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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第五章 人口生命体のキハーノ
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また王様だけど優しいけど緊張するけど

「ただいま到着いたしました、ご利用ありがとうございます」


 ヴィエラさんとティーブレイクをした私は、そのままラポシン王国の城の屋上へと向かい、用意されていたヘリに乗り込んだ。

 行きと同じ操縦者の方と挨拶を済ませ、そのままヘリは離陸。

 中央王都へ到着し、現在へと至る。

 王座の一室に到着すると、待機していた執事さんに声をかけられた。


「エクスト様がお呼びです。私に付いて来てください」


 うわぁ、呼び出し掛かっちゃったよ。

 こんな小娘と話がしたいとか王様は暇なの?

 いや、ヴィエラさんと会うに当たって色々手配してくれた恩があるし行かせてもらうけどさ。


 執事さんについて行くと、以前も来たゲストルームに招待された。

 そしてまた以前と同じように紅茶とケーキをご馳走になってエクスト王様を待つ。

 しばらくすると、不思議なノック音が聞こえた。


 扉が開き、入室してくる白い服を着た初老の男。

 左右に二人の近衛兵を引き連れ、堂々とした風体である。

 ほかならぬエクスト王だ。

 向かい側の席に腰を降ろすと、私のカチューシャを見てニヤリと笑う。


「目的は達成出来たようじゃな、導き手殿」

「お陰様で、ありがとうございます」


 エクスト王は口ひげをこすって肘掛けにもたれかかると、思案顔で私を見つめてきた。


「それで、次の目的はもう決まったのか?」


 そう尋ねるエクスト王はまるで、もう既に私がトレボールへ向かおうとしているのを知っているかのようだった。

 なんだろう、この人といい古代森林のおばば様といい、まるで私の動向を全て把握しているかのような気持ち悪さを話していて感じる時がある。


「はい、トレボールへ向かうことにしました」


 だが、そんなことを気にしてもしょうがない。

 どちらにせよ私のやるべきことは決まっているのだ。

 別に彼は私の妨害をしてくるわけでもなく、むしろ支援してくれている。

 ならばそれに対して嫌悪感を覚える意味はない。


「ふふふ、トレボールまでは遠いぞ?」

「はい、なるべく公共の移動手段で近付こうかと」


 最終的にはロウターに頼ることになるだろうが、ある程度まではこの世界にある移動手段を使った方が早く近付けるだろう。

 幸いお金は海底都市のウミオーさんから貰ったのがかなり余っている。

 基本的に食事以外にお金が掛からないので減る理由が無いのだ。


「そうか、協力したいところではあるが、トレボールは敵国。直接移動させることは叶わん」


 まぁ、そうだろうなぁ。

 古代森林とここを往復させてくれただけでも御の字なのだ。

 気持ちだけ有り難く頂こう。


「いえ、お気になさらないでください。寧ろ帰りのヘリまで気を使ってくださり、ありがとうございます」

「これからも何かしらの支援が必要な時はいつでも手を貸そう。遠慮なく訪ねてくれ」


 そう言うとエクスト王はゆっくりと立ち上がり、そのまま退室していった。

 話していて疲れる相手だなと、残された私は思った。


 エクスト王が去った後、残された私も部屋から退出しようと入り口に向かおうとすると、執事さんに呼び止められてしまった。


「お待ちくださいませ、テンジョウイン様」

「はい? なんでしょうか」


 私を呼び止めた執事さんは何やら美しい金色の装飾が成された白い手帳のような物を差し出してきた。

 なんだろうこれ、くれるのかな?


「こちらは中央王都の領土内及び関連諸国で使用可能な特別パスになります。提示すれば基本的に全て無料で公共交通機関を使用できる他、様々なサービスを受けることが可能になります」


 何それ凄い、超欲しい。

 お金には困ってないとは言ったけど、別に無料になるのであればそれに越したことはない。

 それと特別なサービスってなんですかね。

 美人なお姉さんが肩揉んでくれたりするんですかね?


「間違いなくテンジョウイン様のお役に立つだろうとお考えになりエクスト様が発行してくださりました。どうぞ」


 あのエクストさんってホントに私を助けてくれるよなぁ。

 ついつい裏があるんじゃないかと疑ってしまうけど、こういう手助けは本当に助かる。

 本当に実利的なもので嫌らしい感じはないし、恩を売ろうと言う押しつけがましさも感じない。

 なんだろう、やり方がイケメンだ。

 お爺さんだけど。


「ありがとうございます。深く感謝しますとエクスト王にお伝えください」

「畏まりました。では、快適な旅をお祈りします」



◇◆◇


「さてと」


 昨日の内にトレボールまでのおおよその経路は組み立ててあったが、このパスを手に入れたことによって更に手段が増えた。

 まずこの世界の交通機関と交通費から説明しよう。


 まず私が何回も利用した転移陣。

 いわゆる瞬間移動を可能とする素晴らしい移動方法だが、これはやはり使用料が高い。

 中央王都内を移動する手段として他にバスなどが上げられるのだが、それの10倍以上の値段がかかる。

 それもそのはずで短距離を移動する為の手段ではなく、フィストと初めて乗った時のようにかなり離れた位置までを移動する為の手段らしい。


 それの更に上位が「ヘリ」である。

 転移陣ですら届かない距離を移動するのに使われるらしく、料金も比例して恐ろしく高い。

 この特別パスでも数種類しか無料では利用が出来ないが、本来であれば使うつもりはなかったという程だ。


 問題なのは中央王都外に出た後である。

 中央王都及びその領土はかなり交通網が発達しているのだが、それ以外は正直脆弱としか言えない。

 ティーエスのいた海底都市やドレッドのエンジュランドには、転移陣など本当に重要な施設にしか存在せず、一般人は殆ど利用することは無い。

 中央王都が発達し過ぎているだけというのもあるのかもしれないが、とにかくまだこの世界もその程度なのだ。


「取り敢えずいけるとこまでは行ってみよ」



◇◆◇



「ヘイヴァーに到着いたしました。またのご利用お待ちしております」


 さて、久しぶりに戻ってきましたヘイヴァー。

 海底都市にもエンジュランドにも繋がっていて、なんだかんだ縁の深い場所だ。

 ここから更に船に乗り換え、大陸間を移動する必要があるらしい。


 まぁ別の行き方もあったのだが、ここに来ればひょっとして知り合いに会えるかもしれないという期待もあった。

 一日で行く必要は無いのだし、今日はここでのんびりしてから次の目的地に向かおうと思う。


「気になる連絡もあるしね」



ペンドラー・ドレッド

 7/11(昨日)

・ヒメコが目覚めたぞ 11:04



 これは昨日の昼頃に送られてきたメッセージなのだが、ドレッドに預けていた姫子ちゃんが目を覚ましたらしい。

 日にちにしておよそ三週間。

 かなり長い間、気を失っていたことになる。

 ちょくちょく確認のメッセージをドレッドに送っていたのだが、今日も目覚める気配は無いとの返信が続く日々だった。


 だが昨日の昼になって、何の前触れもなく目覚めたらしい。

 体調も確認したところ、全く異常は無いそうだ。

 対話も普通に可能らしく、初対面で暴れまわっていた時の印象が嘘のようらしい。



〇私のことは聞いてくれた? 既読 11:06

・暴れてた時の記憶も全てあるらしい。だが、ヤコに近付くのは不安があるってよ。11:23



 その後、いくつかの文章に渡って姫子ちゃんと話した内容をドレッドが詳細に送ってくれた。

 勿論ドレッドは私と姫子ちゃんの間に何があったかなどは知らないため、あくまでドレッドと私が姫子ちゃんを抑えた時の話が中心になるわけだが。



・まず、私達に襲い掛かったのは姫子の本意では無いらしい。

 理由を深く掘り下げて聞こうと思ったが、途端に左目に巻いてる眼帯を押さえて暴れだしたんだ。

 幸い予め本人の希望で手足を拘束してたから事なきを得たんだが、理由までは聞くことが出来なかった。 11:27



 ビッケさんも言ってたなぁ、姫子ちゃんが誰かに操られてるって。

 ドレッドの話からしても、似たような状況に聞こえる。

 だけどなぁ、私がそもそもこの世界に来たのも姫子ちゃんに刺されたからだしなぁ。

 あの時に見た姫子ちゃんの私への殺意が嘘とは思えないし、一概に操られてるからってだけでもなさそうだけど。


 そんなかなりモヤモヤする状態だったので相談の結果、姫子ちゃんを連れてドレッドがヘイヴァ-まで来てくれるそうだ。

 当然姫子ちゃんには本人の了解を取った後、暴れださないように拘束するとのことだ。


 その約束の時間は、間もなくである。

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