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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第五章 人口生命体のキハーノ
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行き方探すけどいい朝だけど美味しいけど

 どうも、天上院弥子です。

 古代森林を追い出された私は取り敢えずラポシン王国へ戻ることにした。

 実質的な交渉人であるアイディールさんと一緒にピア王女と面会。

 古代森林から生きて帰った子供では無い存在は歴史的に初めてだった関係でかなり騒がれたが、現在は犯罪組織を追跡している最中だということで詳しい説明をするのはまた後日になった。


 アイディールさんは仕事熱心なことに、早速中央王都に戻って情報を伝えるらしく、例の「ヘリ」に乗って一足先に帰って行った。

 一方の私はトレボールへ向かうことになったのはいいものの、トレボールへの具体的な道のりはわからないし、かなり疲れも溜まっていたしでラポシン王国の城で一室を借りて休ませてもらうことになった。

 かといってただ休むという訳にもいかない。

 トレボールまでどうやって行くかを模索せねば。


「ロウター」


 城の部屋の一室に頼れる相棒を呼び出し、今後について相談していくことにする。

 私の呼びかけに応えてロウターが青く光る魔法陣から召喚される。


「呼んだか、主」

「うん、明日以降の移動方法についてちょっと相談しようと思ってね」


 どうやら中央王都のエクスト王さんの計らいで帰ろうと思えばラポシン王国から中央王都までのヘリは手配してくれるらしい。

 なのでラポシン王国と中央王都、そしてトレボールの位置を調べて近い方からロウターで移動する予定だ。


「ロウターって私を乗せた状態でどれくらい飛べるの?」

「主程度の軽さであれば三日程度は何の支障もなく飛び続けられるぞ」


 凄いなロウター、そんなにスタミナあるんだ。

 まぁ流石にそんな長時間は私の方が辛いため、基本的に半日かけてロウターで移動、その後どこか途中の国で休憩して再び移動、という形になりそうだ。


 早速スマホを使ってラポシン王国の現在地を調べ、トレボールの位置も検索する。


「あー、結構遠いねぇ」


 参考までにラポシン王国から中央王都までの距離も検索してみたのだが、こっちはこっちでかなり遠い。

 地球で例えるところの日本からアメリカくらいの距離は余裕でありそうだ。

 この距離をあの一瞬で移動するとは、ヘリって乗り物はかなり凄い。

 トレボールはそれよりも遠いのだが、やはりヘリに乗って一度中央王都まで戻る必要がありそうだ。

 中央王都は移動手段も発達しているし、なんにせよ一旦戻る必要があるだろう。


「じゃあ取り敢えず一旦中央王都に戻って、そこから更に公共の移動手段で近付けるだけ近付く。その後はロウターにお願いする形でいい?」

「うむ、理解した」

「よし。じゃあもう今日は寝ようっと」


 古代森林では木を掘った穴倉に直接寝ていた為、久しぶりに横になるベットの柔らかさを堪能しながらその日はそのまま眠りについた。



◇◆◇



 翌朝、目覚めると体の上に少しの重みを感じた。

 しかしそれは不快なものではなく、どちらかというとこう……抱き締めたくなるような柔らかさも兼ね備えている。

 匂いも寝ぼけた頭を優しく起こすような柑橘系の香りだし、私の体よりほんの少し小さいというジャストなサイズ。


「ん……むぅ?」


 この最高レベルの抱き枕は一体なんだと目をこすって確かめると、可愛らしいウサギ柄のパジャマ姿のヴィエラさんだった。

 昨日の夜に私とロウターが相談している間にいなかった彼女。

 実はラポシン王国に着くと「これが人間の街ですか」と言ってどこかへ飛んで行ってしまった。 

 呼び止めようとしたが、カチューシャの移動制限もあるし迷子になることは無いだろうと放っておいた。

 まぁ、町の人は空中をビュンビュン飛ぶヴィエラさんにかなり驚いていたのだが。


「なにしてたの~? 子猫ちゃ~ん?」

「ふに?」


 可愛すぎかよ。

 ヴィエラさんは口元をもにょもにょ動かしながら私にぎゅっと抱き着いてくる。

 朝イチから強力な一撃を食らってしまった私は二度寝を敢行。


「起きろ、主」

「はい……」


 しようと思いましたがロウターに起こされました。

 もう、いけず。

 ヴィエラさんを起こすのは可哀想だったので、そっと上から布団を被せてあげた後に、服を脱いで部屋に備え付けてあるシャワー室に向かった。

 いや、別に体を綺麗にするだけならロウターに頼って浄化魔法でも掛けてもらえばいいんだけどさ。

 朝にシャワー浴びると頭がスッキリするんだよね。


「~~♪」


 やはり朝シャンはいいですわ。

 自分が乙女であると自覚出来る気がする。

 ラポシン王国の王城客室に置いてあるシャンプーは、何か凄い高級そうなボトルに入っており、普段使いの物より質がいい気がして貧乏性の私は多めに使ってしまう。


「ロウター、乾かして~」

「承知した」


 そしてこのシャワーから出た後のロウター式、温風による全身ドライヤーサービス。

 基本的に野宿になった時は浄化魔法に頼るけど、こうして部屋に泊まれた時はこれをするのが日課である。


「おはようございます、ヤコ」

「おはよ、ヴィエラさん。昨日は何してたの?」

「クッキー、もらいました」


 私がシャワーを浴びている間に起きたのか、それともシャワーの音で起こしてしまったのか。

 既にパジャマから着替えて緑色のドレスを着たヴィエラさんは、両手で小さなクッキーの入った透明な袋を自慢げに見せてきた。

 美味しそうなバニラクッキーである。


「そっか、良かったね。じゃあ朝食の後に食べよっか」

「はい。食事、楽しみです」


 私達は荷物をある程度まとめた後、用意してくださってるという朝食を頂く為に食堂へ向かった。


 朝食を食べに食堂へ向かうと、ピア王女はいなかったが代わりに王城の執事さんが一通りの準備をしてくれた。

 王女様はどうやら中央王都との連絡で忙しく、朝食どころじゃないらしい。


「テンジョウイン様、本日の正午頃にヘリの準備が完了します」

「わかりました、ありがとうございます」


 昨日の検索が終わった後、寝る前にヘリの準備をしてくれるようにお願いしていたのだ。

 時間が掛かると思っていたが、思ったよりも早く用意してくれたらしい。

 ここの城は美味しい料理や温かいベットと中々に居心地がいいのだが、一応私は中央王都からの国賓という扱いになっているらしく長居をして気を遣わせてしまうのも申し訳ない。

 朝食を平らげた後、準備と片付けをしてくださった執事さんにお礼を言って食堂を後にする。


 正午まであまり時間は無い。

 ラポシン王国の町並みを散歩しようかと思っていたが、部屋の片付けを済ますと微妙な時間になってしまった。


「クッキー、食べませんか?」

「ん?」


 この余った時間をどう潰すかと模索していると、ヴィエラさんが朝に見せてくれたクッキーを取り出した。

 この客室には電子ポットも紅茶のパックもあるので、ちょっとしたティーブレイク程度には困らないだろう。


 私は洗面台の水を電子ポットに入れて水を沸かし、ヴィエラさんの持って来たクッキーの袋を広げる。

 ふわっと香るクッキーの匂いが鼻を突き抜ける。

 とても美味しそうだ。


「食べてもいいですか?」

「元々ヴィエラさんが持って来たやつなんだから、遠慮しなくていいんだよ」

「では、いただきます」


 ぱくっ、っとヴィエラさんがクッキーを摘まんで口に入れると、もぐもぐと咀嚼する。

 ヴィエラさんと食事をするのはこれで二度目だ。

 古代森林にいる間もおばば様が森の野菜や果物などを用意してくれていたのだが、ヴィエラさんが食事をしているのは見たことが無かった。

 理由を聞いてみると、植物人は本体の木が地面からの栄養を吸って生きている為、食事という行為をそもそもしないらしい。

 だがカチューシャ型の分体を依り代としている今、栄養の摂取は食事を介して行う必要がある。


 なので先程ラポシン王国で食べた朝食が、ヴィエラさん人生初めての食事だったらしい。

 食後にヴィエラさんがやたらと機嫌が良さそうなのでどうしたのかと聞いたところ、そう言われて驚いた。


「……美味しい、です」

「そういえばこのクッキー、どうしたの?」

「昔出会った人、たまたま会って、貰いました」


 昔出会った人?

 古代森林に入った人は子供以外は全員殺されるのではなかったか。

 それとも何かドラマがあったのだろうか。

 今度暇な時にでも聞いてみよう。


 そんなこんなでくっきクッキーと紅茶に舌鼓を打っていると時は流れ、いよいよヘリに乗り込む時間になった。

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