エンペラーと孤独
一国の王として、この狭い部屋の中で煙に包まれながら考えを巡らせていた。
たった1人の王様は、不器用だった。
覚えたての愛で他者との接触を試みたが、何1つとして上手くいった試しはない。愛しても愛されても、自分の稚拙な愛の前には真っ直ぐに愛されて生きてきた人の愛は大きすぎた。自分の小ささが生む虚しい空白に気を取られ、よけいに萎縮してしまうのだった。
王様は疲れていた。
自分の愛する空白はこれじゃないと他人の懐で足掻いたのが間違いだったと、何度も反芻するうちに心をひどくやられてしまった。
何もかも、自分のしたことだった。
その空白を埋められるのは、言い訳がましく相手の欲するものを自分にできる範囲で与えることだけだった。
世の恋人たちはなぜあんなにも満たされているのだろうか、と思うたびに頭が痛い思いをする。
少食な者は胃袋が小さいように、愛に飢えた王様もまた、受け入れられるのは少しずつの愛でしかなかった。
愛したいのに受け入れられない苦しみは嫌という程知っていたから、自分もまた相手に同じ思いをさせているのが嫌で嫌で仕方なかった。
しかし、どうすることもできなかった。
誰かの中に居場所が欲しい、と呟いた。
しかしその為には自分の影を落とさねばならぬ、と嘆いた。
それを成すには、王様の居場所はあまりに光から遠かった。