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序章 こんな波乱な入学式に遭遇したこと無いよ

窓から差し込む朝陽が心地よい朝を迎える。そんな朝陽など気にすることもなく俺はぐっすり夢の中。今日は休日だからいつもより深く入り込んでいる。夢にのめりこみすぎて寝言が出るほどだ。寝言がはっきり聞こえるほど静かな俺の部屋にドタバタと階段を上る音が響いてくる。そして扉が勢いよく開くと同時に俺の上に何かが乗っかった。一瞬腹に痛みが走るがこらえる。


「何そんな変な声出してるの?」

「お前が急に乗っかってくるからだ」


どうやら悲鳴?のような声が出ていたようだ。


「早く起きてよ」

「何言ってんだ、今日は休みだろ?だからゆっくり寝るんだ」


そういって再び寝る体勢に入る。


「ああー、寝ちゃダメだってば」


そいつは俺を起こそうと必死に身体を揺さぶる。しかしそれに屈しまいと俺は眠気を呼び起こす。


「また寝ようとするな、今日入学式だよ」


入学式?あー我が妹の入学式か。それで今度中学生だっけ。


「『あー妹の入学式か、それで今度中学生だっけ』なんて考えてないよね?」


ギク!なんだと、考えが読まれているだと…いつの間に我が妹はエスパーを。


「はいはい、エスパーなんて使えません。お兄ちゃんの考えることぐらい手に取るようにわかるよ。大体何年…って言ってる場合じゃない、遅刻しちゃうよ」


さっきまでの重みがなくなり俺はゆっくり起きる。入学式のお知らせを確認すると日付は今日になっていた。


「今何時?」


壁にかかった時計を見ると8時50分だった。入学式は9時からである。


「おやすみ」

「ちょっとお兄ちゃん、現実逃避しないで」


何かの間違いだと思い再び布団にもぐりこんだ。


「とりあえず遅れてもいいから入学式には出よ」


妹の目に涙が溜まって俺に訴えかけている。なんとも可愛らしい…


「しょうがない、行くか」


俺は決心し、かけてある制服に腕を通し学校に行く準備をした。




家から学校まで徒歩で15分ほど。近くもないが遠くもない、なんというか微妙な位置にある。どうせ遅刻するんだからと寄り道をすることにした。中学校へ行く時と道が逆のため新鮮な感じがする。知らない店や行ったことない通り、真新しい光景に興奮していた。新しい学園生活が始まるんだと思うと足取りが自然に軽くなる。すると、突然声を掛けられた。


「あの~すいません」

「はい?」


振り向くとそこには作業服を着た若い男が立っていた。


「明城学園ってどこらへんにあるかわかりますか?」


聞かれたのはちょうど俺の入学する学園の名前だった。


「今から俺そこに行きますよ」

「ホントですか、なら案内してほしいです。あそこに車あるんで」


そこには軽トラックが止まっており荷台には大量の荷物が積まれていた。


「はあ」


俺は内心学園には行きたくなかったが、行くと言ってしまったゆえ断れなかった。

男の人についていき軽トラックの助手席に座った。はたから見たら俺誘拐されてるみたいだな。そんなことを考えてるといつの間にか出発していた。


「学園に何か用なんですか?」

「ああ、荷台の荷物を届けなきゃならないんだ」


などと雑談をしながら道案内をしていると学園に到着した。




目の前にはどっしりとした門構えに壮観な校舎。門には「明城学園」と重々しい字で書かれている表札があった。その見た目に少し引いてしまう俺。初めて来たわけではないが、ものすごい威圧を感じてしまう。


「こんな感じの学校だと思わなかったから少しびっくりしたよ。それよりありがとうね案内してくれて」

「いえいえ、こちらこそここまで乗せてくださって」


お礼を言って俺は学園の門をくぐるのであった。




明城学園。全国でも有名な私立校であり、偏差値も一二を争うほどの高さである。成績が優秀な生徒が全国から集まり、成績優秀者への待遇がよくまさに人気の学園である。しかしここまでだと普通の人気の学園である。人気の理由が別にあるとすればそれは一つしかない。


それは後々わかるとして…おそらく今講堂で入学式が行われているであろうと予想した俺は、とりあえず講堂へ向かうことにした。講堂へ向かう途中、一回はここに受験の時に来たがさすがにどこに何があるかは分からず迷ってしまった。どうしようかな…講堂がどこかわかんないや。適当に行けばいつか着くでしょなんて軽く考えてたが、意外にあっさり見つけてしまった。まあ扉の前に「明城学園 入学式」っていう看板立ててたら誰でもわかるよね。俺は扉を開けた。目の前に広がるのは果てしなく続く床、微かに見える椅子。新入生と在校生が整然と並んで座っている。俺はとぼとぼ歩を進めていく。すると、奥のステージの方から何やら飛んできた。よく見るとそれは鋭利な刃物に見えた。俺は首をかしげる。あんなものが飛んでくるか。そしてそれは俺を超えて後ろの方に行き、衝撃音が響く。後ろを見るとぽっかり穴が開いている。


「随分、遅刻者には手荒い歓迎だよ」


俺はその場で座り込んでしまった。声が震えていた。こんなに厳しい学校とは。あの衝撃で辺りの壁などが崩れ土煙が舞っていて視界が悪かった。俺は落ち着きを取り戻し立ち上がった瞬間、その土煙から一線の光がステージに向かって放たれた。その光の行方を追うとステージまで届く前に跳ね返された。


「何だ今の」


その場にいた生徒たちは騒ぎになりパニック状態に陥っている。一体これはどうなってるんだ、入学式早々に。すると、一人の女生徒が軽やかな跳躍でステージから俺のいる場所に降り立った。思わず驚愕する。


「全く、入学式だというのに邪魔しないでほしいわね」


片手には剣を持ち、光が出た方向を凝視している。その先には得体も知れないモンスターとも言うべき獣が佇んでいた。その獣は姿が狼に似てはいるものの、大きさが規格外で二足で立っていた。


「どうやって結界の警報装置を破ったのか知らないがこれ以上やると言うなら始末するわよ」


そんなこと知るかといった具合にその獣はとびかかって来た。


剣術式ソードオペレイト解放!」


斬撃音だけがこだました。その獣は真っ二つになり後ろに転がっていた。その光景にただただ茫然とするだけだった。剣を片手に忽然と立つ、まさに俺にとっての勇者…じゃなくてここは逆だろ、俺の方が救うのが定石なはず。しかししかし、これを見て惚れるはずがない。どんなやつでもイチコロだ。つまり俺は惚れたのだ、見ず知らずの女生徒に。


「君大丈夫だった?」


笑顔でこちらに手を差し伸べてきた。ついさっきの光景が浮かびキュンとしてしまう。俺は乙女だったのか(男です)。


「は、はい」


その手をつかみ立ち上がる。


「君は…確か御剣蓮みつるぎ れんだよな?」

「え?はいそうですけど…なんで俺の名前を」

「生徒会長は全校生徒の名前を覚えてて当然だろう」


当たり前のように言われても困るし…というかこの人生徒会長だったのか。そっちのほうが驚きというかときめきというか。じゃなくて、俺の恋愛感情はこの際置いといて、この状況において誰しもが疑問に思うことがある。俺も思っている。それは生徒会長が剣を持ってあの獣を倒したこと。多少意味の分からないことを言っていたが。それともう一つ。この光景に対して、在校生はまだしも今日から入学する新入生までもが同じ反応を取っていた。つまり疑問を持っていないということだ。俺はホントにこの学園に入学するのか?とさらなる疑問が生まれる。


「あなたが入学式に遅刻してきたのは大目に見てあげましょう。しかし、初日からこのような事態になったのはあなたにも多少なり責任がある。だから後で指導室に来てもらう」


何か知らないけど呼び出し食らいました。入学早々の呼び出しは特に注目を集め、悪い噂ばかり広まる(経験談)。だが、俺は違うことを考えていた。そう、この疑問が解決する可能性があるということだ。一人で考察を進めている間に入学式は終わろうとしていた。


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