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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第五章 人口生命体のキハーノ
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天上院弥子の地球浪漫 ~日本編、その4~

「お疲れ様です。天上院様」

「ん? あー、別に大丈夫だよ」


 授業終了後、私は少し疲れた表情をしている天上院様に話しかけました。


「結局あの後どうなさったのです?」

「あはは、人の恋路を聞きたいだなんて悪趣味だなぁ。姫子ちゃんは」


 別にそういうことではありませんと言い出しかけましたが、確かに少し出刃が目というか、悪趣味化もしれません。


「それとも何? 私が他の子に取られちゃうかもってジェラシー?」

「違います!」


 なんでしょう、やはり天上院様の冗談はたまに頭にきます。


「大丈夫だよ。その場でお断りしたから」

「その場で?」

「うん、二年生の先輩だったでしょ? これから受験勉強始めるのに気持ちの整理がしたかっただけみたい。盛大に振られてよかったって最後には笑ってたよ」


 自分から告白しといて振られて良かったという心境はよくわかりませんねぇ……

 以前も言いましたが天上院様は今回の件のように学年を問わずモテます。


「安心して姫子ちゃん! 私の彼女は姫子ちゃんだから!」

「はいはい、教室に戻りますよ」


 これもどうせ天上院様の冗談でしょう。

 ですが最近、そんな冗談にどこか落ち着いている自分に気が付きます。



◇◆◇



 私は天上院様の友達でいると大変なことがあるといいました。

 その大部分は先程のように、天上院様が突然告白されてしまうということ。

 そしてもう一つがこれです。


「……はぁ」


 告白の日から数日後の平日。

 体育の授業が終わり、私の目の前にあるのは水の入ったバケツに突っ込まれた上履き。

 勿論私の所有物でございます。

 しかもご丁寧に上履きを入れていたはずの下駄箱には「昼休みに教会裏で」と書かれた紙が突っ込まれています。

 神聖な教会の裏で何するんですかねぇ本当に。


「姫子ちゃーん」


 ……いけませんねぇ。


「あ、姫子ちゃんここにいたんだ」

「すみませんね、少し体育で疲れてしまったようで」

「大丈夫? 保健室連れてくよ?」

「大丈夫です。ちょっと野暮用があるので先に教室へ戻っていてください」


 その後も一緒に教室戻ろうとせがまれましたが、どうにか説得して先に帰らせることに成功しました。

 体育が終わった後は昼休みですので、この呼び出しには今から行く必要があります。

 天上院様と一緒に教室に戻ってしまってからでは一人で向かうことは不可能でしょう。


 それに、こんな呼び出しは今回だけではございません。


「さて、行きますか」


 天上院様を誤魔化すために濡れた上履きを履いたせいでソックスがびしょびしょになってしまいました。

 不快感でいっぱいになりながらも、私は教会へと向かいます。



 呼びつけられた教会裏にいたのは二人の女生徒。

 どこかで見たような気もしないでもない顔ですが、名前は知りません。

 一人は教会の壁に寄りかかっており、もう一人は腕を組んで立っています。

 どちらの方も威圧的な雰囲気を纏ってらっしゃいます。


「呼ばれましたので参りました。清宮姫子です」


 私が声を掛けると、まるで今気付いたとでも言うように二人は私に目を合わせます。

 いや貴女達、私がセレモニーホールのある建物の近くに来た時から既に気付いてましたよね?

 私が近付いてることをチラ見しながら確認しつつ、精一杯格好付けようとしてて正直可愛いとしか言えませんよ。

 一回立ち止まって帰ろうとした時焦ってガン見してきた時はだるまさんが転んだでもやってるのかと思いました。


「なんで自分が呼ばれたか分かってんの?」


 壁に寄りかかっていた方の女生徒が寄りかかるのを止めて、私の前まで歩いてきました。


「さぁ……なにぶん呼び付けの手紙が用件どころか書いた本人の名前すら書いていない非常識な物だったので」


 私がそう言った途端、乾いた音と共に頬に鋭い痛みが走ります。


「……っ、やはり非常識な人間は非常識な手紙しか書けないようですね」

「調子乗ってんじゃねえよ」


 先程腕を組んでいた女性が後ろから私に襲い掛かり、両手で私の首を絞め上げてきました。

 かなり力が強く、振り払うことができません。

 私をビンタしてきた女生徒が抵抗する私の手を掴むと、どこから調達してきたのかわからない手錠を使って私を後ろ手で拘束してきました。


「特別授業だよ、清宮さん?」

「ケホッ、なにを……」


 私は無理矢理地面に座らされると、目の前に水を張ったバケツが置かれました。

 そして二人がかりで私の髪を掴んで水に頭を沈めてきます。


「ごッ……!? ぶぐぅ!」


 私は必死に抵抗しますが、流石に二人相手ではどうしようもなく、水から顔を上げることが出来ません。

 暴れれば暴れるほど息も詰まりますが、暴れなければ解放してくれることも無いので抵抗しなければなりません。

 こういう場合は最初のほうに激しく暴れた後、息が出来なくて弱ったかのように演技するのが大切です。

 案の定、万が一にでも私が死んでしまうのを恐れてか、顔を引き上げられました。


「3秒したらまた沈めるよ」


 まぁ一回で終わるはずもありませんよねぇ。

 仕方ありません、精々満足するまでこの水責めに付き合ってやりましょう。


「いい? ちょっと天上院様に気に入られてるからって調子に乗るなよ」


 あー、本当につらいですねこの手の嫉妬は。

 私は大体いつも天上院様と行動してるので、告白してきた女性の顔は大体覚えているのですが、この人達は記憶にありません。

 つまり陰で天上院様の事をお慕いしておきながら告白もしてないシャイガールズなんでしょう。

 駄目ですよそんなことでは。

 ただでさえあの人は競争率高いんですから積極的にアピールしていかないと。

 まぁ私もアピールした覚えなどはございませんが。


「わかったなら返事は?」

「……」


 いや、何を理解しろって言うんですかね?

 私は別に天上院様と仲がいいことを周囲に自慢するようなことをした覚えはございませんし、調子に乗ってるの意味がわかってないんですよね。

 こういう八つ当たりはこれが初めてでない……というか10を超えた辺りから数えるのをやめました。

 最初の頃は顔を真っ赤にして教師に報告したりもしたのですが、流石に数が多くなりすぎて逆に面倒になりました。

 というのも同じ人間から何回も嫌がらせを受けたことはなく、毎回違う人物からの嫌がらせなので一々嫌がらせをしてきた人物を特定して糾弾するというのが凄まじい労力なんですよ。

 苦労する割に対した罰則もありませんしね。

 なので昼休みの10分程度で気が晴れるのであればそちらで我慢することにしました。


 一向に返事をしない私にイラついたのか、女生徒は舌打ちをして再び私をバケツに沈めて来ました。

 そろそろ私もキツくなってきましたし、授業も始まりそうですから解放してくれませんかねぇ。


「ねぇ、そろそろ授業始まっちゃうよ」

「……そうだね、オイ。清宮姫子」


 はいなんでしょう。


「今回はこれくらいにしといてやるけど、次に調子乗ったらマジで殺すからな」


 そう言って女生徒達は手錠を外し、思いっ切り私を蹴りつけると走り去って行きました。

 なんて小物臭のする捨て台詞でしょうか。

 蹴りつけられた勢いでバケツがひっくり返り、私の服を濡らします。


「殺す……ねぇ」


 こんな陰湿なことをしてくる割に、授業に遅刻するのは気が引けるらしいです。

 どうせ人殺しなんてする度胸も無いんでしょう。

 顔に掛かった水をハンカチで拭きとりながら、この後どうすべきか考えます。

 こんな水に濡れた状態で教室に戻ったらまず間違いなく天上院様に何が起こったのかを聞かれますし、適当な嘘で誤魔化すのは無理があるでしょう。

 幸い本日は天気もよく、初夏の日差しが温かく感じます。

 この調子なら30分もすれば少し濡れた服くらい乾くでしょう。


「サボりますか」


 なに、多少の遅刻くらいは謝れば許して貰えるでしょう。

 教師の大目玉よりも天上院様に心配させる方が嫌です。

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