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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第一章 魔族のフィスト
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スマホ買ったけどフィスト可愛いけど祭りあるけど

 朝日が昇り、小鳥たちが囀る。

 眠っていた天上院は突然目をカッと開くと、叫んだ。


「ち○こっこぉおおおおおおおおおおお!」


 妖精顔負けの美声から発せられた小学生以下の下ネタである。


「なに!? 凄い声出してどうしたのヤコ!」

「いや、なんか寝る前にシリアスな回想しちゃって私のキャラが変わりそうだったから軌道修正したの」

「そのまま真面目なキャラになってしまいなさいよ……どんだけ下品な言葉を朝一で叫んでるの……」

「ニワトリっぽくしてみたんだけどダメだったかな」

「全てのニワトリに謝れ」


 なんにせよ天上院弥子、ぐっすり眠って完全復活である。


「今日は王都に行くんだっけ?」

「王都行きの転移陣があるから、ちょっと村で買い物をしたらそれを使っていく予定」

「ほんと便利だねこの世界」


 天上院達はホテルのチェックアウトを済ませた後、村で買い物をし、転移陣がある建物に移動した。転移所というらしい。


「この転移陣っていうのは魔法分野と科学分野どっちの分野なの?」

「座標指定を科学的なアシストで行って、あそこにいる転移案内人が魔力を込めて王都に飛ばしてくれるのよ」

「転移陣があれば車もペガサスもいらないんじゃないかい?」

「車もペガサスも小回りが利くじゃない。乗ると気分もいいから転移陣があっても役目はあるの」

「なるほどね」


 フィストが二人分の料金を転移案内人に支払い、転移所の部屋の中に入ると、二人は転移陣の上に乗った。


「ドキドキするね」

「何回も使ううちになれるわよ」


 転移案内人が巨大な水晶玉のようなものに魔力を込めると、転移陣が光る。

 あたりが突然暗くなったかと思えば、転移陣の外縁からが光が立ち上り、暗闇を光の蔦が交差する。


「異世界だなぁ」


 その幻想的ともいえる光景を見て、天上院は心からそう思った。

 やがて光の蔦が消えて行ったかと思うと、辺りも明るくなり、二人はこの世界最大の都市、中央王都に到着した。

 村の転移所はガラガラだったのに対し、王都の転移所は人が多く、行列ができている。

 辺りを見渡すと、高層ビルが立ち並び、空を小型飛行機のようなものや、魔法の絨毯などが舞っている。天上院のとは違うが、ペガサスに乗っている人までいる。


「すごい所だね」

「さっきのが村っていった意味がわかるでしょ?」

「そうだね。これと比べたら、あそこが村なのは納得だよ」


 うん、想像以上だった

 なんだろう、大型量販店やスーパーがあるからウチは都会だと思ってた田舎者が上京して本当の都会を知った的なサプライズだ。


「とりあえずヤコのスマホの契約をしに行くわよ、あった方が便利でしょ?」

「いいの?」

「この前に情報局でもらった報酬金が結構すごい量なのよ。浪費はいけないけど、スマホを買うくらいなら大したことないしね」


 天上院達はひとまず、王都に異世界のスマホを買いに行くことにした。



スマートフォンの販売店に向かう二人。

 その道中、天上院はあることに気付く。


「なんか王都祭ってチラシがあちこちにあるけど、王都祭ってなに?」

「4年に一度開かれる王都祭、ヤコをここに連れてきた理由の一つよ。中央大陸各地から強者を集めて知や武を競う大会を行うの」

「へぇ、それが近々あるのかい?」

「近々も何も、明日からよ」

「うっわ、だから人がこんなにいるのか。宿は取れるのかな?」

「昨日のうちに予約しといたの、どうせここには暫くいることになるし」

「おぉ、用意周到だね」


 そう話しているうちに、二人は販売所に着き、店内に入る。

 中には無機質な表情の女が一人、受付で座っていた。

 それもそのはず、彼女はAI、販売用ロボットである。


「いらっしゃいませ、ご注文は何ですか?」

「スマートフォンを一つ」

「新規購入ですか、再購入ですか?」

「新規購入」

「お支払いはカードですか、キャッシュですか」

「キャッシュ」

「かしこまりました、しばらくお待ちください」


 そう言ってロボットは右手で手元の機械を操る。


「すごいね、今は販売もロボットなんだ」

「当り前でしょう? 人を使ったらコストが高いじゃない。高級店でしか人間の店員なんていないわよ。」


 地球でも技術が進んだらこうなっていたのかな。

 天上院は待ち時間、そんなことをぼんやりと考えていた。


「準備が完了しました、生体認証を行いますので、この機械に人差し指を当ててください」


 言われるままに天上院は人差し指を機械に当てる。


「認証完了しました。貴方の生体データを我が社で登録します、契約内容をご確認なさった後、確認のボタンを押してください」

「これは?」

「スマホはその人の生体情報を利用して通話などの機能が使えるようになるの。これはその生体情報をスマホの販売会社、及びスマホに登録しますってこと。一応契約内容を確認した方がいいわよ」

「なるほど」


 天上院は契約をしっかり読んだ後、確認ボタンを押した。

 天上院はこういう契約情報をしっかり全て確認するタイプの女だった。


「ありがとうございます、では、スマートフォンの製作をします。しばらくお待ちください」

「今スマホを作ってるのかい?」

「まさか、ヤコの情報をスマホに書き込んでるだけよ」


 2,3分後、女性の後ろの扉が開き、中から一つのスマホを持ったアームが出てきた


「完成いたしました。そちらの機械にて表示された金額をお支払いください」


 フィストが指し示された機械を操作してお金を入れる。


「お支払いの確認が出来ました、こちらがご注文のスマートフォンでございます、お受け取りください」

「ほらヤコ、受け取って」

「ありがと」

「貴女が稼いだお金だもの、私に礼を言う必要はないわ」

「それでも、ありがとう」


 天上院はロボットの手からスマホを受け取る。

 自分のスマホを買ったのはこれで二度目だ。

 天上院が買った二つ目のスマホは、一つ目の物よりだいぶ進化したスマホだった。



「じゃ、早速私のメアドと電話番号を交換しましょ」

「どうやればいいんだい?」

「やり方はいくつかあるけど、こうやって相手が目の前にいるときは、スマホとスマホをこうやってくっつけて……」


 そういうとフィストは天上院からスマホを受け取り、スマホの背面同士をくっつけた。


「出てきた登録確認画面にOKを押すだけよ」

「なるほど、簡単だね」


 天上院は「フィスト・ラインの情報を登録しますか?」という確認画面にOKを押す。

 何気に初めてフィストの本名を知った天上院だった。


「フィスト・ラインっていうのがフィストの本名なんだ」

「あれ、言ってなかったっけ?」

「言われてないよ~」


 出会いが出会いだから仕方がないのかもしれない。


「うっかりしてたわ、まぁ今迄通りフィストって呼んで、ヤコ」

「そっちに私はどんな名前で登録されてるの?」

「ヤコ・テンジョウインよ」

「へぇ、どうやって私の名前が天上院弥子ってわかったんだろう」

「科学分野には詳しくないからそこまでわからないわ」

「科学って凄いね」


 スマホを購入した天上院はフィストに使い方を説明されながら王都の予約した宿屋に向かったが、その道中が大変だった。主にフィストが。


「やぁ、そこの可愛らしいお嬢さん、今貴女に少し時間はあるかい?私に王都でお勧めのカフェを教えてほしいのだけれど」

「やぁ、そこの美しいお姉さん、今貴女にお時間はありますか?私に王都でお勧めなカフェを教えてほしいのですが」


 などと言って天上院が道行く女性を口説くからだ。

 フィストが追いかけて天上院を女性から引き離すのが大変だった。


「せめて安定した生活ができるようになるまでは大人しくしてなさいよね!」

「も~、嫉妬しちゃって可愛いなフィストちゃんは」

「もう一回ブッ刺すわよ!?」

「フィストに刺されるというのなら……たまにはネコに回ってみるのもいいかもしれない」

「何を言ってんのあんたは!?」


 ツッコミが止まらないフィストだった。


「まったく……ほら、宿屋に着いたわよ、今夜は私がお勧めな王都のディナーを奢ってあげるから、それで我慢しなさい」

「さりげなくデートのお誘いをしていくぅ~」

「怒るわよ!?」

「もう、独占欲が強いんだからっ!」

「……」

「『私しか見れないようにしてあげる』」


 天上院がキリッとした顔で言うと、フィストは不機嫌そうな顔から一転、物凄くいい笑顔になった。


「よしわかったわ、もう二度とヤコと喋ってあげない」

「本当にすみませんでした許してください」


 なんだかんだ言って天上院はフィストに頭が上がらない。

 宿に荷物を置いた二人は、今夜の食事をするべく、フィストおすすめのレストランに行くのであった。



「フィスト、王都のことをいくつか聞いてもいいかな?」

「ん、いいわよ。何が知りたいの?」


 レストランに行く道中、天上院はフィストにいくつかこの世界について再び質問をすることにした。


「なんでこの国は王政なの?」

「この国の王家はね、人々を束ねる最上位の立場であると共に、その血筋がまさに『最強の血筋』なの。人類と魔族というトータルの平均的な強さで見れば魔族のほうがずっと強いけど、人間の王族が強すぎるせいで進行出来ないのよね。だからここは王としてその一族を崇めることで国防としてるのよ」


 どうやら王家というのはとんでもない一族のようだ。本当に人間なのだろうか。


「なぜ王家というのはそんなにも強いんだい?」

「正確な理由はわからないわ。王家が神の恩恵を初代から受け続けているからとか、初代の王が異世界からの転移者だったからとか、さまざまな説があるけど」

「なるほど」


 天上院は未だに自分以外の転生者には会っていない。

 魔術のあるこの世界のことだ。

 ひょっとしたら地球とは違う世界から転生してきた人間だっているだろう。


「王都祭で、優秀な成績を収めれば一族と戦う権利を与えられることだってあるわよ」

「王家と戦うと何かあるのかい?」

「まず名誉。あの王家と戦ったことがある、という事実だけで一生仕事には困らないと思うわ。それと戦った中でも特に王家に気に入られた人は、王家から願いを叶えてもらえるの。王家と結婚したい……とかね」

「ほう」


 これを聞いて、天上院はフィストが自分を王都祭の前日に自分を連れてきた意図がなんとなくわかった。


「因みに、その話はフィストが私を王都に連れてきた理由と関係があるのかい?」

「『不貫の王女』」

「『不貫の王女』?」


 フィストは天上院の目を見て、その名を呟く。おそらくこの大陸において、天上院以外にその名を知らぬ人はいないであろう名前を


「この世界最強の人物、いかなるモノによるいかなる攻撃でも貫けないとされる盾を操り戦う、天下無双の王女」


 さらにフィストは言葉を繋げる。天上院が王都際に参加せずにはいられなくなるであろう言葉を。


「同時に、世界で最も美しいとされる少女。本人が言う婚約の条件は『自分より強い人』」

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