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序章 こんな波乱な入学式に遭遇したこと無いよ2

場所は変わって指導室。こぢんまりとした部屋で中には長机が二個縦に並べてあり、そこにパイプ椅子が二個ずつ置いてあった。片側の奥の椅子に座り室内を見渡す。できたばかりであるかのようなきれいな壁。新築だろうなとか思いつつ待っていると扉が開いた。入って来たのはさっき生徒会長と言っていた女生徒だ。


「すまないな、待たせて」

「いえいえ」


俺と向き合うように座った。何が始まるのかてんでわからないままだ。


「それでだ、なんで呼び出したかというと…遅刻の事ではなくこの学園の事についてだ」

「そうですか、じゃあなんでさっきの騒ぎは俺にも責任があるとかどうとか」

「あ、あれは呼び出すための口上だ」


少し頬を赤らめてるのも可愛い…じゃなくて。


「なるほど。でもちょうど俺も聞きたいことがあったんですよ」

「ほう、では私が説明すべきことをすべて話した後にいくらでも質問してくれ」

「わかりました」

「それではまず自己紹介をしてなかったからそこからしよう。私はこの明城学園の生徒会長、明城アリサ。これからよろしく」


アリサは紫のまっすぐな長い髪を持ち、長身で容姿端麗である。俺にとっての第一印象は一目惚れとまではいかないが心がときめいたである。


「お願いします」

「それで蓮君はこの学園のことを何一つ知らないだろう?」

「はい!全く」

「そんなに元気よく答えられてもだな…まあいい、それより本題に入るが」


真面目な顔つきになりそれなりの雰囲気を醸し出したアリサ。その雰囲気にのまれていく。


「まず守護騎士ガーディアンというの知っているか?」

「なんか噂程度には聞いたことあります」

「そうか、では一から話すとしよう」




守護騎士とは約半世紀前に現れた者たちの事である。ここ日本において半世紀前、血の暗殺者(ブラッディアサシン)という組織が存在していた。その組織は、表向きは健全な宗教団体を語っているが、裏では非人道的なことも行っていたという噂があった。無差別殺人や人体実験など様々言われていたが真実は謎だった。そんな時事件は起こった。ある時期に頻繁に誘拐事件が発生した。誘拐されるのは若い男女ばかりで時には赤ん坊までさらわれる始末だ。警察も手を焼いて、捜査に行き詰っている中現れたのが守護騎士と名乗る者であった。守護騎士たちは警察と手を組むわけでもなく敵対するわけでもない。ただ誘拐事件を解決していってるという噂が立っていたが真実は謎であった。噂だけが独り歩きする中、決定的な事件が起きた。それは血の暗殺者の幹部が一人捕まったのだ。そして真実がそこで明らかとなった。血の暗殺者はどうやら謎の実験を行っているみたいでその被験者に若者をさらっていたと幹部が供述したのだ。しかし、肝心の組織の本部や実験の場所などは分からなかったが、「またやつに邪魔された」という捨て台詞は気になった。これを契機に状況は変わった。唐突に政府が守護騎士の存在や活動を公表しだしたのだ。それにより警察は守護騎士と連携し、血の暗殺者の殲滅を開始した。政府が公表してから1年半、頻繁に起きていた誘拐事件はすべて解決し平穏が訪れた。ただ、この守護騎士に目をつけていた企業がいたのだ。それが明城グループであった。明城グループはこの時代においてトップ企業であり政府すらも凌駕する権力を持っていたともいわれている。そもそもこの事件は若者がさらわれるという事態が起きている。では、若者たちに守護騎士の戦う能力を与えて自身で守れればいいのではということを思いついた。その考えを実行に移すために明城グループは早急に行動にでた。まずは守護騎士たちの戦う技術や能力を分析し、それを基に守護騎士プロジェクトは開始されたのだ。




「…とまあ守護騎士の誕生はこんなもんだ」

「なるほど」


アリサは呼吸を整える為に身体を椅子に預ける。


「一通り話すことは話したのだが何か質問はあるか?」

「守護騎士って何人ぐらいいるんですか日本に?」

「数百人はいるだろうな」

「そんなにいるのか」

「日々増えたりしてるから正確には分からんが」

「え…増えるんですか?」

「そうだな、守護騎士っていうのは先天的になるやつ後天的になるやつと二通りあるんだ。先天的になるのは先祖代々守護騎士であったとか才能によるものが多い。生まれたときに調べられるのだが親から聞いてないか?」

「いえ。俺が物心ついたときには親はもう亡くなってたんで」

「そうだったのか。すまない」

「気にしないでください。慣れてますから、それより続きを」

「ああ、それで後天的なのは、例えば危機的状況に陥った時、自分でも信じられないほどの力を発揮することがないか?」

「火事場の馬鹿力ってやつですね」

「まあそうだな。それが守護騎士の能力の基になったりすることもある」


俺は静かにうなずく。


「しかし、これは結構まれなケースだ。日本に存在する守護騎士は9割以上が先天的なものだからな」

「ちなみに会長は先天的なんですか?」

「いや、後天的だ」


一瞬、思考が止まる。


「でも、始めたのは明城グループだから生まれたときからじゃないんですか?」

「私の両親もそう思っていたんだ。しかし、調べてみると守護騎士の素質を持っていなくてね。それはそれは酷い扱いを受けたよ」

「俺の方こそすみません」

「気にすることはない」


俺は心の中で猛省した。


「でもさっき講堂で能力を使ってたということは後天的なんですか?」

「そうだね。危機的状況には陥ったことはないけど明城グループの技術力を持って、能力を植え付けたという表現が正しいかどうか分からないけど後天的だ」


なぜかアリサは少し照れていた。


「そういうパターンもあるってことですね。分かりました。でもさっきの話からすると、血の暗殺者はいなくなったんだからもう守護騎士はいらなくないですか?」

「確かにそうなのだが…実は最近、血の暗殺者が復活したという根も葉もない噂が出回ってしまって、まさかと思って調べてみると本当に復活していたんだ」


俺はただ唖然とするだけだった。


「つまり、誰かが血の暗殺者を立ち上げたということだ」


アリサの真剣なまなざしに少しのけぞる。


「まあ気にすることはない。君は守護騎士ではないからな」

「はあ」

「これで質問は終わりか?」

「そうですね」

「じゃあもう下校時間だから気を付けて帰るといい」


そう言うとアリサは指導室を出ていった。さて俺も帰るとしますか。指導室を後にした。




アリサが指導室を出ると一人壁に寄りかかって待っていた。


「随分と長い時間話していたようね」

あやか。まあ、そのようにしろと指令がきたのだから仕方あるまい」

「アリサにしてはうまかったわよ」

「余計なお世話だ」

「いつも不器用なあなたがあんなにもスラスラと話せるなんてね。いつもあんな風にいくといいんだけど」

「それは嫌みか?」

「はは、冗談に決まってるじゃん」

「それより尾行は開始しているのか?」

「それはもう抜かりなく、トモちゃんが行ってるよ」

「そうか」


安心のため息がもれる。彼は要注意人物、目を離してはいけないと言われているからな。この使命は果たさなければ。


「何そんなに怖い顔してるの?さっさと行くよ」


絢に呼ばれ私はそこを後にした。




「ただいま、我が愛しの妹よ」

「はーい、おかえりお兄ちゃん」


この光景はまさに理想の兄妹って感じだ、などとつい顔が惚けてしまう。


「もうご飯出来てるから食べよう」

「そうだな」


テーブルは料理が盛られた皿で埋め尽くされている。


「ふふーん、今日はわが自信作をご用意した。というのもお兄ちゃんの入学祝いだからだ」


かわいくウインクしてきた。なんという愛おしさ。

紹介が遅れたが御剣みつるぎ ゆい、中学3年で俺が自慢に思う妹だ。前文からわかるように究極にかわいいのだ。決して俺はシスコンではない、これは重要なことだ。惟は家事はなんでもこなし、秀才でルックスも可愛らしい。誰もが見とれてしまうほどだ。俺は毎日見ているがそれでも見とれてしまう。俺の妹への思いが…じゃなくて妹の紹介が終わったところで。


「早く食べよ、冷めちゃうよ」

「じゃあ行くぞ。せーの」

「「いただきます」」




楽しい時(蓮がずっと惟に見とれていた間)はあっという間に過ぎ、今は俺の部屋。寝床につくもののなかなか眠れない。やはり昼に起きたことが忘れられない。守護騎士…今までは噂で耳にする程度で別に興味は湧かなかった。でも、あんなことが起きるなんて考えたこともなかった。今後もあんなことが起こるのかと俺は不安になる。一体俺の高校生活はどうなるんだろうな。そんなことも考えながらも、疲れからかいつの間にか意識を失っていた


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