まず上級兵士達全員の集中砲火が私を襲った。

 しかし現在の私はそれらを余裕を持って避けることが出来る。

 2日前は下級兵士の攻撃といえど防ぐことで手一杯だったが、今となってはその強化版ですら遅く感じる。

 理由としては、身武一体によって身体能力が恐ろしいほどに上がっているからだ。

 今回はロウターとペニバーンだけではない。

 なんとヴィエラさんも含めた4人で身武一体を行っているのだ。



◇◆◇



「ここは、どこですか?」


 作戦開始前、ペニバーンの空間へと移動して身武一体を行おうとした私達は、人数が一人多いことに気付いた。

 辺りを不思議そうに見渡すヴィエラさんと目が合う。


「え、ロウター。なんでヴィエラさんがここにいるの?」

「私にもわからん。だがまぁ、主以外がここにいる為にはある程度の神格が必要だ。それを踏まえれば、ヴィエラ殿には神格が存在するということだろう」


 つまりヴィエラさんにはロウターやペニバーンに通ずるものがあるからこそ、この空間に入ることが出来たのか。

 いや、正直そこはどうでもいい。

 少しでも怪しい行動をすれば浮気を疑ってくるヴィエラさんに、身武一体の現場を見られるのは非常にまずい。

 かくなる上はヴィエラさんを巻き込んでやるしかない。

 ここにいるということは、ヴィエラさんとも身武一体が出来るのだろう。


「えーっとね、これは真・愛の証明なんだよヴィエラさん」

「真・愛の証明?」


 ヴィエラさんは私の人間関係に関して少し疑り深いが、一方で私やおばば様の話を素直に信じやすいという面もある。

 大変心苦しいが、おばば様の真似事をするしかない。


「そう、この二人とヴィエラさん、そして私と愛の証明をすることで、その愛は永遠なものになるんだ」

「意味が分かりません」


 そうだね、自分で言っている意味がよくわからないよ。

 おばば様はどうやって意味不明な理論を通したのだろうか。

 取り敢えず口から出てくる言葉に任せよう。


「愛する私とヴィエラさんに加えて第三者と交わるということは、お互いを深く愛していて尚も余裕があるということの証明。つまりそれは二人が愛で足りないところ無く満たされているということなんだ」

「なるほど、つまり共に交わる人数が多くなればなるほど、その愛はより強固であるということですね」


 最高の結果である。


「そう、だから結婚後にこれを継続的に行って、愛を確かめ続けるんだ」

「分かりました。そういうことなら早速始めましょう」


 こうして私はヴィエラさんに、継続的に身武一体をやる理由に加え、仮に人数が増えたとしても違和感の無い理由までもでっち上げることに成功したのである。

 心苦しいはずなのに、どこかで大興奮している自分がいます。


「では、どのようにやればいいのですか?」


 そう質問してくるヴィエラさんに、胸の鼓動が早まるのを感じる。

 やっとですよ。やっとここまで来ましたよ。

 なんかおばば様のせいで本体こと苗木の方にしか行為をすることが出来なかったが、ここに来て急にチャンスが来た。

 だけど焦るな、最初から全力で行って引かれようものなら、次回以降に支障が出る。


「段階を踏んでいくんだけどね、最初だから少し軽めだよ」

「基本的には愛の証明と一緒なのでしょうか?」

「うん、その姿のヴィエラさんとっていう違いはあるけどね」


 そう言いながら軽くペニバーン達に目を向けると、私達は気にするなと言うように手を軽く振られた。

 なんて気遣いの出来る仲間達なんだ。

 後でしっかりやろうね。

 というか最近やっと3Pに慣れてきたのに、更に一人増えてしまった。

 今回は彼女らの計らいにより、ヴィエラさんだけに集中することが出来るが、今後のことも考えるとそちらの練習もしていかねばなるまい。


「愛の証明の時を覚えてる?」

「はい、忘れるはずがありません」

「その時みたいに基本は私がやるから、ヴィエラさんはそれを受け止めて欲しいな」

「わかりました」


 そう言って私はヴィエラさんを抱き寄せると、その髪の毛を軽く撫でる。

 最近は寝る時にしょっちゅう触る機会のある彼女の髪の毛だが、本当に繊細で滑らかな髪の毛だと思う。

 毛の痛みを知らない絹のような髪を一房手に取り、その匂いを嗅ぐ。

 未熟な果実のように爽やかな匂いがするその髪の毛に、私の邪な想いが浄化されてしまいそうになる。

 思わず手が止まったが、この子を犯すと改めて決意し、今度はその首筋に触れた。

 くすぐるように沿わせると、ヴィエラさんの身体が堪えるように震えたのが伝わってくる。

 それを感じた私は、ゆっくりと彼女に唇を近付ける。


 ヴィエラさんと本当の意味でキスをするのは、これが初めてだ。

 彼女にとって、これがファーストキスになるのだろう。

 それを思うと私の心にこの上ない征服感が湧き上がってくる。

 最初のキスは優しく、軽く。と考えていたが、随分と長い間していた気がする。

 どこか油断していたのだろう。経験は私の方が圧倒的だし、ヴィエラさんにそういった知識は無いと思っていたから。


 だから、思いがけず私の唇に触れた彼女の舌に、過剰な反応をしてしまった。


「愛の証明の時、ヤコがこうやってました」

「……あはは、そっか」


 完全に不意打ちだったなぁ。

 驚いている私を見て、ヴィエラさんは悪戯に成功した子供のような笑みを浮かべている。


「なぁ。ペニバーン殿、彼女は私よりも上手くないか?」

「まぁ、ビギナーズラックというものだ。あまり気にするな」


 その後は遠くで話していた二人も呼んで、いつものように楽しむと、私達は光に包まれた。

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